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●九尾と阿修羅●

“黒骸骨空賊団”の船にて、煉は航板で小型の船の殲滅。リオ達は船を壊すために内部へと侵入した。


「さ~て、サクッと片付けるか……!!」


煉は火炎球を複数生み出し、飛び回る小型の船に向けて一気に放った。ホーミング機能付きだが、小型の船は巧みな飛行技術で火炎球を回避していき、更に回避しながら<アンチエレメントシステム>を搭載した鎖を発射して煉を縛り付けていった。計3体からの鎖縛りだが、


「軽い、なっ!!」


鎖をまとめて掴んで振り回し、そのまま航板に叩き付けた。その衝撃で航板に穴が空きその穴に落ちていく。その際にリオ達の悲鳴が聞こえたが、聞こえないフリをした。


「こういう奴等には、‘あれ’を使うか」


煉は膨大な炎を生み出し、形を与えた。<紅蓮鳳凰>かと思われたが、それは違った。まず獣の爪のような形になった炎を両手両足に装備し四つん這いになる。更に、炎が9本の尻尾となり煉の腰に装備された。

その姿は、9本の尻尾を持つ狐のように見えた。


「<紅蓮九尾>(ぐれんきゅうび)!!!」


九尾の狐となった煉が咆哮を上げて大気を震わせた。それにより小型の船がバランスを崩してぐらつく。

煉は目を細め、狙いを慎重に定めた。9本の尻尾が意思を持つように、小型の船の動きを追う。


「ロックオンだ……!

<九尾火閃>(きゅうびかせん)!!!」


やがて狙いが定まり、9本の尻尾の先から集束された炎のレーザーが高速で放たれ船を貫いた。貫かれた船は融解し、爆発四散して散っていく。その他に多彩な遠距離砲撃で船を的確に落としていった。<紅蓮九尾>は<紅蓮鳳凰>と違い単体に対する戦闘力と機動力は無いが、その代わりに広い攻撃範囲を持っており殲滅力がある。固定砲台となった今の煉の射程距離は、約1キロほどだ。しかし、船以外の戦闘員がナイフを振り回しながらこちらへ向かってくるのが見えた。煉は砲撃を一時中断し、四つん這いの状態で低く唸り声を上げる。

そして両手両足で航板を捉え、獣のようなスピードで戦闘員に突っ込んだ。獣の爪となった炎が敵の皮膚を焦がし、引き裂いていく。爪の他にも9本の尻尾が暴れまわり戦闘員を薙ぎ倒していった。


「ふう。ちょいと休憩……」


少し息が上がった煉は<紅蓮九尾>を解除した。


「こいつは<紅蓮鳳凰>より消費がでかいからな、気を付けねえと…っと」


煉が<紅蓮九尾>を解除した途端に、残りの戦闘員が一斉に襲いかかってきた。

案外数がそこそこいたので面倒くさそうにため息を吐いた。


「まだいんのかよ……たく、しゃあねえか」


煉は体から噴き出した再び炎に形を与えた。今度は翼でも尻尾でもなく、4本の腕であった。それが右肩に2本、左肩に2本装備され、合計6本の腕を持つ煉へとなった。更にその状態から<バースト>を解放し、真紅の刀身を持つ一振り、焔真を顕現した煉は、


「<分火>(わけび)」


と、呟く。すると、焔真が分身し、六振りとなって煉の腕に握られていく。


「<紅蓮阿修羅>(ぐれんあしゅら)!!!」


六刀の焔真を構えた煉が自身の技を叫んだ。この形態を簡単に説明するなら、超近接格闘形態だ。六本の腕に握られた六振りの焔真を使い、常人には不可能な六刀流を使いこなす。ちなみに煉の六刀流は我流である。阿修羅と化した煉はその名に違わず、巧みな刀使いで戦闘員を切り裂いていく。手数が多く、正面に2本、側面に2本、背面に2本構えて防ぎ、切り裂いていった。死角から振り下ろされた複数の刃も、クロスした二本の焔真で受け止め融解させる。


