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●手掛かり発見?●

「ほい、今回の依頼素材です」


「あら、煉さんお疲れ様です。え~と……ファングボアの牙と、レイドウルフの爪と牙。はい確かに。いつもいつも見事に依頼をこなしてますね?」


「いえいえ。そんなことはありませんよ」


コロシアムから約3日、煉達“アナザーワールド”の面々は情報を集めるために着々と依頼をこなしていた。最初はFランクだった煉達も異例の早さでEランクに上ったため、魔獣討伐の依頼を受けられるようになっていた。今煉がこなした依頼は、ファングボアとレイドウルフの討伐だ。ファングボアは牙が長い巨大な猪。レイドウルフは黒い巨大な狼だ。新米ハンターには中々の強敵だが2体とも煉から瞬殺されている。


「この調子ならすぐにCランクに行けますよ」




<トライデント>の受付嬢であるシャーリーが優しく微笑んでいる。


「まあ、ランクが上がればそれだけ依頼も増えるし、もしかしたら何かの手掛かりが見つかるかもしれないからな…」


「無事に見つかるといいですね」


「ありがと。で、何か新しい依頼はあるかな?」


「そうですねぇ……」


シャーリーは依頼用紙をパラパラ捲り、1枚の紙を煉に渡した。


「最近ではこれですね。何でも最近、人が突然消えるって事件が相次いでるんですよ」


「人が突然消える?」


「ええ、でも消えた人はその後そこからかなり離れた場所で見つかったんですよ。その人の話によると、突然飛ばされた感覚だと……」


「受ける」


「早っ!!ま、まあ分かりました。場所はここから東にある町です。お気を付けて」


煉はやっと手掛かりらしい匂いのする情報を手に入れたと思っていた。リオ達には言わず、自分で様子を見に行こうとしている。

煉は依頼所を出ると東に向けて走り出した。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「たっだいま~……ってあれ?煉は?」


依頼から帰ってきたリオが煉がいないことに疑問を持った。


「あ、お帰りなさいリオさん。煉さんなら新しい依頼を受けて東に行ったわよ?」


「新しい依頼?」


「ええ、これよ」


シャーリーはリオに煉が受けた依頼書を見せた。


「人が突然消える……まさか煉……手掛かりって行った感じかしら……」


「多分ね」


「まあ、帰ってきたら色々聞かせてもらお。シャーリーさん、これ依頼された素材です」


「ありがとう。ポイズンバイパーの鱗と……」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


東の町に着いた煉は、早速被害にあった人に話を聞いていた。被害にあったのは14歳の女の子。名前はルンと言った。


「つまり、遊んでたら突然別の場所にいた。そうなんだね?」


「はい、湖で遊んでて、潜ってしばらくして上がったら、別の湖にいたんです……」


「………なるほどねぇ」


煉はルンの話を聞きながら自分達と共通することを整理していた。被害者はまず飛ばされる際に、必ずどこかで移動する動作を見せていること。煉達は扉をくぐったらこの世界に来ていた。ルンは湖の水面から顔を出したら別の湖に飛ばされた。手口が似ている。つまり、今回の件に、煉達をこの世界に飛ばした人間が関わっている、と言った予想だ。


「あの時、怖くて、戻れないんじゃないかって……グズ…」


ルンは当時を思い出したのか、涙を流していた。


「またあんな風になったら、あたし……あたし…」


「心配するな」


煉はルンの頭にポンと手を置いた。


「犯人は俺が捕まえる。だから安心しろ。な?」


「……はい。ありがとうございます」


「おう」


話を聞いた後、煉はまず湖に向かった。今回の件の犯人は、恐らくエレメント使いだと予想している。そう仮定して、煉はエレメント反応を調べた。湖を中心に、全方位にソナーを発射する。距離を拡大していき、10キロ、30キロ、50キロ………100キロ。全神経と体力をフルに使い、限界までエレメント反応を探る。


『くそ……見つかるのは普通のエレメント反応だけだな……もっと遠くにいるのか?』


これ以上はもたないと思い、解除しようとした瞬間、どこからともなく1つのエレメント反応が現れた。今まで反応が無かった場所にいきなり現れたエレメント反応。これは、今までのエレメントと異なる反応であった。場所はここから北に5キロ。


「見付けたぜ……!!」


煉は北に向けて全力で走り出した。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


5分後、煉は目的の場所に到着した。草木生い茂る森の中。ここにあのエレメント反応がある。辺りを警戒しながら、煉は慎重に歩を進めた。枯れた枝を踏んでパキッと音を立てながら歩いていると、微かに水の音が聞こえてきた。近くに滝でもあるのだろう。


