●煉VSシエン●
「さあぁあ!!第2試合を制したのは“トライデント”サブマスター、レイナ・シンハルトだぁ!!」
「「「うおおおおおっ!!レイナちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」」」
マイクの実況に熱が入ってるからか、観客(やはり男)が盛り上がっていた。
「十蔵くん、大丈夫?」
「うぬぅ………」
レイナは十蔵を看病するために“アナザーワールド”の陣地に来ていた。
「これで各ギルド互いに1点取得!!つまり、次の試合で決まるわけだぁ!!そんなわけで決勝戦第3試合、
まずはぁ、暴れまわること火の如し!!一拳一脚噴火の如し!!紅蓮の髪を振り乱すその様は正に炎の化身!!“アナザーワールド”ギルドマスター!!赤堂煉!!」
真紅の瞳に闘志をたぎらせた煉が前に出る。
「そしてぇ、対するは!!
ラーヴァオ最強のこの男!!精鋭を束ねるカリスマと実力!!“トライデント”ギルドマスター!!シエン・ヴィッツ!!」
「「「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」」
割れんばかりの歓声をバックに、シエンが悠然と前に出た。
「やっと、君と戦えますね、赤堂煉」
「こちらこそ、久しぶりに楽しめそうだ」
互いの獣のような視線が交錯し、火花を散らす。
「さあぁあ!!早速火花が散っているぞぉ!!決勝戦第3試合!!始めぇ!!」
「先手必勝!!」
合図と同時に煉はシエンとの距離を一瞬で潰し、上段蹴りを放つがシエンは後ろに跳んで回避し、再び地面を蹴って前に跳び、
「いいえ、後手必殺ですよ」
「っ!!」
鋭い拳が当たるのを寸でのとこで回避するが煉の頬に一筋の線が刻まれる。血が頬を伝い地面に落ちた。
「危ねえ……」
「かわしますか、やはり楽しいですね」
「へ、今度はこっちの番だ」
タッ!!
煉が踏み込んだと思うと、その姿が突然消えた。
「え……?」
ほんの一瞬でシエンの背後に回り込み、ストレートを撃ち込んだ。
「くっ……!!」
咄嗟に横に跳んで回避するが、煉と同様にシエンの頬に線が刻まれる。
「ちっ…かわされたか」
「ずいぶん、早いですね……」
「へ、かわした癖によく言うぜ。まあ、次はぶち当ててやらぁ!」
ボオウッ!!!
自身のエレメントである炎を全身に纏わせた。それを見たシエンは、驚きと同時に、歓喜に似た表情を浮かべる。
「貴方も、炎を操る。どこまでも、楽しませてくれますね」
シエンも、自身に炎を纏わせた。しかし、煉のような真紅の炎では無い。妖しい紫の炎であった。
「紫の……炎だと?」
まるで、爛の固有エレメント、フレイムエレメント・タイプシルバーのような存在であった。
「これが私のエレメント。フレイムエレメント・タイプヴァイオレットです」
突然変異の炎を纏ったシエンが不適に笑った。それを見た煉もまた、獰猛な笑みを浮かべた。
「上等だぜシエン!!<火爆大炮>!!!」
煉の右腕から放たれた炎の砲撃がまっすぐにシエンに向かっていくが、シエンが自身の前に造り上げ紫炎の盾により防がれた。
「今度はこちらから」
シエンが右腕を空にかがける。すると、紫炎で造られた無数の球体が現れた。
「<紫丸炎>(しがんえん)!!!」
シエンが右腕を振り下ろすと、紫炎の球体が煉に向けて一斉に襲い掛かった。
「何て数だ、よっ!!」
右に跳んで回避するが、球体は向きを変えて煉を追跡してきた。
「ホーミング機能付きかよ、面倒くせえ……!!<火炎餓喰>(フレイムイーター)!!!」
球体に右手を向け、<火炎餓喰>を発動。全て喰い尽くして消滅させた。そして喰らった分の炎と自分が生み出した炎を混ぜ合わせ、シエンへと一気に発射した。
「これはまた……!!」
巨大な炎の奔流に、シエンの体が飲み込まれた。
「おおっとここで煉が見事なカウンターでシエンの体を炎で飲み込んだぁ!!シエンは無事なのかぁ!?」
興奮した様子のマイクの実況が終わった直後に、煉が発射した炎の奔流が消し飛ばされ、その中から無傷のシエンが姿を現した。
「無傷とか、マジかよ」
「驚きましたよ。まさか私の炎を吸い込むとは」
「………あんたには普通じゃ勝てなそうだな」
煉は右腕をまっすぐに突き出し、全神経を研ぎ澄ました。
「手加減無しだ、<バースト>!!!」
ゴオオウッ!!