「さーて出血大サービスだ!!ありがたく燃え尽きやがれ!!」


焔真を構えた煉が、その場で高速回転を始めた。徐々に速度を上げていき、焔真の刃が風を切り裂く音が耳に届く。それだけでなく、煉を中心に炎が渦巻いて炎の竜巻を造り上げていた。徐々にサイズを増していき、航板が埋め尽くされるほどとなる。


「<修羅炎旋>(しゅらえんせん)!!!」


炎の竜巻が猛威を奮って残り全てを吹き飛ばした。


「はあ、はあ、はあ、うおえっ……!」


消費の多い技を多用したせいで煉の体力は底をついていた。息を荒くしてその場に座り込む。煉の仕事はこれで終了。後はリオ達が船を壊すのを待つだけだ。

すると、タイミングを見計らったように船が大きく揺れて辺りから煙を上げていた。恐らくリオ達がやってくれたのだろう。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


場所は変わって黒骸骨空賊団船内動力部。要するにエンジンや重要な機関がある所だ。リオ達はここで、


「ライズ、そっちも壊しといて!!」


「はいよー。あ、十蔵。そっちよろしく」


「承知でござる。む?ウェド殿、そちらを頼むでござる」


「了解。美紀ちゃんそっちよろしくね~」


「任せて下さい」


遠慮無しに暴れまわっていた。リオの風がパイプやケーブルを切断し、ライズの雷が機関をショートさせ、十蔵の水が辺りを浸水させ、ウェドは氷で動力部を氷結させて、美紀は岩で粉々に砕いていった。立派なエンジンは見るも無惨な姿に変わり果てていた。


「そろそろ落ちるんじゃないかしら?」


「じゃないかね~?お、奴さんが感付いたみたいだよ」


リオ達の破壊活動に気付いた敵兵が複数向かってきていた。


「リオちゃん達は続けてやっといて。俺と十蔵で片付けるから。な?」


「勿論でござる」


ゴキゴキと拳を鳴らしたライズが獰猛な笑みを浮かべていた。


「早速だけど十蔵。あいつ等に水ぶっぱなせー!!」


「承知ぃ!!」


十蔵はライズの指示に従い、戦闘員向けて右腕から激流を発射した。勢いのある激流で一瞬で水浸しになり、さらに勢いに負けて倒れていく。


「上出来だよ~ん。せりゃっ!!」


水浸しになった戦闘員向けて、今度はライズが雷を放射し、感電させた。


「「「あばばばばばばばばばばばばばばばっ!!!!!」」」


戦闘員達は奇声を上げながらエックス線で見たように一瞬骨になっていた。しかも感電したのは戦闘員だけでなく水浸しになった周りの機関も感電していた。

今のがトドメになったのか、エンジンが爆発して煙を上げた。


「もういいよね?」


「で、ござるな。リオ殿、そろそろ行くでござる」


「わかったわ」


こうして破壊活動を終えたリオ達は航板に上がっていった。上がって一番に目に入ったのは死屍累々となっていた残党共であった。その惨状を作り出した当の本人である煉は疲れた様子で座り込んでいる。煉はリオ達を見ると片手を挙げて、よう。と手を振っていた。


「エンジンはぶっ壊せたみたいだな」


「もちろん。あんたも派手にやったわね」


「無駄に数が多かったからな、手加減する暇が無かった」


「最初から手加減なんてしないくせに」


「言ってくれるよ。お、セシリア達が来たな」


遠くからセシリア達の船がこちらに向かってきていた。


「うおーい煉ー!!!終わったかー?」


「終わったぞー!エンジンもぶっ壊したー!」


「よーし!!お前等ぁ、主砲用意しなぁ!!」


「「「アアイアイサー!!」」」


セシリアの指示で乗組員が一斉に動き出し、何かを準備し始めた。しばらくすると、セシリアの船の先端が開き、巨大な大砲が伸びてきた。その標準は、こちらに向けられている。