「喉乾いたし、行ってみるか」


水音のする方に行くと、案の定滝があった。そして、その滝で水浴びをする、

全裸の美女がいた。


「んなっ……!?」


条件反射で近くの木陰に身を隠した。流れるような美しい銀色の髪にサファイアのような瞳。女神のような美貌にしばし煉は見とれていた。


「って、覗いてる場合じゃ無ねえ。エレメント反応を探さねえと……」


煉は今一度反応を探った。すると、反応は銀髪の女神から感じられた。


「あいつか……」


煉は相手が水浴びを終わるまで待っていると、突然コールブレスに通信が入ってきた。


「あれ……?何で通信が……」


煉がボタンを押すと、


『やっと繋がったあぁぁぁぁぁ!!』


画面越しに叫ぶシンディがモニターに写し出されていた。


「ば、ばあさん!?」


『煉!!久しぶりじゃない、無事で何よりよ』


「あ、ああ……つうか何で通信が?俺等はアスタニア界にも地球界にも繋がらなかったんだが」


『それに関してはまた今度。とりあえず、あんた等を飛ばした力の正体が分かったのよ』


「ああ、俺の予想は、エレメントが関係してると思うんだが」


『正解よ。今回の件には<ディメンションエレメント>(空間属性)が使われてる』


「<ディメンションエレメント>だぁ!?あれは幻のはずだろ!?」


煉はシンディにエレメントの知識を隅から隅まで叩き込まれている。その中で<ディメンションエレメント>の話も聞いた。空間を操り、時空を越える力。シンディが持つ<タイムエレメント>(時間属性)と対を成すエレメント。


「でもそれ以外に考えがつかないのよ。こっちでも探してんだけど……あんたん所に怪しい奴はいないわけ?」


「あのなぁ…そんな奴がそんな都合良………」


煉は話してる途中で銀髪美人を思い出し、振り向いた。どうやらまだ水浴び中のようだ。


「いるな……」


『そう。煉、1つ言っとくけど早まった真似はするんじゃないわよ。相手は未知の領域なんだから、下手したら時空の裂け目に叩き込まれるわよ?』


「恐えよ!!まあ……分かった。また連絡する」


『了解したわ』


そうしてシンディとの連絡を切り、煉は再び銀髪美人に向き直った。水浴びはすでに終わって、神秘的な雰囲気を出すドレスに身を包んでいる。


「さて、どう話を聞くかな……」


考えながらも、とりあえず話し掛けることにした。


「あ~、ちょっと話を聞きたいんですが……」


「…………」


「え~と、自分はハンターの者です。最近起きてる、人が突然消える事件について調べてるんですよ。話を聞かせてもらえますか」


「………やっと来た」


「は………?」


煉は銀髪美人の言葉の意味が分からなかった。やっと来た?


「どういうことですか……?」


「惚けなくていい。貴方はもう気付いてるはずよ、赤堂煉」


「……ってことは、あんたか。俺等をこの世界に飛ばしたのは……」


「そうよ」


やっと見付けた。煉は目的の人物をようやく発見できて興奮していた。


「まず聞く。あんたは何者だ?」


「私は、ディアナ…<ディメンションエレメント>の、契約者」


ディアナ。確か月の女神の名前だ。事実ディアナの容姿はそれに相応しい美しさだった。


「そうか。で、ディアナ。何で俺等をこの世界に飛ばした?」


「………この世界を、救ってほしいから……」


「どういうことだ?」


ディアナの、静かな願いが込められた声に、煉は首を傾げた。


「世界を救ってほしいだぁ?まるでこの世界が危ないみたいじゃねえか」


「危ない、いや……正確には危なくなる。それを救ってほしい」


「……話だけなら聞いてやるよ」


煉はディアナの話に耳を傾けた。


「【イグニス界】には、昔封じられた4匹の魔竜がいた。その魔竜は普通と違って、より強く、より悪質な性格になっていることから、それぞれに、“災”“暴”“狂”“悪”と名付けられた。今から100年前に、その4匹が魔竜の大群を連れて東西南北から人間達に襲い掛かった。戦いは幾日も続き、やっとのことで人間が4匹の魔竜を東西南北に封印したの」


「そんな魔竜がいたのか……でも封印したんだろ?だったら…」


「話はここから。実はその封印が弱まってるの」


「はぁっ!?」


「封印が弱まればそれだけ魔竜が出てきやすくなる。もし魔竜が復活すれば、もう人間は勝てない。だから貴方達に助けを求めた」


「何で俺等なんだよ?」


「私は<ディメンションエレメント>で、他の世界で魔竜に対抗できる人間はいないか探してた。そしたら、魔竜を素手で殴り飛ばした貴方を見付けたの」


恐らく魔竜の大群が学園に攻め行った時だろう。


「で、俺等を連れてきたってわけだ」


「迷惑を掛けて申し訳無い。でも、貴方達しか頼れない。お願い、助けて…」


ディアナは涙をスーッと流し、煉に頭を下げた。煉は、ディアナの話を疑ってはいなかった。目を見れば、嘘をついていないのは明白だ。しかし、都合が良すぎるのが少し癪だ。唸りながらも、


「分かったよ…」


「え……?」


「助けてやるよ。少しの間だが、世話になった世界が壊されるのは気分が悪い。ただし、その4匹を倒した後は、俺等を元の世界に帰す。これが条件だ」


ディアナの言葉に頷き、助けると約束した。


「ありがとう……本当に……!!」


泣きながら礼を言うディアナを励まし、煉はディアナを連れてラーヴァオに戻った。

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