右手の甲に刻まれた属性紋章が紅く光り、煉の体を炎が包み込む。それによりコロシアム一帯に熱波を振り撒いた。やがて炎は全て煉の右手に集まり、紅蓮の刀身を持つ一振り、焔真となった。
「予想は出来ていました。貴方が<バースト>を使えるだろうと。しかし実際に見ると、凄いですね」
「あんまり驚いてないな……?」
「いえ、そんなことは。そうですか、<バースト>ですか……私も、使わせて頂きます」
「何……!?」
シエンは右手を胸に静かに当て、呟いた。
「<バースト>」
その瞬間、シエンの右手の甲に刻まれた属性紋章が紫に光り、全身を紫炎が包み込んだ。そして紫炎がシエンの右手に集まり、一本の刺突剣となる。俗に言うレイピアと言うものだ。紫に輝く刀身は日の光りを受けて更に妖しく輝き、持ち手には手をガードするための小型の盾が装備されていた。
「行きますよ、紫鬼<しき>!!!」
紫鬼を構えたシエンが、今までとは比になら無い速度で煉に接近し、神速の突きを放った。
「うおっ!?」
咄嗟に焔真で突きを弾き、紫鬼の軌道を外した。すると紫鬼の先端から放たれた衝撃が後ろの壁に穿ち破砕音を響かせる。
「やるじゃねえか」
額に汗を浮かべながらもニヤリと笑い、煉はシエンに向けて焔真を袈裟状に振り下ろした。その時生じた剣圧でシエンの体を後方に吹き飛ばすが、足で地面を削りながら勢いを殺した。
「とんでもない馬鹿力ですね」
「突きの衝撃だけで壁に穴を開ける奴に言われたかねえよ」
「ふふ、そうですね。まあ、やりますか」
「来い」
互いに地面を蹴って距離を詰め、互いの得物をぶつけ合い火花を散らした。
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
そこから神速の打ち合いが始まった。目で追うのが不可能なスピードで行われる煉とシエンの剣捌きは、観客達の視線を奪っており、マイクの実況の入れないほどの雰囲気である。
「せあっ!!」
「ふっ!!」
煉が繰り出した焔真の突きがシエンの肩を浅く斬った。それと同時にシエンの突きが煉の肩を貫く。
「いっ……てえな!!だらぁっ!!」
ドガッ!!
痛みに耐えシエンを蹴り飛ばし、肩を貫いている紫鬼を強引に引き抜いた。肩から流れる血が煉の服を紅く濡らす。
「うっ……蹴りは効きますね…」
「こっちは肩貫かれてんだっての。たく、いってえ……!」
「それでも元気そうですね?」
「前に胸にでかい穴空けられたからな」
「は……?」
「まあどうでもいいや。やられた分は、返さしてもらう」
煉は体勢を低くして、焔真を左の腰に当て、目を閉じた。
「何だか分かりませんが、させません!!」
シエンが紫鬼を構えて煉に突っ込んでいく。やがて、煉の間合いに入る。その瞬間、煉が目を開いた。
「<居合い参の型・残炎>!!!」
間合いに入ったシエンに向け、煉が横薙ぎに焔真を振り抜いた。シエンはそれを紫鬼で受けたが、途端にある違和感を感じた。
ガギギギギギギギギィンッ!!!!!
そう、焔真を受け止めると複数の衝撃が紫鬼に伝わってきたのだ。横薙ぎの一撃だと思っていたがシエンは不意をつかれて体勢を崩すが、すぐに立ち上がりバックステップで煉との距離を取る。
「驚きました……完全に一撃だと思っていたんですが…まさか複数の剣撃を叩き込むものだとは……」
「本当にそれだけだと思うか?」
「え……?」
「この技はちょいとばかし変わってんだよ。それを今から…見せてやる」
呆けるシエンを無視して、煉は焔真の峰を指で素早くなぞった。すると、
ドガガガガガガガガガガガガガガガがッ!!!!!
「なっ……!?」
紫鬼が激しい爆発を繰り返し、持ち手であるシエンもろとも吹き飛ばされた。
「これが<居合い参の型・残炎>の効果だ。起爆性のエレメントを刃に乗せて斬り付けた相手に付着させる。んで俺がエレメントを起爆させれば、さっきみたいになる」
煉が焔真をクルリと回し得意気に笑った。
「ぐっ……痛たた……」
紫鬼を杖代わりに立ち上がったシエンは腰を撫でていた。
「……普通なら衝撃だけで粉砕骨折なんだが、どんだけ丈夫なんだよ」
「鍛えてますから」
「鍛えすぎだろ…」
軽く呆れながらも、改めてシエンの実力を見た煉は、一気に勝負を決めようと動いた。焔真の切っ先を天に向けて膨大な炎を纏わせ、身の丈を越える巨大な炎の刃を形成させる。
「これで決めさせてもらう」
「そうですか…なら、」
シエンも紫鬼を天に向け、紫炎を纏わせ巨大な刃を形成させた。
「私も、決めさせてもらいます」
「へ、行くぜぇ!!」
「行きますよぉ!!」
炎の刃を構えた両者が一斉に駆け出し、互いの得物を振り抜いた。
「<真火焔斬>!!!」
「<紫鋭皇牙>!!!」
煉の上段斬りと、シエンの突きが激突し、コロシアムが熱波と衝撃波に包まれた。
「何と言う破壊力!!何と言う衝撃!!何と言う熱さ!!炎と炎の激突は今正にコロシアムを支配しているぜぇ!!かつて“トライデント”がここまで追い込まれることがあったであろうか!?勝つのは、煉か!?シエンか!?どっちなんだぁ!!」
マイクの実況にも熱が入っている。
「ぶ、ち、抜、けえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
煉の気迫で底上げされた焔真の一撃がシエンの突きを退かせていく。
「っ……!!!うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
バキィンッ!!!
