●VS“黒骸骨空賊団”●
煉がセシリアの船に乗ってエンジン係を担当して1日が経っていた。夕食を終えて仕事に取り掛かかり、1人で船の動力を賄ったせいか、セシリアからまた熱烈な勧誘を受けていた。勿論首を縦に振ることは無いのであるが。
「あ~あ、あんた等が来てくれりゃあ楽しくなんだが…」
「諦めてくれ」
「ちぇ……」
勧誘を蹴られ不機嫌なセシリアに乗組員の男から声が掛かった。
「船長。前方からこっちに向けて巡視船が来てますよ」
「うわっ…マジで?どこの巡視船だい?」
「ありゃあラーヴァオの巡視船ですぜ。しかもあの“ナルシスト”が乗ってる……」
「マジかよ……」
何だ?ナルシストがいるのか。しかしラーヴァオの巡視船か。あと少しか。
煉は冷静に情報を整理していた。しばらくして巡視船が接近し、こちらの船に複数の人間が乗り込んできた。数は5人。その中央の男は貴族風の格好に身を包んだ気障な男であった。
多分こいつだな。煉は口に出さずにナルシストを見極めた。そのナルシストが前に出てセシリアの前に、膝まづいた。
「お久しぶりですセシリア船長。ご機嫌麗しいようで何よりです」
「あたしの顔見てご機嫌麗しいとはよく言えたもんだよ。あたしは機嫌はすこぶる悪いんで」
「何と……一体どこの者が貴女にそのような不快な思いを…」
「あんただよ!!」
よほど嫌いらしくキレたセシリアがナルシストに怒鳴りを上げた。
「何故ですか?私は貴女にこれほど愛を注いでいるというのに!?」
ナルシスト、セシリアの言葉に大号泣。涙が滝の如く流れ落ちる。
「あーもう五月蝿い!!用件があるならさっさと言え!!」
「ぐすっ……実は最近、空賊の被害が増加しており、調査の為に来たんです。セシリア船長を疑うのは胸が痛みますが、どうか話を聞かせてください」
「たく、最初からそう言いな。あたし等は略奪はかれこれ1年はしてねえよ」
「いやいや俺等ついさムグググ!!」
ライズが余計な一言を言いそうなので煉が口を塞いだ。
「それを聞いて安心しました。これで貴女に疑念というおぞましい感情を抱かずに済みます。ところで……この青年達は?」
ナルシストは煉達に視線を移してセシリアに質問した。
「客だ。ラーヴァオまで行きたいって言ったから乗せてる」
「そうでしたか。初めまして、私は“ラーヴァオ護衛空軍”で長を務めています、フラム・シーボルと申します。以後、お見知り置きを」
「俺は赤堂煉だ。よろしく」
「リオ・ハーマスです」
「俺っちはライズ・ブルーム」
「拙者は海上十蔵でござる」
「ウェド・エルトゥーガだよ」
「岩坂美紀です」
全員簡単な自己紹介をし終えると、
「あとこいつ、かなりのたらしだから、リオちゃんと美紀ちゃんは気を付けなね?」
セシリアがリオと美紀に注意を呼び掛けていた。
「しませんよそんなこと!!私がセシリア船長一筋なのはご存知でしょおぉぉぉぉぉぉ!!」
フラム、号泣しながら大絶叫。
「あーもう五月蝿い!!男がビービー泣くな。他に用は無いのか?」
「そうでした」
フラムはそう言うと巡視船から巨大な木箱を3つ運んできた。
「余りの物資で申し訳無いですが、食料と衣服とその他色々です」
「いいのかい?毎度毎度ありがたいけど、あたし等空賊に物資をやるなんて。知られたらヤバイんじゃないのか?」
「構いません。もしバレて追放されたとしても、貴女と一緒に空賊を出来るなら、良いかもしれません」
迷うことなく言うフラムにため息を吐きながらも、セシリアは感謝の言葉を投げた。
「まあ、ありがとなフラム」
「いえ、むしろ名前を呼んで頂いてこちらがありがとうございます!!それではまた!!」
顔を紅潮させたフラムは早口で会話を切って巡視船に戻っていった。
「面白い奴だな?」
「ああ煉。まあな、あいつ等の船が故障して、たまたま通りがかったあたし等が直して以来、あんな風に物資を持ってきてくれてる。食料を賄えない時には、ありがたいよ」
「へえ。で、ラーヴァオまであとどんくらいだ?」
「あと1日くらいだ。それまでエンジン係、よろしくな」
「おう、任せ……」
バアアアアアアンッ!!
