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●VS飛竜騎士団総隊長●

vs飛竜騎士団総団長です。

黒ずくめからの情報を聞いた煉達は、ミアラを探すために飛竜宮内を駆け回っていた。あの話が本当ならば今頃ガーラがミアラに対して動きを見せているはずだ。手遅れの事態になる前にミアラに会わなければ。


「間に合ってくれ…!」


廊下を走りながら自分の願いを口に出す。やがて見えた豪華な造りの扉。隙間からは明かりが漏れているのを見ると誰かいるかもしれない。煉は躊躇せずに扉を乱暴に開いた。中にいたのは、ミアラ1人だけだ。


「煉さん……?皆様も、どうされたのですか?」


「ミアラ。ガーラから何か言われたか?」


「ガーラから…何かあったのですか?」


「間に合ったか……いいかミアラ、よく聞いてくれ。ガーラは俺等とお前を……」


「私がどうかしたかい?赤堂煉君」


ミアラに最後まで話そうとした瞬間に、まさにその男の声が耳に届く。声のした方を見ると、複数の鎧騎士を引き連れたガーラが立っていた。その顔には、嫌悪感を抱くほど醜悪笑みが浮かべられている。その瞬間、ライズは誰にも気付かれないようにコールブレスのスイッチを入れた。


「よう。よくも眠り薬入りの茶を飲ませてくれやがったなあ?危うくてめえの思惑通りになるとこだったよ」


「眠り薬入りのお茶?思惑?どういう事ですか?」


「ミアラ、こいつは俺等とあんたをスパイ仕立て上げて王位に着こうとしてたんだよ」


「…!!まさか……!」


ミアラ自身信じられないようだった。


「そうだろ。ガーラさんよお?あの黒ずくめから話は聞いたぜ。人質取るなんざ、あんたに騎士を名乗る資格はねえよ!!」


「……ふむ、知られたか。あの者共、よほど人質がどうでもいいらしいな。まああの者共の処分は後回しだな」



「ガーラ!!貴方、何故このような事をしたのです!!この方々は無関係のはずですよ!!」


ガーラの真意を知ったミアラは怒りを露にしてガーラを問い詰める。しかしガーラはミアラの怒りを鼻で笑って返した。


「ミアラ王女。貴方は帝国の主として甘すぎるのですよ」


「甘すぎる……?」


「知っての通り我等のワイバーナ帝国は、空中戦闘においては1番の実力を有しています。ワイバーンに跨がり空を駆ける騎士は最強なのですよ。しかし、貴方は戦争放棄だ争いは行わない等、帝国の主として相応しくない発言ばかり。自らの帝国の実力を扱いきれていない貴方が王女にいることは滑稽極まりないのですよ!!」


「ワイバーンと騎士は戦争の道具ではありません!!彼等は国を守るためにいてくれる者達です!!」


「それが甘いと言っているのです!!彼等は帝国の為に働いていればよい。例え死のうがまた新しい騎士を育成すればよいことだ!!」


「貴方と言う者は…………!!」


「これ以上の話しは不毛だな。おい」


ガーラは一方的に話を打ち切り、眠り薬入りのお茶を煉達に飲ませたメイドを側に呼んだ。もうメイド服では無く、黒ずくめと同じ格好をしていた。


「仕事は終わったか?」


「はい、問題ありません。帝国中に貼っておきました」


メイドは一枚の紙をガーラに手渡した。それを見たガーラは顔をまた歪めた。


「良いだろう。これで準備は整ったな」


「準備だと?」


煉は目を細めてガーラに質問を投げ掛ける。


「これを見ろ」


ガーラが見せた紙には、

『ワイバーナ帝国に侵入していた密偵6人を手助けしたミアラ王女。王女でありながら帝国を裏切った罪人を処刑する』と書かれていた。


「これは……!!」


「もう帝国中に貼られてある。これで終わりですな。ハハハハハ!!」


「こんな嘘っぱちの紙切れを信じる奴がいるのか不思議だな?」


「ん……?」


煉はガーラに一瞬で近付き紙を奪った。


「ご丁寧に顔写真までかよ。まあ、関係無いけどな!!」


ボオゥッ!!


煉が握り締めた紙は炎に包まれて灰へと変わった。手をかるく叩いて灰を落とし、ガーラに向き直った煉の瞳は怒りに染まっていた。真紅の瞳が部屋の明かりにより更に光を放っている。


「てめえの思惑通りになってたまるか。ここで叩き潰して民衆の前に晒し出してやるよ」


「たかが餓鬼が、よく吠えるな。まあいい。かかってこい」


「上等だ!!」


煉は床を蹴ってガーラに迫り、勢いを乗せたストレートを鎧の上から腹に撃ち込んだ。微かに鎧が軋み、ガーラが顔をしかめる。更に追撃として三段蹴りを高速で放った。足、腹、首に蹴りをくらいガーラは後ずさる。


