●VS海の幸●
巨大な海の幸との闘いとなっています
「「「お嫁さんっ!!?」」」
美月の放った爆弾発言に、リオ達は美月の言った爆弾発言を復唱した。
「煉……いつの間に結婚してたの?」
ライズが定まらない視点で煉に問い掛ける。
「アホ。冷静に考えろ。だいたい俺はまだ17だぞ?結婚出来る歳では無い」
「じゃあもし歳が足りてたら……」
「それも無い。結婚するわけねえだろ」
「煉ちゃんヒドイよ~。昔約束したのに…」
美月が指先をいじりながら煉に詰め寄る。
「あんな昔の話をまだ出すかお前は…」
「昔の話って?」
リオが首を傾げて美月にたずねる。
「え~と……あたし達が5歳くらいの時に…」
ここから美月の話が始まった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
『ねえ煉ちゃん』
『何?美月ちゃん』
『煉ちゃん、あたしのこと好き?』
『うん。大好きだよ』
『本当!?』
『うん。本当だよ』
『じゃああたし、煉ちゃんのお嫁さんになる!!』
『じゃあ僕、美月ちゃんをお嫁さんにするよ』
『約束よ?』
『うん約束』
結びあった小指が小さく揺れた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「てな感じで」
「お前恥ずかしいからいい加減その話忘れろよ…」
美月の話を聞き終えて煉は恥ずかしさに悶絶していた。しかしリオ達の反応は、予想外のものだった。
「ねえ煉。その頃の写真はある?あったらちょうだい。いやマジで」
「煉の幼少期の写真……一部の熱狂的ファンには高く売れるな…」
「煉殿に、そんなピュアな頃があったとは…」
「想像したら……やばい顔が熱い……!」
「だ、誰かティッシュを……鼻血が…」
リオはマジな表情で写真を要求し、ライズは人の写真で儲けようとしてるし、十蔵とウェドは赤面しており、美紀に至っては鼻血を出す始末である。
「お前等なあ……写真は残ってねえよ。それにあったとしてもだな…」
「ここにあるわよ」
煉が話終える前に、そんな声が聞こえた。振り返ると、艶やかな金髪を靡かせている漆黒のビキニを着用したシンディがいたではないか。
「何でいんだよ。つーか写真があるって……?」
「ほらこれでしょ?」
シンディが取り出した写真には、あどけない表情を残す赤髪の子供が写されていた。
「何で持ってんだよ!?」
「うふふ、内緒」
煉は過去の写真を奪おうと百裂拳並のスピードで手を突き出すがシンディはものともせずに捌ききる。
「理事長!!是非私に下さい!!」
「いや俺に!!」
「拙者に!!」
「僕に!!」
「私に!!」
リオ達も写真を奪おうとシンディに飛び掛かろうとした瞬間、
「キャアアアアアッ!!」
砂浜に悲鳴が轟いた。女性のような悲鳴が、野太い男声で。悲鳴の方を見ると、吸盤を生やした10本の真っ白な触手が、変態マッチョ軍団を絡め取っていた。
更に鋭い刺が生えた2本のハサミにも捕らえられている。その近くに赤い甲殻を携えたモノもいた。
「何だよあのサイズ…」
煉は突如現れた3体の生物を見て呟いた。
「イカに、カニに、エビだよな」
『キシャアアアアア!!』
規格外の巨体の海の幸が、海を震わせるほど咆哮した。それを口火に砂浜にいた人々を蜂の巣をつついたようなパニックとなった。我先にと海から猛烈な勢いで離れていってる。しかしそれと対照に、煉は動かず、獲物を見つけたような獰猛な笑みを浮かべていた。
「随分旨そうだなぁ、あいつ等。サイズもあるし、生きも良い。イカは刺身と唐揚げと天婦羅にして、カニは刺身とフライと鍋だな。エビは……エビフライにするか」
どうやらあの化け物を食う気満々らしい。そんな事を思案していると、後ろから声を掛けられので振り返ると、ダイビングスーツに身を包んだ女性が数人立っていた。
「なあ、あんた」
「ん、どちら様です?」
「あたしゃ達は此処等の海女さ。それよりあんた、あいつ等を食う気かい?」
「ええ。そのつもりですよ」
