●VS“狂魔竜・リンドヴルム”●
【北】
リオ&ウェド&ケイド。
「さあ、一気に片付けるわよ!!」
「オーケイ任せな!!」
「お主等、ビビっていないのか……?」
北方角。強風が吹き荒れる山岳地帯にいるリオとウェドは臆する様子を全く見せず、むしろ気合いの入った様子であった。そんな2人にケイドは素直に感心していた。
「って言うか、肝心の“抂魔竜”って奴は?」
「どこいるんだろうね~?」
「ふむ………いないな」
視線を巡らせるが、どこにも姿が見えない。
「ねえケイドさん、“抂魔竜”ってどんな姿してんの?」
「そうだな……全身緑の鱗に包んでいて、鰐のような顔を持っていて、6枚の翼を持った、魔竜だ」
「ちょうど、あんな感じ?」
ケイドの話を聞いたウェドが、ある山岳の上を指差した。そこには、正にケイドの説明通りの魔竜が悠然と佇んでいた。
「そうだな。ちょうどあんな感……じ……だな」
「何か……デカイ……わよね……」
「僕も……思った…」
リオ達の震える声に気付いたのか、“抂魔竜”が翼を羽ばたかせ、こちらに向かってきた。そしてリオ達の前に降り立ち、ようやく姿を確認できた。体長はゆうに30メートルを越え、全身緑の鱗に包んでいる。エメラルドのような輝きを放つ爪を持ち、鰐のような口からは細かい牙がいくつも並んでいた。そして1番の特徴、翡翠色の6枚の巨大な翼だ。これが、“四竜”の一角。“抂魔竜・リンドヴルム”だ。
「ギィイイイオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!!」
耳が裂けるような咆哮を上げ、リンドヴルムは戦闘体勢に入った。
「俺が凍らすから2人は追撃よろしく!!せあっ!!」
まずウェドがリンドヴルムの足を氷結させて動きを封じ、その隙に両サイドに移動したリオとケイドが互いの風の塊を全力でぶつけた。サンドイッチ状に風で挟まれたことにより怒ったリンドヴルムが、リオとケイドに標的を定めた。足の氷を簡単に粉砕し、2人を薙ぎ払うように、体を回転させて遠心力をのせた尻尾を振り抜いた。
「きゃっ……!!」
「くっ……!!」
咄嗟にバックステップで尻尾を回避し、すぐさまリンドヴルムに向き直る。するとリンドヴルムは、口を大きく開き、中から青色の風弾を発射しようとした瞬間、
「させるかよ……!!」
ウェドがリンドヴルムの口を氷結させて風弾を暴発させた。口が爆発し、血の混じった唾液を撒き散らしながら奇声を上げている。
「ギイヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」
「続いて……!!」
更に両目を氷結させて視界を封じた。
「リオちゃん!ケイドさん!」
ウェドの合図で、リオが上に、ケイドが腹に潜り込んだ。
「<風魔鉄槌>!!」
「<エアインパクト>!!」
風の槌と衝撃波がリンドヴルムを再びサンドイッチする。しかし鱗によってダメージがまともに入らないのだ。
「っ……!!<風魔輪斬脚>(ふうまりんざんきゃく)!!!」
<風魔鉄槌>が防がれた後、すぐさま体を縦回転させて巨大な丸ノコとなってリンドヴルムに叩き付ける。鱗と風がぶつかって火花を散らしていく。やがてリオの脚が鱗を切り裂き、緑色の血液を流した。
「やっと、一発…」
「固過ぎだろ……!!」
「どこか、弱点は無いのか…」
「ギュオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
口の氷を粉砕したリンドヴルムが、再び風弾をチャージした。
「ウェド!!」
「もうしてる!!」
ウェドも再び口を氷結させた。しかし、風弾は氷を貫いて発射された。
「嘘っ!?」
「2人共隠れて!!<氷雨の壁>!!!」
ウェドが造り出した氷壁とリンドヴルムの風弾が激突し、辺りに爆風を撒き散らした。
「っ……!!もた……ない!!2人共跳んで!!」
氷壁に亀裂が走り、破壊される前にリオ達が横に跳んで回避した。が、
「ウェド!!」
ウェドは回避が間に合わず、風弾をまともにくらって吹き飛ばされた。
「ごほっ…………!!」
宙を舞い、地面に叩き付けられたウェドが血の塊を吐き出した。
「この野郎ぉぉぉぉっ!!!」
怒り狂ったリオが<バースト>を解放して顕現した風の大鎌、嵐滅でリンドヴルムの腹に一筋傷を刻み込んだ。あまりの早さに、遅れて血が噴き出した。
「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
「<嵐魔乱刃>!!!」
リンドヴルムの咆哮に怯まず、嵐滅から無数の真空波を放ち全身に斬撃痕を刻んだ。全身を切り裂かれたリンドヴルムは怒りに顔を染め、唸り声を上げた。
「ケイドさん!!ウェドをお願い!!」
「分かった!!」
ウェドに駆け寄ろうとするケイドに、リンドヴルムが風弾を発射した。
「させないわよ!!」
ザンッ!!