「少しは出来るようだな、餓鬼」


「そいつぁどうも。まだまだ行くぞ?」


後ずさったガーラに再び迫り拳を放とうとしたが、拳はガーラが取り出した巨大な盾に阻まれた。鈍い金属音が部屋に反響する。


「っ……!硬え」


「この盾は<ドラグニウム鉱石>と呼ばれる鉱石を使った物だ。大砲を正面から受けてもヒビすら入らんわい」


盾に隠れたガーラが説明している。<ドラグニウム鉱石>という鉱石は初めて聞く。恐らく【イグニス界】にしか存在しない鉱石だろう。魔竜の頭を素手で砕く煉の拳を受け止めたなら尚更だ。


「そしてこれは同じく<ドラグニウム鉱石>を鍛え上げ造った槍、<絶突竜槍>。貫け!!」


ガーラは銀に輝く槍を煉向けて突き出す。近距離から繰り出された槍先が煉の首を貫こうと襲い掛かるが、咄嗟にバク転して突きをかわす。槍先が腹をかるく掠めるが直撃は回避すりことができた。


「ほう。中々のものだな?」


「あんたもな!!」


突き出された槍の横を殴って軌道をずらし、間合いを潰す。胸部に掌を押し当て炎の爆発を発生させた。


「<火爆掌>!!」


掌から放たれた大気を焦がす爆炎がガーラの全身を燃やし、後方へと吹き飛ばした。豪華な壁に体を強く激突させて力無く床に倒れ込む。


「ふぅ。リオ、そっちは終わったか?」


「うん。問題無いわよ」


「骨がないね~」


「手応え無しでござる」


「楽勝楽勝」


「物足りないですね」


どうやら片付けたようだ。煉はミアラの方を向いて口を開いた。


「ミアラ、こいつ等どうする?」


「……クーデターの現行犯として、牢獄へ幽閉します。煉さん、皆さん、ありがとうございました」


「いや、気にするなよ。別に大した事は…」



「なめるな……餓鬼共が………!!」


煉が話終える前に、ガーラが鬼の形相で立ち上がった。<火爆掌>をくらったにも関わらず、鎧は少し焦げただけでヒビすら入っていなかった。


「丈夫な鎧のおかげで命拾いしたか」


「この鎧も<ドラグニウム鉱石>だからなぁ。民衆の前で殺そうと思ったが、面倒だ。この場で殺してやる。グラン!!」


ガーラが大声で怒鳴ると、巨大なワイバーンが窓を突き破って現れた。赤みを帯びた漆黒の体を持つワイバーンは、かなりの威圧感を漂わせている。ガーラはグランに跨がり飛翔する。


「さあ来い!!最強の飛竜騎士が相手だ!!」


「上等だってんだよ。

<紅蓮鳳凰>!!!」


煉は炎に形を与え、その身に装備させる。三対六枚の炎翼と扇状の尾羽を装備した煉が空に舞い上がる。


「驚いたな、まさかここまで使えるとは」


「これで五分だ。行くぞこらあぁぁぁぁぁぁ!!」


翼を羽ばたかせて一気にガーラへと接近し、炎を纏わせた拳を振り抜く。しかしガーラはグランを巧みに操り、煉の拳を上昇して回避する。回避されたことにより一瞬の隙が出来た煉に向けて、ガーラが絶突竜槍で連続突きを放つ。煉は高速で繰り出される突きを何とか捌くが、完全には回避出来ず腕に複数の傷を負っていた。


「どうした?先ほどまでの勢いはどこに消えた?」


「うっせぇよ!!」


ガシッ!!


繰り出される突きを見極め、煉は槍を掴んで動きを封じた。そのまま体を独楽のように回転させガーラとグランを空中で振り回し、


「だらあっ!!」


ジャイアントスイングの要領で投げ飛ばした。投げ飛ばされたガーラはしばらくきりもみ状に落下していくが、体勢をすぐに立て直して再び安定した飛行に移った。


「ワイバーンごと私を投げ飛ばすとは、とんだ馬鹿力だな」


「誉めても何もださねぇよ!!」


炎の翼を羽ばたかせた煉はガーラの真上に移動し、両脚に形を与えた炎を装備させた。それはまるで猛禽類のような、鋭い鉤爪を備えた脚であった。ガーラに狙いを定め、自身の羽ばたきと、重力の力を合わせて、獲物を見つけた鳥のように高速で落下していく。


「<鳳炎裂爪>(ほうえんれっそう)!!!」


ガーラへ向けて、炎の爪が猛烈なスピードで襲い掛かる。掠りでもすれば、強固な鎧の上からでも、肉を焼き抉られるのは確実だ。

ガーラは背中の盾を構えて煉の攻撃と激突させた。


ドガァァァンッ!!


