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●十蔵VS……?●

“アナザーワールド”と“トライデント”の一戦目はライズが見事勝利を納めてくれた。正直あの鎧を砕くライズの突破力には煉も素直に驚いている。ライズはよほど疲れたのか、今はこちらで大の字に寝転んでいた。


「ライズ殿、お疲れ様でござる。次の試合、任せてくれでござる」


ライズに労いの声を掛け、十蔵が前に出た。


「さぁあ!波乱の幕開けとなった決勝戦第2試合はぁ、その一撃に貫けぬもの無し!!今までの試合全て非道な突きで相手を葬ってきた、“アナザーワールド”海上十蔵ぉ!!」


「何かすげー悪そうな奴だな」


マイクの実況に煉はそうツッコンだ。


「そして対するはぁ!!“トライデント”のサブマスター、キャッチコピーはぁ、貴方のハートを狙い撃ち!!レイナ・シンハルトォ!!!」


歓声(ほとんど男)が一気にヒートアップする。が、そのレイナとやらが出てこない。


「すいません、レイナは今向かっていると連絡がありまして、もう着くそうなんで…」


シエンが申し訳なさそうに謝っていた。苦労してるんだな、シエン。すると、


「ごめんお待たせーーーーーーー!!!」


鈴の音のようなアルトボイスがコロシアムに響き渡った。見ると、観客席を飛び越えながらこちらに向かってくる影が1つ。


「途中で色々あって遅れちゃったって……!!きゃあぁぁぁぁぁぁ!?」


その影が盛大に躓いて空中に放り投げられた。


「危な!!」


「拙者が……!!」


十蔵が影の落下地点までダッシュし、その体を受け止めた。ギリギリセーフだ。影はお姫様だっこの状態で十蔵に受け止められ、しばし放心していた。


「ふう、大丈夫でござ………!?」


今度は受け止めた十蔵が絶句していた。それもそのはず。何故なら受け止めた影は女性。ここまではいいだろう。しかし、格好が水着だったのだ。しかもボンキュボンのナイスバディを露出の激しい紐ビキニ。足には似つかわしくない革製のブーツを履いていた。

十蔵の顔が急速に赤くなっていく。


「あつつ、貴女が受け止めてくれたのね?ありがと……」


女性は顔を十蔵に向けた瞬間、口を開いたまま動きを止めた。それを見たシエンとケイドが、


「まずいですね」


「ああ、まずいな」


と意味深に呟いている。


「あの、」


「へ!?な、何でございましょうか!?」


「名前は?」


「名前、せ、拙者は海上十蔵と申すでござる!!」


「海上、十蔵。やっと見つけた」


「へ……?」


呆ける十蔵を無視して、女性は満面の笑みで十蔵の首に抱き着いた。


「!!?」


「私の、王子様!!」


抱き着きが効いたのか、十蔵はそのまま放心していた。


「何と言うことだぁ!!何とあの“トライデント”サブマスター、キャッチコピーは貴方のハートを狙い撃ち!!のレイナ・シンハルトが突然十蔵選手に抱き着いたぁぁぁぁぁぁ!?」