「止めといた方がええよ。あいつ等は化け物だからねぇ。あいつ等のせいで魚がまったく取れなくなってなぁ、挑んだ漁師もことごとくやられていったよ。勝ち目はないさ」
どうやらあいつ等は此処等の水揚げ量の邪魔をしているらしい。新鮮な海の幸の敵とは、許しがたい。
と、言うのが煉の考えだ。煉は海女さんに、優しく答えた。
「大丈夫ですよ。それに今の話を聞いたなら尚更引けません。あいつ等を狩れば、食える上に水揚げ量も元通り。良いことづくめですよ」
「あんた等、本当に出来るのかい?」
「勿論、嘘は言いません。な、ライズ、十蔵、ウェド?」
煉はすでにスタンバイしているライズ達に声を掛けた。
「お刺身何人分かな~あのイカ」
「あやつはカニ味噌が豊富にありそうでござる」
「でっかいエビフライにしてやるか」
ヤル気は十分のようだ。
「うし、行くか……と言いたいとこだが…」
煉は言葉を切り、依然イカの触手に捕らえられている変態マッチョ軍団に声を上げた。
「お前等ぁ、助けてほしいか?」
「「「助けて下さい!!」」」
「いいが、条件がある」
「「「条件?」」」
「今後、嫌がる男を追っかけ回すのを止める。これが条件だ」
「「「ええええええええええっっ!?」」
「嫌ならしょうがないな。そのままイカにでも食われとけ」
煉は話を打ち切って踵を返して帰ろうとする。が、どうやら命が大事らしく変態マッチョ軍団は渋々条件を受け入れた。交渉成立。煉は全身の筋肉を伸ばし、骨を鳴らす。
「俺がイカをやる。ライズはカニ、ウェドはエビを頼む。十蔵は変態マッチョ共を海岸まで運んでくれ。リオ、美紀。2人は運ばれた変態マッチョ共を介抱してやってくれ」
「変態マッチョの介抱なんて、気乗りしないけど」
「カニが相手か。新技試そうかな」
「煉殿の指示とあらば」
「美味しく冷凍させるかな、あのエビ」
「皆、頑張ってね」
役目は決まった。煉、ライズ、ウェドは化け物サイズの海の幸へと向かう。距離は約50メートル。泳ぐと思いきや、
「どおらぁぁぁぁっ!!」
煉は海面を普通に走って海の幸へと接近していた。
「いや何で走れるの!?」
リオは目を見開いて煉にツッコミを入れる。
「片足が沈む前にもう片方の足で海面を蹴ってるからだよ。簡単だぞ」
「あんたの基準は明らかにおかしいわよ!!」
そうこう言っている内に煉はイカのすぐ側まで来ていた。イカも気付いたようで触手を振り上げ威嚇するが、煉には意味を成さない。怯まず、右の拳を、
ドゴッ!!
頭のど真ん中に叩き込んだ。拳圧と衝撃が頭を貫通し、イカはもの言わず海面にプカリと浮かんだ。その際に触手に捕らえられていた変態マッチョ軍団の拘束が解けたところを、十蔵のエレメントで海岸まで押し戻した。
「ライズ殿!そちらの2人も頼むでござる」
「任せんしゃい!!」
ライズは爆発的脚力で海面を蹴り、カニの真上まで跳躍する。そこから体を縦回転させ、
「<縦転落雷脚>(らくらいきゃく)!!!」
その勢いを乗せた踵落としをカニの甲羅に叩き込んだ。甲羅は見事に陥没し、カニは泡を吹いて絶命。ハサミに挟んでいた2人を離した。すかさず十蔵がエレメントで海岸まで押し戻した。
これで全員解放した。
残りはエビだけ。ウェドは足下の海面だけ氷結させてその上に立っていた。
「新鮮な内に凍らせますか…」
ウェドはエビの甲殻に右の掌底を打ち付ける。
「<冷凍掌打>(れいとうしょうだ)」
するとエビは、一瞬で冷凍された。それを海岸まで造った氷のスロープで運搬する。こうして地元の水揚げ量の邪魔をしている巨大な海の幸は、たった3人の少年に討伐された。
砂浜に並べられて、改めてそのサイズに驚く。
イカは触手を合わせれば30メートルはあるし、カニは巨大重機を凌駕するサイズ。エビは電車3両分はあった。いつの間にかギャラリーも集まり、その中には海女さんの姿もあった。
「まさか、本当に倒しちまうなんて……あんた等、何者だい?」
「ただの、学生ですよ」
煉は笑ってそう答えた。
「まあそんな事は置いといて、こいつ等をさっさと食いましょうよ。こんだけのサイズなら砂浜にいる全員で食っても余りますよ」