煉の言葉を遮り、耳を刺す巨大な爆発が大気を震撼させた。
「何が起こった!!」
「大変です船長!!前方約3キロの町が空賊に襲われてます!!」
「あんだと?どこの者だい!!」
「わかりません。見たこと無い旗です。赤い旗に、黒い骸骨が書かれてます」
「ああいう奴等がいるからあたし等の品位が疑われるってぇのに!!あんた等、あの野郎共を落とすぞ!!」
「「「アアイアイサー!!」」」
セシリア達が戦闘準備に取り掛かると同時に、巡視船に戻っていったフラムが戻ってきた。
「セシリア船長、一体何が!?」
「前方で見たこと無い空賊が町を襲ってるから、撃ち落とす!!」
「ん?あれは……!」
フラムは町を襲ってる空賊を見た瞬間、顔色を変えた。
「知ってるのか…?」
「ついさっき情報が入ったんですが、ここ最近暴れている空賊は、赤い旗に黒い骸骨を掲げた船と…」
「ビンゴだな。だったら尚更撃ち落とす!!」
セシリアの闘争本能が燃え上がっていた。
「この前はワイバーンで今回は空賊か。ライズ、相手側の船の特徴と数は?」
煉は冷静にライズに聞いた。
「船のサイズはこっちの2倍。装備も一級品だね。あと小型の船が周りを飛び回ってる。数は200くらいだね」
「オッケー。セシリア、俺等も加勢するぞ」
「頼んでもいいのか?」
「任せろ。な、皆?」
「「「了解」」」
全員異議無しだ。煉は骨をバキバキ鳴らして獰猛な笑みを浮かべた。
「じゃあ、俺先に行くぜ!!」
航板を駆けて助走を付け、船の外に飛び出した。当然重力に従い落下していくが、煉は<紅蓮鳳凰>を発動させ、形を与えた6枚の炎翼を装備し、羽ばたかせて敵船に向けて飛行した。
「煉の野郎、あんなことまで出来んのか……!」
セシリアも煉の力を見て驚いてるようだ。ものの数秒で敵船の真上に到着し、<紅蓮鳳凰>を解除して着地する。同時に、360°から一斉に自分に向けられる敵意の隠った視線。それを意に介さず煉は敵の情報を整理していた。全員が黒い半袖に赤いベストと長ズボンを着用している。顔には赤いバンダナを巻いて顔を隠していた。
「一応聞いとくが、てめえ等誰だ?」
「人に名前を聞くなら、自分から名乗れ」
「そいつぁ失礼。俺は赤堂……」
「黙れ」
煉が名前を言い終える前に、空賊の1人が大振りのナイフを喉に向けて突き出してきたが、
バシッ!!
