●暗躍する陰謀●
異世界に来たばかりの煉達に迫る陰謀とは
「ここがワイバーナ帝国の帝宮、飛竜宮です」
あれからアレックスの案内で歩くこと10分。煉達の目の前には巨大な城がたたずんでいた。とりあえずでかく、城の上には飛竜の石像が置かれている。
「どうぞ。中までご案内致します」
城門をくぐり、飛竜宮の中へと入っていく。内部は豪華な造りになっており、シンディの理事長室といい勝負だった。やがて一際豪華な扉が開かれ、中に通される。そこには先ほど別れたミアラと、立派な髭をたくわえた中年の男性が椅子に腰を掛けていた。
「やあやあ待っていたよ。私はワイバーナ帝国飛竜騎士団総隊長のガーラ・ボロスと言う。今回はありがとう」
「赤堂煉です。どうも」
手を差し出してきたので煉も手を出して握手する。
「君達がいなければ王女様は今頃サンドワームに食われていただろう。改めて礼を言うよ」
「いえ、気にしないでください」
「そう言ってもらえると助かるよ。お礼と言ってはなんだが、今夜はここに泊まっていくといい。よろしいですね、ミアラ王女」
「ええ、勿論です。アレックス、煉さん達をお部屋にご案内して差し上げて」
「わかりました」
煉達は再びアレックスの案内で飛竜宮内を歩いて部屋を目指していた。
「なあアレックスさん。聞いていいか?」
「何でしょうか?」
「ミアラ王女とガーラ総隊長は仲が悪いのか?」
「仲、ですか。まあそうですね。過去に色々とありましてミアラ王女はガーラ総隊長を何度も解任なさろうとしたのですが、その度に証拠不十分で今に至ります」
「ガーラ総隊長は何しでかしたんだ?」
「……他国に情報を売ろうとしたり、民から不正に資金を徴収したりだの、不確かですが」
アレックスは申し訳なさそうに苦笑する。どうやらアレックスも苦労しているようだ。
「着きましたよ。この部屋をお使いください」
アレックスが案内してくれた部屋は客人用の宿泊室だった。ベッドが丁度6つあり、しかも4つと2つに区切られている。まるで煉達があらかじめ来るのがわかっていたような光景に、煉は微かな疑念を抱いたが、
「前に俺達みたいな奴等がいたんじゃないの?」
と、ライズが言った言葉に皆納得していた。煉も少し警戒を解いてベッドに腰を下ろした。
「夕飯まで時間があるので、しばらく休んでいて下さい。御用があればいつでも呼んで頂いて構いませんので」
アレックスは一礼して部屋の扉を閉めた。すると入れ替わりで1人のメイドさんがティーポットを乗せた荷台を押して入ってきた。
「失礼致します。よければお茶をどうぞ」
メイドさんは慣れた手付きで6人分のお茶を入れて煉達に渡した。香りから察するにアールグレイだと煉は予想する。その際に、微妙に薬の匂いを感じた。
「ありがとうございます美しいお嬢さん。いかがでしょう?僕とこのままお茶でも?」
煉の警戒とは裏腹にウェドは速攻でメイドさんを口説いていたので拳骨で黙らせる。
「では、失礼します」
メイドさんは気にする様子も無くを出ていった。
「も~痛いじゃん煉」
「自業自得だ。速攻でメイドさんを口説くのが悪いに決まってるだろ」
「俺でももう少し遠慮するよ」
「ウェド殿には困ったものでござる」
「色欲魔」
「変態」
「皆酷くない!?」
「よーしウェドはほっといてお茶を飲むぞ」
ライズが華麗にスルーしてお茶を飲み始めた。残りも飲んでいく。すると、
「あれ………?何だ……急に眠気が…」
「ぬぅ……これは…」
「嵌められた…かな…」
「眠い……」
「眠り薬……ですね…」
「…………」
煉達はそのまま深い眠りについた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「小僧共は眠ったか?」
「はい。眠り薬入りのお茶を飲ませました。しばらくは起きません」
「よし。例のアレを部屋に置いておけ。ついでに小僧共の処理もしておけ」
「御意に」
先ほどのメイドは闇に溶けるように消え、部屋に残った飛竜騎士団総隊長のガーラ・ボロスが醜悪な笑みを浮かべていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
煉達が眠っている宿泊室の前で、黒ずくめの5人が待機していた。それぞれの手には鈍く光るナイフが握られている。ドアノブに手を掛けてゆっくりと扉を開き、中へと侵入した。煉達が眠っているのを確認して、静かに忍び寄る。ナイフを高くかかげ、煉の首に突き立てようと振り下ろす。
が、ナイフは突き刺さらず、眠っているはずの煉の指に挟まれて動きを止めていた。
「なっ……!?」
「おはよーございまーすっと」
ドゴッ!!