「エレメント充填開始しな!!」


「アアイアイサー!」


巨大な大砲に無数のエレメントの粒子がチャージされていき、輝きを増していく。


「おいおい俺等まだこっちにいるぞ!?」


「早く脱出しないと塵になるぞー?」


「ふざけんなチキショー!!」


シャウトしながら痛む体に鞭打って<紅蓮鳳凰>を発動してセシリア達の船へと飛行する。リオは風を発生させて残りのライズ達を浮かばせた。全員乗り移ったところで、セシリア達の船の主砲が充填完了した。

なんともナイスなタイミングだ。


「よーし!!セシリア空賊団主砲、エレメントキャノン、発射ぁぁぁっ!!」


ドゴオオオオオオッ!!!


凄まじい轟音と共に、膨大なエレメントの砲撃が直線状に発射された。砲撃は一寸の狂いも無く、黒骸骨空賊団の船を貫き、更に吹き飛ばしていく。小さな爆発を繰り返していき、やがて巨大な爆発と共に船が大破した。


「すげー威力……」


とんでもない威力を目の当たりにした煉達は呆然としていた。


「当ったり前よ!エレメントキャノンは家の船の動力全部を回してぶっぱなすもんだからな。そこらの船なら一撃楽勝よ!!」


「そうか、動力全部をか…………って、じゃあこの船は……」


「おう。落ちてるな」


「落ちてるな、じゃねえだろうがぁぁぁっ!!」


煉は速攻でエンジンルームに向かってエレメントを注ぎ込んだ。そのおかげで落下のスピードが弱まり安定した飛行に戻った。ただでさえ消費の激しい<紅蓮>シリーズを三連続で使った上に船の動力を賄っていたら、自然とエレメントが底を着く。つまり、


「もう……無理……」


気絶である。白目を剥いた煉はそのままエンジンルームで発見されるまで気絶していた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「じゃあ、この辺りで大丈夫か?」


「ああ。ありがとな、セシリア」


「気にすんなって!!」


煉の気絶から1日後、セシリアの船は目的地であるラーヴァオの近くに到着していた。煉が気絶している間に、黒骸骨空賊団はフラム達によってラーヴァオまで先に連合されている。


「いや~しっかし、あんたには行ってほしくないんだがね~」


「諦めてくれ」


セシリアの最後の勧誘も、煉は素っ気なく断った。


「はあ。まあ予想通りだけどな。じゃ、下ろすからあれに…」


「大丈夫だ。美紀」


「はい」


美紀のエレメントを使い、あのボブスレー風の船を造り出し、それに全員飛び乗った。


「じゃあなセシリア。縁が合ったらまた会おうぜ」


「ああ。また会おう!!」


「「「じゃあね~煉お兄ちゃん~」」」


子供達も手を振ってくれた。


「よーし、しっかり掴まってろよお前等ぁ」


「「「は?」」」


リオ達は何が起こるのかを理解していないようだ。それを他所に、煉は船の後方で<火爆掌>を発動させ、その推進力でセシリア達の船から飛び出した。


「いやあああああああああああああ!?」


「こうなると思ったぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「ぬああああああああああああああ!!」


「死ぬうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」


「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「うっせえぞお前等!!」


「何よこんなんなるなんて誰も思わないわよ!!落下して死ぬなんて御免よ!!」


「死にゃしねえから安心し、ろ!!」


地面に激突する直前に、煉が両手から炎を噴射して落下のスピードを殺してやんわりと着地した。着地する頃には煉以外が死にかけの顔をしているのは気にしない。もう遥か上にいるセシリアの船からは花火が打ち上がっており、歓声が聞こえてきた。目の前には巨大な都市、ラーヴァオがある。自分達がこのイグニスに来た理由がわかるかもしれない。煉は期待を込めてラーヴァオへと船を進めた。

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