予想してたように煉が指で挟んで受け止めた。
「…!?」
バンダナで顔を隠しているが、驚いた表情が目に見えて分かった。押しても引いてもナイフは微動だにせずにいた。そのまま手首をかるく捻ってナイフをへし折り、上段蹴りで蹴り飛ばした。
「名前がまだだったな。赤堂煉だ。名乗ったぜ?さ、てめえ等は誰だ?」
「いいだろう。我等は誇り高き空賊。“黒骸骨空賊団”だ」
「はいはい“黒骸骨空賊団”ね。」
内心で厨二くせーと思いながら名前を覚えた。
「んじゃ、早速だがぶっ飛ばさせてもらおうか」
「ほう、ただの餓鬼が随分嘗めた口を聞くな?」
「ただの餓鬼だと思わない方が身のためだが…」
煉はそこで言葉を切り、話していた1人に一瞬で近付いて鳩尾に強烈な蹴りを叩き込んだ。男は肺の空気を吐き出して後方に吹き飛ぶ。更に周りの男共を殴る蹴るで薙ぎ倒していった。
航板の上は阿鼻叫喚に包まれていた。
「何だよこいつ!!人間じゃねえゴフッ!?」
「れっきとした人間だよアホ」
無礼な男の顔面にストレートをお見舞いした。
「そろそろ終わらすか」
煉が動こうとした前に、生き残りが一斉に飛び掛かってきた。が、それは全て無駄に終わる。
「<爆炎衝波>(ばくえんしょうは)!!!」
煉の声と共に全身から炎の爆発が放たれ、飛び掛かってきた男共を残らず吹き飛ばした。更に船の装備と航板を焼き尽くした。<爆炎衝波>は<火爆掌>を全身から放射し全方位の対象を焼き尽くす技だ。実用性は高いが、消費が中々でかいのが難点だ。
「ふう、案外早く終わった……っ!?」
筋肉を伸ばしながら辺りを見回していると、どこからともなく放たれた鎖が煉の右手に絡み付いた。鎖の先には、下品な笑みを浮かべた男が下なめずりをしている。
「んの野郎……焼くぞこらぁっ!!」
煉が左手を男に向けて炎を放とうとした瞬間、違和感が生じた。
「エレメントが、使えない……!!」
そう。煉のエレメントが反応しないのだ。炎が放たれるはずの左手からは何も感じられない。原因はすぐに分かった。
「この鎖か……!」
「その通り。<属性封石>を加工して造り上げた<アンチエレメントシステム>を埋め込んだ鎖さ。あんたのエレメントは封じさせてもらったぜ」
「<アンチエレメントシステム>だと……【イグニス】限定の品か。たく、面倒くせえ」
「かなりの実力を持ってるみたいだが、エレメントを使えなければただの餓鬼。このままなぶり殺してやらぁ……」
「ふんっ!!」
バチンッ!!
説明を最後まで聞かず、煉は鎖を腕力だけで引きちぎった。
「え……?」
「エレメントが使えないなら、使わなきゃいいんだろ?だいたい、こんな細い鎖で俺を縛れると思ってんのかよ」
「そんな……ドラゴン5匹を縛れる強度がある鎖を……引きちぎった?」
「ドラゴンと比べるな。さて、せい!!」
煉は鎖を思いっきり引っ張り男を引き寄せた。その際に顔面を強か地面に打ち付けて奇声を上げていた。
「これ以上痛い目見たくないなら、大人しく投降するのをお進めするが?」
「ば、化け物……!!」
「失礼な野郎だな」
バキィッ!!
額に青筋を浮かべた煉が航板に拳を叩き付けて貫通させた。飛び散った木片が男の顔に当たる。
「で、投降するか?」
「あ、うぅ………」
弱く声を出しながら頭を下げていく。その際に、わずかに男の顔に笑みが浮かべられていた。それを見逃さず、煉はすぐに周囲の気配を探る。すると、敵船の周囲に無数の小型の船が飛び回っていた。
「かかったな、くくく」
「ちっ……!」
煉は男を放り投げて臨戦態勢を取る。数は、50機。
どう片付けるか思案していると、
「おーい煉~」
いつの間にか乗り移っていたリオ達がこっちに来ていた。
「ヤバそうだったから加勢に来たよん」
「ワイバーンよりかは楽そうでござるな」
「さて、どうしようか」
「一気に潰しますか?」
全員ヤル気満々だ。
「そうだなぁ。上の蝿共は俺が片付けるよ。お前らはこの船をぶっ壊せ。あと<アンチエレメントシステム>っつうエレメントを封じる厄介なやつがあるから気を付けろよ。以上」
「「「了解!!」」」
「よし。派手に暴れるぜ!!」