マイクの実況にもいつも以上に熱が入っていた。観客達(男)からは悲痛な叫びが聞こえてくる。


「ちょ、王子様とは、どういうことでござるか!?」


「そのままよ。貴方に惚れました。私と付き合ってください!!十蔵さん」


「んな!?」


ストレートな告白に赤面する十蔵。それに対して観客(男)からブーイングが発生した。


「ふざけんなぁぁ!!」


「レイナちゃんに何しやがったぁぁぁ!!」


「殺すぞござる野郎!!」


「僕よりも先にそんな可愛い娘に告白されやがってぇぇぇぇぇぇ!!」


「ウェド殿まで!?」


「はいはい落ち着け皆の衆!!試合に移れんだろうが!!」


マイクの一喝でヤジがストップした。


「さあ、では仕切り直しだ!!決勝戦第2試合、海上十蔵対レイナ・シンハルト!!」


「と、とりあえず下りてほしいでござる…」


「え~、あっちまで運んでよ、十蔵さん」


「そう言われても、これ以上何かしたら……」


「じゃあ下りてあげなーい」


「そんな殺生な……トホホ…」


仕方無くレイナはお姫様だっこで運んだ。その際にはやはりヤジがヒートアップした。シエンとケイドから慰められた時は泣きそうになっていた。


「まったく、駄目ではないですかレイナ。あんな風にしては」


「だってさシエン。彼、私の運命の人のイメージのまんまなんだもん」


「そんなんですか?」


「うん。青髪で、黒目で、変わった服着てて、木の靴を履いてて、変わった口調の人」


「偶然とは恐ろしいですな……」


シエンとしてはそう言うしか無い。


「それでも、いきなり付き合ってくださいと言うのは駄目です。相手の事情も考えないと後々後悔しますよ?まずは、友達から始めましょう。これが大事です。分かりましたか?」


「うん分かった」


レイナは元気に頷いて前に出ていく。


「十蔵、お前大丈夫そうか?」


こちらでは色々いっぱいいっぱいな十蔵に煉が話していた。


「ぬう。分からぬでござる。なにぶん、今の今まで女性に告白されたことなど無かったもので…どう返事を返したらいいやら…」


「いやいや違うから。試合が大丈夫かってこと」


「おお、拙者レイナ殿と試合でござった。大丈夫でござる。やるからには勝つでござる!!」


気合いを入れた十蔵が前に出た。


「さぁあ!!いよいよ試合開始だぁ!!決勝戦第2試合、開始ぃ!!」


マイクの実況で試合が開始された。


「ねえ十蔵さん、いや十蔵くん」


「何でござるか?」


「この試合で私が勝ったら、付き合ってください。で、もし負けたら、友達から始めましょう!!」


諦めないのか。十蔵は内心でツッコンだ。


「し、承知したでござる。しかし、やるからには負けぬでござるよ」


「や~ん。やっぱりカッコイイ!!絶対勝つから!!」


レイナは銃の形にした右手を十蔵に向け、


「<ハートパニッシュ>」


指先に集束された雷が弾丸となって十蔵に放たれた。光速の弾丸は見事直撃し、雷に包まれる。


「ぬおおおおおおっ!!」


「うふ♪これで十蔵ちゃんのハートを頂……」


「効かあぁぁぁん!!!」


「えぇぇぇっ!?」


腕を広げ自身を包んでいる雷を打ち破ったことにレイナが驚きの声を上げた。


「レイナの雷に耐えますか、どんな体をしているんでしょうか?」


「頑丈だな…」


シエンとケイドも驚きの声を上げていた。


「あいつ水属性なのに雷受けきったぞ?」


「うん。煉が転校してくる前に俺から雷を受けてたから耐性が付いたんじゃない?」


「どういう状況でそうなった?」


「聞きたい?」


「止めとく…」


聞いてはいけないと本能が呼び掛けていた。


「む~。やっぱり簡単に手に入ったら燃えないもんね。だったら……!」


何やらスイッチの入ったレイナが両手の指の狙いを十蔵に定めた。その指全てに雷が迸っている。


「<ハートガトリング>!!!」


ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!!


「ぬおおおおおおっ!?」


視界を埋め尽くすほどの雷の弾丸が一斉に襲い掛かってくる。回避は間に合わない。十蔵はその場に水の壁を造り出した。




「<津波壁>!!!」


造り出した水の壁が雷の弾丸を受け止めるが、あまりの数、そして威力に長くは持ちそうに無い。十蔵は<津波壁>が壊される前に横に跳んで弾丸を回避し、地面に拳を叩き付けた。