「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


「ぬあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


煉の炎の爪と、ガーラの白銀の盾が、激しい火花と衝撃を撒き散らして激突する。重力を利用している煉が僅かにガーラを押していた。徐々にグランも高度を下げていき、盾にも亀裂が入り始めた。行ける。そう思えたその時、


「グルァッ!!」


「なっ!?」


盾の後ろから顔を出したグランが口から業火を吐き出したのだ。直線上に放たれた炎の奔流を煉は反射的に避けるが、そのせいでバランスを崩してガーラから押し返された。更に、隙を付いたグランが歪な牙が並んだ顎を開き、煉の左腕に噛み付いた。


「ぐあぁぁっ!!」


鋭い牙が肉を食い破り骨まで達した。鮮血が溢れだしガーラとグランの顔を濡らす。


「なろ……!!なめんじゃねえよクソ蜥蜴がぁぁぁぁぁぁ!!」


痛みに耐え、右腕でグランの顔面を鷲掴みにして<火爆掌>を叩き込む。爆炎がグランの顔面を包み込み強制的に牙を外す。


「くっそ……!痛ぇ…!」


強制的に外したせいか、傷が広がり更には骨にもダメージが蓄積され、左腕が使えなくなった。しかも<紅蓮鳳凰>も、勢いが初めよりも落ちている。


「<紅蓮鳳凰>はただでさえエレメントの消費が激しい……持ってあと、3分辺りか……」


<紅蓮鳳凰>は通常よりも強力な力が得られるが、その分エレメントのコントロールが難しく、消費も激しいのだ。煉に残された時間は3分。<紅蓮鳳凰>が解かれれば、ワイバーンを使うガーラには勝てない。煉は、短期決戦に持ち込んだ。


「一気に決めさせてもらう!!」


火山の噴火の如き勢いで炎を強め、全身を包み込み、急上昇する。そして、一気にガーラ向けて急落下していく。その姿は、紅い流星。暗き空を紅く染め、ガーラへと肉迫した。


「<紅蓮鳳翼>!!!」


「ふん…グラン、あれをやるぞ」


「グル。グルァァァァァァァァァッ!!!」


ガーラは、煉へ向けて絶突竜槍を投擲。その槍向けて、グランが炎の奔流を纏わせた。炎纏った槍と、炎に包み込まれた煉が夜空でぶつかった。勝敗は、


「がっ……は!!」


煉が打ち負かされ、飛竜宮の壁に叩き付けられた。<紅蓮鳳凰>はすでに解け、煉を包む炎わ消え失せていた。


「<ドラグニウム鉱石>には熱を吸収する特性があってな、吸収した分だけ威力が上がるのだよ。お前は自分の炎をまともにくらったんだよ」


「ちっ……!」


「さて、とどめといこ……」


「<風魔刃>!!!」


「<爆雷丸>!!!」


「<激流槍>!!!」


「<氷閃牙>!!!」


「<土石拳>!!!」


ガーラがとどめを刺そうとした瞬間、ガーラに向けて5つのエレメントの猛攻が襲い掛かかった。盾を構えて全てを遮断するが、勢いは殺せず後退する。


「煉!!大丈夫?」


「リオ……問題無えよ」


「それでよく言えたね。強がりもいいとこだよ?」


「しかし、煉殿を追い込むとは、あやつ…」


「あの槍と盾が厄介だね……どうするかな…」


「今は、何とかあの人を倒さないと…」


「餓鬼共が……おい、出てこい!!」


ガーラが怒鳴ると、所々から翼の羽ばたきが聞こえてきた。その正体は、100は下らない飛竜騎士であった。


「もう寝返ってやがる騎士がここまで……!!」


「冗談でしょ…」


「ヤバイな…」


「ぬぅ…これは…」


「いわゆる…」


「完全包囲?」


100の飛竜騎士に完全に囲まれてしまった。


「今許しを乞うなら、処刑日まで殺さないでいてやろう」


「っ…!!ざっけんな!!やってもねえ事で処刑なんざされてたまる!!」


「しかし、死ぬには変わらんぞ?」


「くっ……!!何か手立ては無えのか……」


「煉さん、皆さん」


煉が歯軋りしてガーラを睨み付けていると、ミアラが静かに口を開いた。


「静かに聞いてください。この部屋の暖炉からは、近くの村の枯れ井戸まで続いています。それを使って逃げてください」


「何言ってんだ馬鹿!!んなこと出来るわけ…」


「お願いします。元を言えば、煉さん達を巻き込んでしまったのは、私達に原因があるんです。あなた方に何かあれば……私は」


「ミアラ……それでも」


「早く、行ってください!!」


煉の言葉を聞かず、ミアラは煉達を暖炉に押し込むと。暖炉の壁が開き、通路が続いていた。


「ミアラっ!!よせ!!」


「皆さん、どうかご無事で……ありがとう」


バタン!!


ミアラは壁を閉じ、ガーラに向き直る。


「分かりませんな。会って間もない人間に何故そこまで肩を入れれるのですか?」


「あの方々は、私を助けてくれました。それだけです」


「愚かな。まあいい。貴方は明後日、民衆の前で処刑されます。国を裏切った大罪人としてね」


「私は、最後まで諦めません」


月に照らされた部屋の中。ミアラとガーラはお互い引くこと無く睨み合っていた。

はい、中々の強敵。

次回、煉どうする

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