●VS“闇ギルド・ニーズヘッグ●”
「行くぞコラァッ!!<火爆噴衝>!!!」
地面に叩き付けられた煉の拳に反応し、地表を突き破っていくつもの噴火が巻き起こった。それにより煉の周辺にいた“ニーズヘッグ”の面々が噴火に巻き込まれて吹き飛んでいく。
「何だこいつ等!?化け物か!?」
「クソ!!意味和からねえ!!」
「誰かぁ!!助け…」
「<風魔鉄槌>(ふうまてっつい)!!!」
ズンッッッ!!!
逃げ惑う“ニーズヘッグ”に、リオの容赦無い一撃が直撃した。真上からの風の圧力に押し潰されて地面にめり込んでいる。
「チクショウ………!!観客を狙え!!」
“ニーズヘッグ”の1人が叫ぶと、他の者が観客席に向けてエレメントを発射した。しかし、
「<氷雨の壁>!!!」
「<土隆絶壁>(どりゅうぜっぺき)!!!」
ウェドが造り出した氷の壁と美紀が造り出した土の壁がエレメントを防いだ。
「観客を狙うような奴は、これで痺れてろ」
ライズが地面に足を叩き付けた瞬間、ライズを中心に雷が蜘蛛の巣状に張り巡らされ、触れた“ニーズヘッグ”の面々の動きを封じた。
「<雷蜘蛛>(かみなりぐも)。からの、」
「<激流鞭>(げきりゅうべん)!!!」
動きを封じられた“ニーズヘッグ”に、鞭となった十蔵の水が襲い掛かり、まとめて弾き飛ばした。
「強い…………!」
「まったくだな…」
「あ~ん十蔵くんカッコイイ!!」
“トライデント”の3人は、煉達の戦いに目を奪われていた。レイナは目をハートにして十蔵を追っている。
「たく……!あと何人いんだよ……!!」
<火爆掌>で前方の敵をまとめて吹き飛ばした煉が、苛立ちながら叫んだ。先程からかなり倒してるに関わらず、一向に減る気配が無いのだ。
「この、ままだと、じり貧に、なる、可能性が、高い、ってうざってえんだよコラァッ!!」
攻撃を避けながら話していたライズだが、我慢の限界が来たのか雷を纏った連蹴りで数人まとめて蹴り飛ばす。
「さっきおっちゃんが200くらいって言ってたけど、明らかに数が合わない。どこからともなく沸きやがって、本当に人間かよ…」
ライズの一言で、煉の頭に何かが浮かんだ。急いで辺りを見回すと、煉は納得したように頷いた。
「通りで減らないわけだよ……」
煉は神経を集中させて、辺りのエレメント反応を調べた。すると、“ニーズヘッグ”の面々からは、エレメントの反応しかしないのだ。つまり人間では無い。
「まさか、シヴァ以外に<ゴーレム>を造れる野郎がいるなんてな…」
そう。今煉達が戦っているのは、エレメントで造り出された人形、<ゴーレム>だったのだ。かつて煉がシヴァと戦った時にまんまと騙された記憶がある。煉が先程辺りを見回したのも、倒したはずの人間が消えていたからだ。煉は更にエレメント反応を探っていく。
「生み出されてる野郎がいるなら、生み出してる野郎もいるはずだ………どこだ…………?」
ソナーを発するようにエレメントを放ち、返ってきた反応を調べる。やがて、1つの反応を感知した。場所は、実況席。マイクの喉にナイフを突き付けている奴だ。
「見つけた……!!」
実況席に鋭い視線を送り、ライズに指示を出した。
「ライズ!実況席の奴を狙え!!」
「まっかせなさーい!!」
ライズが指先から雷球を放ち、実況席にいる奴の肩を撃ち抜いた。
「ちっ……!!」
ナイフを取り落とした男は舌打ちをし、実況席からコロシアムに飛び出した。同時に煉達の周りにいた<ゴーレム>が消えていく。
「消えた!?」
「こいつ等はあいつのエレメントで造られた<ゴーレム>って人形だよ。シヴァの野郎も使ってた」
「マジ……!通りで減らない訳だよ…」
「そういう訳だ。ま、黒幕が出てきたから、そいつに話を聞かせてもらおうか……」
煉はライズの質問に律儀に答えながら黒幕に視線を注ぐ。
「バレたか………まあいい…」
「じゃあ早速名乗ってもらおうか?」
「闇ギルド、“ニーズヘッグ”兵士長、ボードだ」
ボードが名乗った瞬間、シエン達の顔色が変わる。
「ボード……“群兵のボード”か……!?」
「懸賞金7000万クレンの首。いきなり大物が出てきたみたいね…」
話だけなら、かなりの悪党のようだ。懸賞金の単位も分からないがかなりなのだろう。そのボードはため息を吐き、煉達を睨み付けた。
「たくよお、てめえ等が邪魔してくれたおかげで面倒になっちまったじゃねえかよ。弱ってる“トライデント”の野郎を殺せば褒美が貰えたってのに」
「なるほど、弱ってる相手じゃなきゃ倒せないってか。“闇ギルド”ってのは随分底が浅いんだな」
「ああっ?」
煉の一言にボードが殺気立つ。
「聞こえなかったか?てめえ等の底が浅いって言ってんだよ。耳悪いんじゃねえの?」
「………っ!!んのクソ餓鬼!!」
怒りに染まったボードが周りに大量の<ゴーレム>を造り出した。数はだいたい50体。煉はそれに違和感を感じていた。ボードのエレメント反応を見る限り、大して強くないのが分かるのだ。エレメントの量も煉の半分以下。それなのにこれだけの<ゴーレム>を生み出せるのはおかしい。
「死ねやあっ!!」
「<爆炎衝波>」
ボガアアアンッ!!!