「…そうだねえ。うっし、皆!!海女を片っ端から呼びな。今日は祭りだよ!」
「「「了解!」」」
「さて、あんたには礼を言うよ。ありがとね。飯が出来るまで、少し待っててくんな」
「いやいや。料理まで手伝いますよ。腕に自信はあるんで」
「そうかい。お、海女が来たみたいだね。協力して調理してくんな」
海女さんはそう言って去っていく。調理班には煉、ライズ、十蔵&海女さん総計30名。総指揮は煉が取ることになった。
「まずイカは俺が下拵えしますから、海女さん方はそれを刺身と唐揚げと天婦羅にお願いします。カニはライズ、お前が足全部切って海女さん方に渡してくれ。刺身とフライと鍋にするから。十蔵、お前はエビを頼む。頭と甲羅を剥いで油にぶちこんでエビフライにする」
「オーケー」
「承ったでござる」
「よし、かかれ!」
煉の合図で一斉に調理が始められた。まずイカの足を切り離すため、煉が<バースト>を解放して焔真を顕現する。切れ味は抜群なため簡単に切れるが、<バースト>で調理する人間は始めてであろう。一通り足を切り離した後は臓物を引きずり出して中を洗浄した。これで下拵えは完了だ。
それを確認した煉は美紀を呼んだ。
「美紀、お前のエレメントで造ってもらいたい物があんだけど」
「はい。大丈夫ですよ」
「まず巨大なBBQコンロと網を造ってくれ。それと鍋釜と底の厚いフライパンを2つ。頼めるか?」
「問題ありません。すぐ造りますよ」
美紀はそう言うとすぐに作業に入った。ライズが担当しているカニの調理だが、ライズも煉同様に<バースト>を解放して顕現した雷吼で足をぶった切っていた。8本全て切り離し、本体と足4本を鍋に。残りのハサミ2本をフライに。足2本を刺身にする。十蔵も、<バースト>を解放して顕現した海絶の槍先をエビの甲殻の隙間に入れて丁寧に甲殻を剥がしていた。一通り剥がした後に頭を切り離して準備完了だ。
「煉くーん。注文の品が出来たよー」
「サンキュー美紀。BBQコンロと底の厚いフライパンをイカに持ってきてくれ。鍋釜とフライパンはカニとエビんとこに頼む」
「わかりました。よろしくね<土傀儡・阿吽>(つちくぐつ・あうん)」
美紀は砂浜から造り出した2体の鬼型の傀儡で調理器具を運搬した。
「よーし。んじゃま、点火といきますか」
煉はBBQコンロと鍋釜とフライパンの底に炎を出現させた。
「十蔵、鍋釜ん中に水を入れてくれ。その後すぐにカニ投入しろ」
「了解でござる」
「ライズ、フライパンにはもう油を入れてるからイカの天婦羅とカニフライとエビフライを海女さんと協力して担当しろ」
「あいよー」
「リオ、お前は調理し終わったイカ共をカットして食いやすいようにしろ」
「わかったわ」
「ウェドはそこらに氷柱を造って場を涼めてくれ。暇があればかき氷だ。美紀はウェドの手伝いを頼んだぞ」
「任せてよ」
「うん」
「よし。火も良い具合だな」
煉はBBQコンロの火加減を確認して、イカの頭を持ち上げ網の上に乗っけた。
すると香ばしい匂いが辺りに充満する。白い表面に網の焼き目が良い具合についていた。十蔵もカニを投入したらしく、出汁の香りがこちらまで届いている。ライズが担当している天婦羅とカニフライとエビフライは、油の跳ねる音が響いており、鼻孔をくすぐる匂いが充満していた。近くでは海女さん方とリオが刺身を造ったり調理し終わった食材をカットしている。
ウェドは臨時かき氷屋を経営して中々儲けているようだ。美紀もその手伝いを完璧にこなしている。
「おっしゃ出来たぞ!」
煉は焼き終わったイカを再び持ち上げ、今度は空に放り投げた。同時に煉自身も跳躍し、空で焔真を顕現する。それを振るい、イカを一瞬で綺麗にカットした。尚重力に従い落下するイカは、下にスタンバっていた海女さん方が残さずキャッチしたので問題無しだ。
「皆ぁ!!宴といこうぜえぇぇぇっ!!」
「「「イエーーーイ!!!」」」
豪華な海の幸が並ぶ砂浜で、煉達は地元の人々と楽しく飲み明かした。
次回、いよいよ帰還………出来ず!?異世界修学旅行編は今回で修了