黒ずくめが怯んだ隙に煉の拳が顔面を殴り飛ばす。鈍い衝突音と共に黒ずくめは宙を舞って絨毯の敷き詰められた床に落下した。
他の黒ずくめは煉に対してナイフを向けて構えを取る。そんな黒ずくめを無視して煉は全身の骨を鳴らしながら立ち上がった。
「残念だったな。あいにく眠り薬入りってのは匂いからわかってたよ。こいつ等は飲んでたけど、俺は飲んじゃいねえよ」
「くっ……!!殺るぞ!!」
黒ずくめは正方形型に煉を囲んだ。
「ふう。まあ聞いとくわ。何の目的で俺等を狙った?俺等はここに来たのは初めてなんだが?」
「答える義理はない!!」
黒ずくめの1人が鋭く叫ぶと同時に、全員が一斉に煉へと襲い掛かった。正面、背後、左右から振るわれるナイフ。煉はまず正面の黒ずくめを蹴り飛ばし、腰の回転を乗せた回し蹴りで左右から来てい2人のた黒ずくめの首を正確にとらえた。背後からのは振り向きざまに振るった裏拳で顎を撃ち抜き黙らせる。まだ動けた正面の黒ずくめが再び突進してきたが、顔面を鷲掴みにして絨毯の敷き詰められた床に叩き付けた。
その際に床が碎けその音でリオ達が目を覚ました。
「う……ん?」
「ようリオ。起きたか」
「煉?……あれ、あたし達確か…」
「眠り薬入りのお茶を飲まされたんだよ。こいつ等のお仲間に」
「眠り薬入りの……だから眠くなったんだ」
「ああ。それより皆を早く起こしてくれ。厄介事の予感だ」
リオは煉の指示に従いライズ達を起こしていく。あまりに起きないのでビンタをくらわせたのは内緒だ。
「じゃあ、早速聞かせてもらおうか。何の目的で俺等を狙った?」
全身を芋虫のようにロープでぐるぐる巻きにされた黒ずくめ×4人に対して煉は鋭い視線を向けて質問した。
「さっきも言っただろう。答える義理はない」
「…あっそ。わかったよ。じゃあ質問から、拷問に変えよう。ライズ」
「はいよ~」
煉の恐ろしい発言でライズが呼ばれた。ライズは黒ずくめの1人の頭を左右からしっかりと押さえつけている。
「何をするつもりだ!?」
「言っただろ。拷問だよ。拷問」
「なっ……!?」
「言いたくなったらすぐ言えよ。痛いから。んじゃ、ライズよろしく」
「OK。じゃあ、100ボルトからいきまーす」
そう言うと、ライズの手から電気が発生して黒ずくめに感電した。
「あばばばばばばばばばばばばばばばばっ!!!」
3秒して電気を止める。
「はい。吐く気になったか?」
「だ、黙……れ…」
「ライズ、電圧アップ」
「アイアイサー。300ボルトいっちゃいまーす」
「あががががががががががががががががががががががががががががっ!!!!!」
3秒後にまた止める。何やら煙を上げていた。
「ほれ、吐く気になったか?」
「い、言わな……」
「ライズ、電圧マックスでよろしく」
「言います言います!!だから勘弁して下さい!!」
折れたようだ。泣きながら体をうねらせている。
「で、俺等を狙った理由は?」
「ここ最近、ワイバーナ帝国にスパイが潜り込んでるって話は聞いてるだろ」
「ああ」
「実はあれは嘘なんだよ。スパイなんかいなくて、全部あいつが王位に着くためのでっち上げなんだ」
「あいつって誰だ?」
「………飛竜騎士団総隊長のガーラ・ボロスだ。あいつは王位に着くためにあんた等とミアラ王女を殺そうとしてる」
「!んだと……?そんな方法であいつが王位に着けるわけ無いだろ」
「いや、着けるんだよ。筋書きとしては、砂漠で襲われてるミアラ王女をあんた等はスパイ目的で助ける。それから帝国に来て、あんた等をこの部屋で殺してスパイの書類を部屋にばらまく。そしてガーラがミアラ王女がスパイを連れ込んだとホラを吹けば、後はわかるだろ?ガーラはああ見えて民衆の信頼は厚いんだ。あいつはそうやって王位に着こうとしてる」
黒ずくめはベラベラと情報を喋ってくれた。
「何でお前はそんなにベラベラと喋った?普通ならもう少し喋らないと思うが?」
「……俺達は、あいつに人質を取られてるんだ。友人、恋人、子供をな。俺達が裏切った時の保険だ」
「だったら尚更…」
「ああ。でも、あいつに従うのはやっぱり嫌だ。王女にも、恋人にも顔向け出来なくなるからな…」
煉は黙って話を聞くことしか出来ないでいた。
「今ならまだ間に合う。王女の所へ行ってこの事を伝えてくれ。ガーラはもう動き始めてるんだ」
「わかった。皆、行くぞ!!」
煉達はミアラの元へと走り出した。
次回、VS飛竜騎士団