リオの嵐滅が風弾を切り裂いた。その際生じた暴風がリオとケイドのバランスをわずかに崩す。その隙を逃さず、リンドヴルムは先ほどとは違い、細かい風弾をマシンガンのように連続で発射した。
「おぉぉぉぉっ!!!」
その風弾を、リオとリンドヴルムの間に割り込んだケイドが受け止めた。風弾はケイドが纏った風の鎧により軌道をずらされ、辺りの山岳に辺り爆発する。しかし全て防げた訳では無く、ケイドの体には無数の傷が出来ていた。
「ケイドさん!!」
「……ウェドなら安全な場所に移した。私のことも…心配するな」
「………うん!!」
全身に風を纏ったリオが、リンドヴルムに突進していく。途中でその姿が6つに分かれ、嵐滅に暴風を纏わせ嵐の大刃を造り出していた。
「<嵐魔六幻>!!!」
6つの嵐の斬撃がリンドヴルムの鱗を切り裂き、全身から鮮血を舞わせる。さらにその中の1つは、リンドヴルムの左目を深く切り裂いた。
「ギュアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!?」
左目から血を滝のように流し、リンドヴルムが悲鳴を上げる。リオは分身を解き、肩で息しながら再びリンドヴルムを睨む。
「………何とか持たせないと……」
リオの<バースト>はもってあと数分間だ。リオには煉ほどのエレメント量は無いため、煉のような馬鹿げた力は無いのだ。
「ギュルオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!!!!!」
突如、リンドヴルムが嘶きを上げ、6枚の翼を広げた。それを羽ばたかせ、空に舞い上がった。空を覆い隠すほどの巨体は、リオ達に恐怖を植え付ける。しかし、気持ちを奮い立たせ、リオは真っ正面からリンドヴルムに向かい合った。
「飛べるのは、あんただけじゃ無いのよ!!」
全身に風を纏ったリオが、リンドヴルム同様に空に舞い上がり、そこから壮絶な空中戦が繰り広げられた。リンドヴルムの爪や翼を掻い潜り、嵐滅の斬撃を叩き込んでいく。
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
<バースト>が切れる前に決着をつけようと、リオは神速の速さで嵐滅を振るっていた。ただ切り裂く。その考えが周りを疎かにし、死角から迫る尻尾に気付くのに遅れてしまった。
「っ……!!」
咄嗟に嵐滅で受け止めるが、衝撃で地面に叩き落とされた。激突すると思われたが、
「ぬうんっ!!」
地面に当たる寸前でリオを、ケイドが受け止めた。
「あ、ありがと……」
「無理するな……」
「大丈夫よ……って……!?」
リオが立ち上がろうとした瞬間、手に握っていた嵐滅がただのエレメントへと戻ってしまった。<バースト>の限界が来たのだ。
「嘘っ……!!」
「まずいな………あ、ちっ!!」
突然、ケイドが舌打ちをして表情を歪めた。視線の先には、口を広げて風弾をチャージしているリンドヴルムがいた。
「ヤバッ!!避けないと…………!!」
「間に合わん……!!」
やがて風弾が発射された。しかし、
「<凍狼凶牙>あぁぁぁぁ!!!」
<バースト>で白銀の双剣、凍牙を顕現したウェドが風弾を断ち切った。
「ウェド!!」
「お待たせリオちゃん♪やっぱりヒーローは遅れて登場しないとね」
「まったく………」
「とりあえず、しばらく僕が時間稼ぐよ。その間にリオちゃんはエレメントを回復して、<バースト>を使えるようにして。一気に決めるよ!!」
「分かってるわよ………!!」
ウェドは一方的に告げると、凍牙を逆手に持ち直してリンドヴルムへと突っ込んでいった。その間にリオはエレメントを回復するために精神を沈めている。
「おらあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