「<激流昇>(げきりゅうしょう)!!」


するとレイナの足下を貫いた激流がレイナの体を打ち上げた。


「きゃあ!!すっごーい!!ありがとう十蔵くん!!」


しかし本人は楽しんでおり更に礼を言う始末であった。レイナはそのまま激流の上に立ち、十蔵を見下ろす形になる。


「そろそろハート、頂くからね♪」


右腕を十蔵にまっすぐ向けたレイナがニヤリと笑い、雷を纏わせる。今までとは格の違う雷量だ。


「<ハートランチャー>!!!」


右腕から放たれた雷の巨大な弾丸。それは雷のロケットランチャーであった。

<津波壁>では数秒持たずに破壊されるだろうそれに、十蔵は巨大な水の奔流で迎え撃った。


「<激流波>!!!」


ぶつかり合う雷と水が大気を震撼させる爆発を引き起こす。


「きゃあ!?」


「ぬおっ!?」


相殺された爆発により互いの体が吹き飛ばされた。


「あたたた。もう、十蔵くんは………あれ?」


辺りを見回すが、十蔵の姿が見えない。


「ここでござる!!」


声は上から聞こえた。そこを見ると、高く跳躍した十蔵がそこにいた。


「これで決めさせて頂く!!」


両腕に激流を纏わせた十蔵が、レイナ向けて一気に激流を放射した。それはやがてコロシアムを水没させる。


「きゃあ、プールだ!!」


「いや、もっと面白いものでござる!!」


するとそのプールが回転し始めた。


「きゃあ!!流れるプールだ!!」


「まだまだでござる!!」


回転は徐々にスピードを増し、まるで洗濯機のようなスピードまで加速した。


「あ、あれ?ちょ!?十蔵くん!?」


「いくでござる!!<渦潮>!!!」


正に巨大な渦潮がコロシアムに発生し、レイナの体を巻き込んだ。


「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


悲鳴を上げるも脱出出来ずに渦潮でもがいているレイナ。それに構わず更に回転を上げていく。


「そろそろ決めさせて頂くでござる!!」


すると十蔵自ら渦潮の中心に潜り、


「せいっ!!」


両手を地面に叩き付けた。その瞬間、渦潮全てが弾けたように爆発し、レイナも飛ばされた。その際生じた水飛沫が観客達に降り注ぐ。


「おおっとぉ!!ここで十蔵が起こした水の爆発で我らがアイドル、レイナがぶっ飛ばされたぁ!!」


「「「レイナちゃーん!!」」」


観客(男)の悲痛な叫びがこだました。


「やったでござ、ん?」


十蔵がガッツポーズをとろうとしたら、頭に何やら落ちてきた。取って確認してみると、2つの布を紐で結んだ形。それはレイナの胸を隠している水着(紐ビキニ)であった。何故それだけ手元にあるのか。十蔵は即座に辺りを見回し、後ろにうつ伏せで倒れているレイナを見付けた。


「レ、レイナ殿……」


「ん…十、蔵くん?あ、あたしの水着……」


「ち、違うでござる!!これは落ちてきたんでござる!!」


「拾ってくれたんだ。ありがとう十蔵くん!!」


そう言ってレイナが立ち上がった。そのせいで、隠れていた2つの乳房が露になる。それを見た十蔵は、鼻を抑えるも間に合わず、


「ごふぅあっ!!」


大量の鼻血を吹き出し崩れ落ちた。


「きゃあ!!十蔵くん、しっかりしてえ!!」


レイナは倒れている十蔵を抱き起こした。ちなみに水着は、着ていない。


「おい水着を着てくれ!!十蔵が目を覚ましたら次は死んじまう!!」


「そうだよ!!目を覚ました瞬間生乳なんて2つの意味で昇天しちまう!!」


煉とライズが焦りながらレイナに水着を着るように呼び掛ける。レイナも必死の説得に頷いて水着を着用した。十蔵は鼻血で濡れて気絶している。


「あ、あぁ……し、勝者、“トライデント”レイナ・シンハルトォ!!」


マイクの実況で第2試合の決着が付いた。


「最低」


「変態ですね」


「羨ましい……」


リオと美紀の凍てつく声とは逆に、ウェドは1人羨望の視線を送っていた。

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