煉は発動した<爆炎衝波>で<ゴーレム>を一撃で消し飛ばした。ボードはそれを見て口を開けたまま絶句する。
「シヴァの<ゴーレム>一体の方が骨があるぞ?」
「くっ……そ!!」
「させるかよ」
ドゴンッ!!
また<ゴーレム>を生み出そうとしたボードに煉が一瞬で接近し、顔面を掴んで地面に叩き付けた。
「てめえごときが<ゴーレム>をここまで生み出せるには何かネタがあるんだろ?」
「っ……!何のことだか……」
ズンッ!!
ボードが惚けた瞬間に顔面スレスレに拳を叩き付けて地面に穴を空ける。
「もっかい聞くが、ネタがあるんだろ?」
有無を言わさない様子で煉がボードを睨み付けた。
「殺るなら殺れよ……どうせ言えば殺されるんだからよ!!」
その言葉を聞いた煉が、ニヤリと笑った。
「そうかい……ライズ、出番だぞ」
「はいはーい」
「あん……!?何だこの金髪……!!」
ライズはニヤニヤ笑いながら、ボードの頭を両側から押さえ付けた。
「それじゃあ、楽しい拷問タイムといきましょうか?」
「拷問だあ……!?餓鬼の拷問なんかで吐くわけ無……」
「はいはい。ライズ、スタートしてくれ」
「了解。じゃあ、強めの300Vから」
ライズの手に雷が迸り、ボードの全身を雷が包み込んだ。
「ごあああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!」
骨がレントゲンで撮られたように透け、そのまま奇声を上げながらボードが悶絶していた。5秒してから雷を止める。
「さ、いつもより強めにしております」
「吐く気になったかな~?」
「誰が……吐くか!!」
「まだ元気そうだな。ライズ、電圧アップ」
「はいよ~。500Vにアップします」
更に激しくなった雷がボードの全身をまた包み込んだ。
「うおごがげえごがばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばっ!!!!!!!!」
流石に効いたのか、口と体から煙を上げて痙攣している。
「おい、そろそろ吐かねえと死ぬぞ?」
「煉~、もう一気に1000Vにしてもいい?」
「待て待て死ぬから本当に……なあ、そろそろ吐かないか?」
「誰…が………吐……くか……この、トマト頭………」
プチンッ!
煉の額で何かが切れた音がした。
「ライズ、電圧アップだ。2000V」
「なっ……!?」
「いいの?死ぬかもよ」
しかし煉は笑顔(内心笑っていないが…)で了承した。
「構わねえよ。例え死んでもまた探すさ」
「まあ、いいけど…」
ライズは電圧アップして2000Vの雷をボードに叩き込んだ。
「…………………………………………………………………っ!!!!!!!!!!!!」
最早悲鳴も上げれず悶絶していた。所々に放電を撒き散らして暴れまわるボードを煉は笑顔で見ていた。
「誰がトマト頭だぁ?ああ?トマト馬鹿にしてんじゃねえよ。リコピン豊富で美容に良いんだぞこら」
怒りの理由が何やら変わっている気がするが……
「煉、そのへんでストップお願いします」
煉の肩にシエンが手を置いた。
「こういう輩は私達が専門ですから。それに、」
「それに?」
「死んでしまっては元も子も無いので…」
見るとボードは全身黒焦げの爆発頭になっていた。
「じゃあ頼んだ」
「分かりました」
シエンの指示でケイドがボードを担ぎ上げた。
「先に戻っているぞ」
「じゃあねえ十蔵く~ん♪」
ケイドとレイナはシエンより先にギルドホームに戻っていった。
「では、私もこれで。次は負けませんからね」
「おう。次も負かしてやるから安心しろ」
シエンもそう言ってギルドホームに戻っていった。
結局、表彰式はうやむやになり、“アナザーワールド”には後々に賞金とカップが贈られてきた。




