●迷い込んだ異世界!?●
異世界修学旅行終了。
そして新たな舞台は…
異世界修学旅行最終日。煉達は、エレメント学園があるアスタニア界へ帰るために次元空港へと来ていた。何だかんだで長くハプニングのあった修学旅行も今日で終わり。そう思うと中々淋しいものである。
「あ~あ。もっと長くいたかったな~」
ライズは愚痴りながら沖縄の海を愛しげに見ていた。リオ達も同様らしく、沖縄の景色を見つめていた。
「おいおい。一生来れないわけじゃ無えんだから。また来ればいいだろ?」
大量の沖縄土産を軽々担ぎなから煉がリオ達に促した。
「ほら、そろそろ時間だから、乗り込み口に行こうぜ」
「う~………また戻って来るぜ沖縄ぁぁぁっ!!」
「止めろアホ!!」
ゴンッ!!
泣きながら大声で帰還宣言するライズに煉の拳骨がクリティカルに決まる。大人しくなったライズの襟元を掴んでずるずる引きずっていった。
やがて到着した乗り込み口にあったのは、巨大な飛行船であった。戦艦に翼が生えたようなフォルム。
エレメント学園が所持している、<次元移動用戦艦オベリスク>である。搭乗員数は500を越えている。
階段を登りオベリスクの扉の前に立つ煉達。
「さよなら、沖縄」
そう言って扉を開いた。すると、沖縄の暑さを感じさせない最新鋭の冷房の風が………当たらない。と、言うより、
「ここ………どこだ?」
扉を開けたらオベリスクの内部ではなく、見慣れない自然生い茂る光景が広がっていた。オベリスクは中に自然があるとかでは無い。完全に別世界になっているのだ。煉を含め、6人はしばし沈黙した後、
「「「何だこれえぇぇぇぇぇぇっ!!!!?」」」
寸分狂わぬタイミングで絶叫した。これが、煉達の異世界珍道中の始まりであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「まず状況を整理するぞ。いいか?」
あの後、全員パニクって会話もままならない状態であったが、数分した後にやっと落ち着いたようなので煉が仕切りながら状況を整理することにした。
「ここは、地球界では無さそうだな……アスタニア界か?」
「わかんない。もし仮にアスタニア界なら、コールブレスが使えると思うよ」
煉の考えにライズが意見をして、コールブレスを起動する。しかし、
「あれ……?通じない………」
コールブレスの画面には赤いエラーの文字が点滅していた。コールブレスは地球界からアスタニア界まで会話可能の通信機器である。それが使えない。と、言うことは、
「地球界でもアスタニア界でも無い、3つ目の異世界ってことかな」
今まで誰も見つけられなかった、新たな世界であることを肯定していた。
「それってかなり凄いわよね!?人類初、3つ目の異世界を見つけたってことよね!?」
「めでたいでござる!!」
「これでまた有名になって可愛い女子達に……」
「私達、歴史に残りますね!!」
冷静に状況把握している煉とライズとは対照に、リオ達は浮かれながらは騒いでいた。
「お前等なぁ……見つけたは良いが、帰れなきゃ意味無いぞ?」
煉の一言でお祭り騒ぎの4人は一気に沈黙する。
「とりあえず人を探そう。こんだけ自然があんなら、人がいてもおかしくないだろうし」
「あー、それなんだけど煉」
ライズが遠慮がちに手を上げた。
「さっきちょっとだけ辺りを探索したんだけど、ここ……砂漠のど真ん中にあるオアシスみたいだよ」
「………え?」
「ほら、あそこから見えるよ」
ライズが指差す方向には、煌々と輝く太陽が草木1つ無い砂の大地を焼いている光景が見えた。
「どうしよっか?」
「ん~~~………あ!」
しばらく思案した後、煉は手をポンと叩く。
「良い方法がある」
「マジで!?」
「ああ。その代わり、お前等にはたっぷり働いてもらう」
不適な笑みを浮かべた煉は、美紀を呼んだ。
「お前のエレメントで船を造ってくれ」
「船ですか?」
「ああ。ボブスレーに使うようなあれを6人乗り用にしてくれ」
「わかりました」
「うーし。お前等、砂漠脱出作戦、決行だ!!」
「わかったわ」
「了解」
「お任せあれ」
「よっしゃ」
それから約5分後、美紀のランドエレメントで造られた船が完成した。形状は大きめのカヌーの船底にスキー板が装着されている感じだ。真ん中には人1人乗れる高台が立てられており、船尾には後ろ向きに備えられた椅子が2つある。
「うん。良い出来だな」
「どうもです」
煉は満足気に頷いて、リオ達に役割を与えた。
「十蔵、ウェド。お前等は道作りを頼む」
「「道作り?」」
「十蔵が水を発射して、ウェドはそれを凍らせて道を作る。以上だ。ライズは高台に乗って周囲の警戒を頼む。人がいるかもしれねえし。厄介な化物もいるかもしれないしな」
「了解しました」
「美紀は………特に無し。船造りごくろうさん」
「は、はい…」
「んで、俺とリオがエンジン係だ」
「エンジン係?」
「すぐにわかる。皆、船に乗ってくれ。出発するぞー」
頭に?を浮かべるリオとライズ達を促して船に乗せた。十蔵とウェドが船頭に。美紀は真ん中。ライズは高台の上。煉とリオは船尾に座っている。
「よし。十蔵、ウェド。頼むぞ」
「承知」
「オーケイ」