「な……!!」
「く……!!」
煉とシエンの力で限界を越えた焔真と紫鬼が粉々に砕け散り、ただのエレメントに戻った。その瞬間、わずかに早く動いた煉が、右腕に炎を集束させた。
「フィナーレといこうか!!」
「あっ……!!」
「<火紅鎚>!!!」
ズドンッ!!
煉の十八番がシエンの体を撃ち抜き、コロシアムの壁まで殴り飛ばした。壁に激突し、めり込んだまま気絶している。
「はあ、はあ、はあ…」
煉は限界が来たのか、肩で息をしている。その時、マイクの実況が入った。
「い、今……このコロシアムの記録が塗り替えられた。最強を打ち破り、見事優勝を勝ち取ったのは、ギルド“アナザーワールド”だあぁぁぁぁぁっ!!」
「「「わああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」」」
「やったね煉!!」
「お見事でござる!!」
ライズと十蔵が後ろから煉に抱きついたことにより、疲労困憊の煉が崩れ落ちた。
「お、お前ら……今疲れてんだから…」
「まあそう言うなって」
「初出場初優勝でござる!!」
聞いちゃいない。
「シエン、大丈夫か?」
「負けちゃったね~」
ケイドとレイナが壁にめり込んだシエンを引き抜いた。シエンはまだ疲れた様子だ。
「負けてしまいましたね……ふう」
「大丈夫かシエン?」
「ええ、何とか。最後の一撃は効きましたよ」
腹を撫でながら弱く笑っている。
「それでは、間もなく表彰式を始めましょう!!それぞれ中央に集まっ……」
「集まる必要は無い」
「ムグッ!?」
マイクの実況の途中で何者かがマイクの口を押さえた。
「何だ……?」
「何でしょうか……?」
煉とシエンの視線が実況席に注がれた。そこには、黒ずくめの男がマイクの口を押さえてナイフを喉の当てている。
「何だあいつ等……」
煉はいつでも動けるように隙無く構える。すると男が指を鳴らした。それにより、シエンの周りを無数の黒ずくめの集団が囲んだ。
「こいつ等は、“闇ギルド”………!!」
「ヒヒ、あんたが弱るのを待ってたよ。目障りなあんたをやっと殺せるしな」
黒ずくめの1人が耳障りな声を上げてナイフを嘗めている。衛生上よろしくないな、と煉は思っていた。
「油断しましたね……こんな時に襲われるとは」
「数だけなら……ざっと200くらいだな」
「こんな規模の“闇ギルド”は、“ニーズヘッグ(邪荒竜)”しかいないわよね」
ケイドとレイナの顔にも緊張がはしる。
「恐らく、レイナの予想通りでしょう。こいつ等、“ニーズヘッグ”です」
「そう言うこった。キヒヒ。さて、どうやって殺して…」
男がシエン達に歩を進めた瞬間、
「おい」
ガシッ!!
「は……?」
いつの間にか男の後ろに立っていた煉が、男の頭を鷲掴みにしていた。そのまま握力で頭を締め付けていく。
「いぎゃああああっ!!」
「どういう事情か知らねえがな、てめえ等が騒ぎ立ててるせいでよぉ……」
煉は頭を持ったまま腕を振り上げ、
「表彰式が始められんだろうがぁぁぁぁぁ!!!」
「いやそこなの!?」
バキャアッ!!
途中のライズのツッコミも虚しく、煉は怒りの形相で男の顔面を地面に叩き付け、クレーターを造り出した。それにより他の奴等が殺気立つが、それを上回る殺気を込めた煉の一睨みで他のが後退りしていく。
「人がせっかく気持ち良く試合を終えたって瞬間に出て来やがって。てめえ等のことなんざハナッから気付いてたんだよ!!出るにしてもタイミングを考えろやボケ野郎共!!」
「気付かれてただと!?」
「控え室でがっつり視線感じたわ!!“闇ギルド”だの名前はいっちょまえのくせしてそんなんもわかんねえのか!!厨二くせえんだよこの野郎共!!」
「煉……いつもより怒りが激しいような…」
「まあ、確かにでござるな」
ライズと十蔵の呟きも今の煉には聞こえていない。
「おいシエン、“闇ギルド”ってことはこいつ等捕まえていいんだよ?」
「へ、え、ええ。問題ありませんが…」
「よーし!!お前等ぁ、出番だぞ!!」
煉の声に反応して、観客席からリオ、ウェド、美紀が跳んできた。
「また面倒くさいのが来たわね…」
「まったく、表彰式終わったら可愛い子探そうと思ったのに…」
「あたし達って、トラブルに巻き込まれやすいのかな…」
「そう言うなって。シエン、お前等は休んでろ。こっからは、“アナザーワールド”が相手だ!!」
「ノリノリでござるな」
「諦めようぜ……」




