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●処刑の準備●

「一体どういう事なんですか!!」


飛竜宮、総団長室の前にいたアレックスが、装飾が施された机に手を叩き付けて怒鳴りを上げた。その怒鳴られている本人、ガーラはまるで素知らぬ顔でアレックスに返答した。


「何度も言わせるな。ミアラ王女が我が国に潜んでいた密偵の手助けをした挙げ句、昨夜その密偵を逃がした。これだけしているのだから処刑されて当然だろう」


「煉さん達は昨日ワイバーナに来たばかりです。密偵なんてありえません!!」


「しかし、事実なのだから仕方無い。それとも、あいつ等が密偵でないと言う証拠でもあるかね?」


「それなら、煉さん達が密偵であると言う証拠もありません。それに、私はガーラ総団長を疑っていますが」


アレックスの言葉にガーラが眉をひそめる。


「何が言いたい?」


「あなたが今回の事件の首謀者と言いたいんです」


「証拠でもあるかね?」


「ありません。ですので、探します。そしてミアラ王女を助けます」


アレックスはそれだけ言って、総団長室を出ていった。取り残されたガーラは、顔をしかめた。


「いざとなれば、2人まとめて始末するか…」


ガーラの言葉は誰にも聞こえること無く虚空にとけていった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


時は少し遡る。

【ウィンブ村】。ワイバーナ帝国から最も近い村である。村人はわずか30人程度しかいない村であった。

その村の枯れ井戸から、煤だらけの煉達が這い上がって来た。


「げほっ!!なんつー煤だよ……」


身体中の煤を叩き落として井戸から体を出す。辺りに人の気配は感じられないので、しばらく休憩することにした。


「ミアラの奴……無事だといいが…」


枯れ井戸に寄り掛かり、空を見ながら小さく呟く。自分達を逃がしてくれたミアラの身が心配でしょうがないのだ。このままだと確実にミアラは汚名を着せられて処刑されてしまう。

処刑日は明後日。それまでに何とかしないと……


「さっさと、行かねえと……!」


「煉!あんたまだ全快してないじゃないの。このまま行ってもまたやられるわよ!?」


煉の行動を、リオが全力で否定した。煉はリオがそう言うと思っていた。それを踏まえて言ったのだ。


「んな事は百も承知だ。でも、行かなきゃミアラが殺される。それに、」


「それに……?」


「あの老いぼれ野郎にやられっぱなしは、性に合わねえ」


痛む体に鞭を打って煉は立ち上がる。ふらふらな足取りで、歩き出す。その煉を、十蔵が止める。


「煉殿、拙者も行くことは賛成でござる。しかし偽りとは言え、指名手配されてる身である拙者達がこのまま行けば、ミアラ殿に着く前に民衆を相手にせねばならぬでござる」


最もな意見だった。あの手配書がワイバーナ帝国にばらまかれている以上、下手に動けば騙されている民衆も相手にしなければならない。


「くっ……何かいい方法は無いもんかな」


「あるよ」


「「「はぁっ!?」」」


煉が頭を抱えて考えていると、ライズが唐突に爆弾発言をかましてくれた。

そして、右腕に取り付けられたコールブレスを自慢気に見せてニヒルに笑う。


「こいつを使えば一石二鳥どころか、一石で十鳥は取れるよ」


煉はライズの言葉を信じ、ミアラを救出する作戦を考え出した。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


地下牢獄。ミアラはここの一室に投獄されていた。

飛竜宮内の人間の半数がガーラに付いており、ミアラを信じる少数は同じく投獄されて、処刑を待っていた。


「皆、申し訳無い。私の甘さのせいで、貴方達まで巻き込んでしまって…」


「王女は悪くありません!!悪いのはガーラです」


「そうです。全てはガーラが……」


「人聞きが悪いな諸君」


その噂のガーラが階段を降りて現れた。顔には相変わらず不気味な笑みが張り付いている。


「ガーラ……ッ!!」


「これはこれは裏切り者のミアラ王女。ご機嫌はいかがですか?」


「吐き気がしますね。貴方の顔を見たら気分が害されます」


「これは手厳しい。ミアラ王女、処刑されるなら綺麗な顔でいた方がよろしいですよ?」


「貴様王女に!!」


「裏切り者は貴様だろう!!」


「蝿が口を開くな」


バキッ!! ドカッ!!


ガーラが槍を振るい、石突きで2人を殴り付けた。


「ガーラ!!貴方は………!!貴方はあぁぁ!!!」


「貴女も愚かだ。大人しくワイバーンを戦争に使えばいいものを。まあこれで、邪魔な人間が消える。これで私が、ワイバーナ帝国の王位に……!!」


「やはりそうでしたか」


ガーラがその言葉を口にした時、背後から新たな影が現れた。


「アレックス……!!何故ここに……!?」


「話は聞かせてもらいました。ガーラ総団長……いえ、ガーラ。王女に汚名を着せた貴方を、私は許しません!!」


アレックスは背中の槍を引き抜き、切っ先をガーラへと向ける。


「私を、裏切るか……ふん。若造が…」


ザシュ!!


「がっ……!?」


ガーラがそう言った瞬間、アレックスの両足が切り裂かれ、鮮血を舞わせた。

槍を取り落とし、地面に伏せる。ガーラの手にはいつの間にか、絶突竜槍が握られていた。


「お前を鍛えたのを誰だと思っている。私だろ?勝てるとでも思っているのか馬鹿が」


「あ……ぐぅ……!!」


「こいつも処刑する。今更増えたとこで変わらんだろう。明日が楽しみだ」


高笑いをしながら、ガーラは地下牢獄を後にした。

次回、どんでん返し?

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