煉の指示で十蔵が水を発射してウェドがそれを凍らせて、ジャンプ台を造り上げた。角度は約45°。
「うっし。皆、しっかり掴まってろよ」
煉は炎を纏わせた両手の掌をまっすぐ突き出し、
「<双蓮火爆掌>!!」
両手の掌から2つの爆炎を放射した。爆発の推進力で船は氷の道を高速で滑走し、ジャンプ台から大ジャンプをかました。
「十蔵、ウェド!!引き続き道を造れ!!リオ。風を起こして船を押せ!!」
着地点に再び氷の道を造り、リオが風を起こして船を押して進ませる。
「ライズ。何か見えるか?」
「何も無いねぇ………辺りは砂だらけ」
どうやらまだ何も無いようだ。
「とりあえず進むぞ。そのうち人には会えるだ………」
「前方に何か発見!!」
案外すぐに見つかった。
「言ってるそばからかよ!?まあいいや。それで、何がいるんだ?」
「でっかい……ミミズ……?に人が襲われてる!!」
「でっかいミミズ………サンドワームか」
煉の予想は当たっていた。砂漠地帯に生息する魔獣の一種、サンドワーム。
巨大な口と体を持つ肉食性のミミズだ。視力が退化している代わりに聴覚が異様に発達している。普段は地中に潜んでいるが地上に獲物を感知した場合に奇襲をしかけて補食する。しかも異様にタフなため倒すのが面倒くさいのだ。
「煉どうする?」
「決まってるだろ、助ける。十蔵、ウェド。ジャンプ台造ってくれ」
2人は煉の指示で再びジャンプ台を形成する。
「リオ、俺と合わせて風を起こすぞ。いいな」
「わかったわよ」
煉は右手を、リオは左手をまっすぐ突き出した。
「<火爆掌>!!」
「<風魔掌>!!」
炎と風が混ざり合い、膨大な加速と共にジャンプ台から飛び出した。しばし空を飛んだ船は、サンドワームの背中に直撃する。
「ギュオオオオ!?」
突然の攻撃を受けたサンドワームは、口から汚い液を漏らしながら悲鳴を上げた。しかしそれだけで終わらず、船よりも高い所へ、右腕を炎と化した煉が跳躍していた。
「新技の実験台になってもらうぜ、デカミミズ」
煉の拳の先端が、十字架のように変化した。右腕を振りかぶり、サンドワームの頭に叩き付ける。
「<十字火紅鎚>(じゅうじかぐつち)!!!」
鋭い爆発音と共にサンドワームの頭が粉砕される。しばらく体をうねらせ、糸が切れたように砂漠に倒れ込んだ。その頭は、十字架状に陥没していた。ぷすぷすと煙を上げるサンドワームの横に着地した煉は、襲われていた人達に駆け寄った。
「大丈夫ですか?怪我はありませんか?」
「え……あっ!はい!!ありがとうございます!!危ないところを助けて頂いて」
襲われていた3人の内の1人が頭を下げた。艶のある長い黒髪に少し赤みのかかった瞳。顔立ちから歳は20あたりだ。首から下をローブで覆っているのは恐らく砂漠の日射し対策だろう。
「いえ。自分達も人を探していたので」
「そうなのですか。あ、申し遅れました。私は、ワイバーナ帝国第七代目王女のミアラ・ワイバーナと申します」
「ワイバーナ帝国七代目王女……ワイバーナ帝国……?誰かわかるか?」
聞いたことの無い国の名前をリオ達にも聞いてみるが、全員首を横に振っているのを見ると、知らないようだ。
「あの、ー聞きたいんですけど、この世界の名前って何ですか?」
「あら?ご存知無いのですか。この世界は【イグニス】と言いますよ」
【イグニス】。やはり聞いたことが無い。
「そうですか。ありがとうございます。それとよろしければ、ワイバーナ帝国までの道を教えて頂けますか?」
「構いませんわ。私達も国に帰る途中でしたから。それに助けて頂いたお礼もありますし、是非ご案内させて下さい」
優しい笑顔でそうミアラが言ってくれた。ライズと十蔵とウェドの顔が赤くなっているのは日射しのせいでは無いのはハッキリわかった。
「じゃあお願いします。美紀、もっかい船をた…」
美紀を呼んで船を造ってもらおうと思った時、煉は自分の上を通過する影に視線を奪われた。蜥蜴の体から生えた蝙蝠の翼を持つ、5メートルほどのワイバーンがそこにいたのだ。数は3匹。全てのワイバーンに馬具のような物が装着されている。
「ワイバーン……だと」
「はい。私達の国は、飛竜騎士団と呼ばれる騎士達がいるんです。この子達はまだ子どもですが、飛行力は中々ですよ」
「グルァ」
ミアラに誉められたのが嬉しいのか、ワイバーナの1匹が声を出す。
「さあ乗って下さい。すぐに着きますから」
ミアラの声に従いワイバーナに乗ろうとした煉は、不意に疑問に思ったことを口に出した。
「なあミアラさん。何でこんなに早くワイバーンが呼べるのにサンドワームに襲われてたんだ?」
「ミアラでいいですよ。ワイバーンを呼ぶには、この指輪がいるんです」
確かにミアラの中指に、ダイヤのような輝きを放つ指輪が光っていた。
「ただ国に帰る途中に指輪を落としてしまって……それを探していたらサンドワームに…」
「あ~……なるほど」
通りで残り2人が異常にばててるわけだ。
「そ、それはおいといて!!さあ、行きましょう」
1匹に煉とミアラと美紀が。残りにライズとリオと部下A。最後に十蔵とウェドと部下Bだ。全員乗るとワイバーンは翼を羽ばたかせて空へと舞い上がった。
はい。始まりました、新章のイグニス界編。次回は、ワイバーナ帝国にて騎士と煉達が…