辺りの大地を氷結させてスケートリンクを造り上げ、その上を滑走しながらリンドヴルムの風弾を回避していき、造り上げた氷のジャンプ台から一気に飛び出してリンドヴルムを切り裂いた。切り裂かれた箇所が氷結して微かに動きを制限する。
「<群狼爪>(ぐんろうそう)!!!」
振り抜いた凍牙から放たれた無数の氷刃が、リンドヴルムの背中を切り裂きながら駆けていく。
「ギュルオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!」
「<孤狼双爪><ころうそうそう>!!!」
怒るリンドヴルムの尻尾をかわし、白銀に輝かせた凍牙を眉間に叩き込んだ。額がクロスに切り裂かれ、リンドヴルムが悲鳴を上げる。
「まだまだぁ!!<氷刃車輪>(ひょうじんしゃりん)!!!」
声を荒らげたウェドが凍牙を構えて高速回転し、リンドヴルムの背中を転がるように切り裂いていった。
「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」
「うぐあっ!!」
リンドヴルムが羽ばたかせた翼から放たれた巨大な真空波が、ウェドの体を切り裂きながら吹き飛ばした。地面に叩き付けられ、再び喀血する。リオの回復は、まだのようだ。
「ぐ……!!痛………えなぁ……!!」
血だらけになりながらも、ウェドは凍牙を杖代わりに立ち上がり、凍てつくような視線でリンドヴルムを睨み付けた。その視線に、リンドヴルムは一瞬恐怖を覚えた。
「嘗めるなよ…クソ蜥蜴………氷河期に送り返すぞこら……!!」
凍牙を強く握り、しっかりと地面に立つ。
「てめえが何を思ってこんなんしてんのかは知らないけど、こっから先に行かれたら悲しむ人が出るんだよ………だから、通さねえぞ……!!」
「あんたの割には、かっこいい台詞言うじゃん。少し惚れたわよ?」
「リオ…ちゃん……遅いよ」
後ろから歩いてきたリオが、ウェドにそんな軽口を叩いた。
「よく耐えてくれたな」
ケイドも一緒だ。
「一気に決めるわよ!!」
「ああ!!」
「もちろん!!」
「ギュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!」
リンドヴルムが吐き出した風弾をまずケイドが受け止め、その隙にリオとウェドがリンドヴルムへと跳躍し、翼目掛けて2人の技を叩き込んだ。
「「<氷魔迅旋風刃>(ひょうまじんせんぷうじん)!!!!」」
氷刃舞う旋風を叩き込み、リンドヴルムの翼を3枚切断した。翼を切断されたことにより、飛行出来なくなったリンドヴルムは地面に落下する。
「ギュルオッ!!ギイィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!」
「大人しくしやがれ!!」
我を忘れたように暴れまわるリンドヴルムを、ウェドが氷付けにして動きを封じた。
「リオちゃんトドメ!!」
「分かった!!」
ウェドの声と同時にリオが駆け出す。先ほどのように全身に風を纏わせ、リンドヴルムとの距離を詰めていく。
「もっと速く……もっと鋭く……もっと多く…!!」
リオが纏っている風が勢いを強め、辺りに嵐を巻き起こす。やがて、リオの体が分身していく。その数、36人。
「増えすぎでしょ!?」
ウェドも思わずツッコンだ。
「<嵐魔三十六幻>(らんまさんじゅうろくげん)!!!!!!」
36人に分身したリオの斬撃が、リンドヴルムに直撃した。従来の<嵐魔六幻>の6倍の斬撃は、リンドヴルムをいとも容易く切り裂いた。
「ギイィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…………!!!」
断末魔が聞こえなくなる頃には、リンドヴルムは跡形も無く消し飛んでいた。
「勝った……よね?」
「勝った……でしょ」
「ふっ……やったな」
「「いやったあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」」
【北】リンドヴルム。討伐完了。




