●十蔵VSバイト●
「各々、始めているでござるな。拙者等も、そろそろ始めようでござる」
「…………」
「…?何とか言ったらどうでござる」
「…………」
十蔵の問い掛けにまったく反応を示さないバイト。笠の上からでは表情が読めない為、寝ていると勘違いをしてしまう。
「寝てるでござるか?」
「……起きている」
「…!!」
ガキィッ!!
十蔵が確認しようと接近すると、突然バイトが動き、鋭い手刀を叩き込もうとする。しかし、咄嗟に反応した十蔵がそれを防ぐ。
「……惜しいな」
「不意討ちとは、随分な手口でござるな?」
「防がれるとは思っていなかった。少しできるな」
「貴様のような外道に誉められても嬉しくないでござる」
「ふん…」
バイトは手刀を下げ、十蔵から距離を取り、両手に黒い流水を纏わせる。何とも体に悪そうな色だ。
「墨汁……?」
十蔵の反応は恐らく自然だろう。
「言っていろ」
バイトは両手の流水を高圧水流の刃に変化させ、十蔵目掛けて振り抜いた。
右手の刃が左から、左手の刃が右から。ハサミのように迫る高圧水流の刃。くらえば簡単に切断されるであろうそれを、十蔵は素手で受け止めた。
「何……?」
「甘いでござる。こんなもので、拙者を斬れるわけがない」
よく見れば、十蔵は素手では無かった。両手の表面を水でコーティングして、薄い鎧のようにして防いでいたのだ。
「<激流の籠手>(げきりゅうのこて)。貴様の刃は通らん。そして、」
十蔵はバイトの刃を握り潰し、一気に接近。<激流の籠手>を発動したまま、鳩尾に拳を叩き込んだ。
「<激流拳衝>(げきりゅうけんしょう)!」
巨大な水圧が拳となってバイトの体を飲み込む。
「グオオオオオッ!?」
耐えきれず吹き飛ばされ、海の中へと叩き込まれた。派手に水飛沫を上げ、水の中へ沈んでいく。
「ウオオオオ!!」
だが、あっさりと水面から顔を出す。衣服はボロボロになっているが、何故か笠だけは無事であった。
どういう原理だ。
「ふむ。中々丈夫だな」
「ぐぅ……殺してやる」
バイトは漆黒の水を集め始め、1匹の海蛇を作り出した。
「喰らえ!!」
巨大な顎を開き、歪な牙で十蔵に食らい付こうとする海蛇。十蔵はまったく怯まず、バイト同様に海蛇を作り出し、ぶつける。
結果は、十蔵の海蛇が圧倒的勝利を納めた。
理由は簡単。サイズの差である。バイトが作り出した海蛇は3メートルほどだが、十蔵が作り出した海蛇は10メートルはあるサイズだったのだ。圧倒的蹂躙を繰り広げ、バイトの海蛇は水飛沫となって砕け散る。
「さあ、シヴァについて吐いてもらうでござる」
「………」
「言わぬなら、力ずくで吐かせるまで」
十蔵がバイトへ近付いた瞬間、
「<邪水飛沫>(じゃすいしぶき)」
そう呟いたバイトの体から、漆黒の水弾が無数に放たれた。
「…!?<津波壁>(つなみへき)!!!」
十蔵はすぐに反応して後ろへと跳び、目の前に水の壁を作って水弾を防ぐ。
威力は大したことないが、視界が完全に断たれた。
水弾が止む頃には、バイトの姿は消え失せていた。
「逃したか…不覚…」
十蔵。Win
次回、ウェドVSシズク




