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●全員解放!!●

更新遅くなりました

煉達の無双が始まりまーす

エレメント学園学生寮の

【ヴァルハラ】の201号室で、煉は今晩の飯の準備に勤しんでいた。IHクッキングピーターに乗せられた鍋の中では、肉や野菜が赤いスープに煮込まれている。先程言っていたキムチ鍋を作っているようだ。

煉はお玉でスープを少しすくって口に運び味見をする。


「うん。良い出来だな」


煉は火を止めて鍋に蓋を被せ、リビングのソファーに腰を下ろした。リオ達が遅いので時間を潰そうと考えるが、何も思い付かない。洗濯は終わらせた。部屋の掃除も隅々まで。晩飯の準備も完璧。

とりあえずテレビを見ようとリモコンに手を触れた瞬間、煉は異様な気配を複数感じた。場所はこの前魔竜が現れた荒れ地。


「この感知能力も、<バースト>の影響ってわけか。たく、懲りずにわきやがって…」


煉はすぐさま部屋を飛び出して荒れ地へと向かって走り出した。バーンズを呼んだ方が速いと思ったが、走り出して必要無いと感じた。前よりも遥かに速く走ることが可能になっているのだ。途中ある森は、木の枝を跳んで移動した。

荒れ地が見える辺り、煉はコールブレスを起動させてシンディを呼び出した。


「ようばあさん、聞こえるか?」


『あら煉。どうかしたのかしら?』


「……その様子だと気付いてないみたいだな」


『何かあったの?』


「理屈はわかんねえけど、この前の荒れ地で変な気配を感じたから今来てるんだよ。そしたら、」


『そしたら……?』


「俺の予感が的中。荒れ地に魔竜種の群れがいやがるんだよ」


『何ですって!?』


煉の報告にシンディが悲鳴染みた声を出した。そしてその瞬間に、理事長室に騎士が飛び込んできた。

どうやらここの騎士は飛び込むのが好きらしい。


『どうしたの?』


『たった今、荒れ地に魔竜種の群れを確認しました!!数、約30!』


煉よりも遅く報告に来た騎士を無視して、シンディはコールブレス先の煉に指示を飛ばした。


「煉!そこにいる魔竜種の群れを食い止めてて。増援はすぐに送る!!」


「心配すんなばあさん」


煉はシンディを安心させるように言った後、


「食い止める必要は無えよ。俺が、全滅させる」


獰猛な獣の笑みを浮かべて、通話を切った。


「さてと、<バースト>の肩慣らしとでもいくか」


首と肩の骨を回しながら魔竜の群れへと歩み寄る。

すると煉に気付いたのか、魔竜の群れが一斉に殺気立ち、耳障りな唸り声をあちこちから上げている。

9頭の蛇型の魔竜(ヒュドラ)、双頭の二足歩行の魔竜(アンフィスバエナ)

その他にも様々。

煉は1番近くにいたオーソドックスな魔竜の顔面を鷲掴みにした。魔竜は驚いたが、すぐ醜悪な笑みを浮かべる。人間の力で掴んでいられるはずが無いと、高をくくっていたのだ。

しかし、それが間違いだ。顔面を掴む力は、簡単にほどけるどころか、むしろ更に強く締め付けてきた。

煉の手を剥がそうとするが、ビクともしない。


「ギィ……!ギァァ!!!」


「うっせえ」


ドゴンッ!!


煉は魔竜の顔面を容赦無く地面に叩き付けた。

頭がきれいに地面に突き刺さり、そのまま動かなくなった。今の衝撃で頭蓋が粉砕されたのだろう。


「エレメント使ってねえのにこの力か……凄ぇな………俺」


まじまじと自分の腕を見ていると、死角から魔竜が突進してきた。この前と同じ、双角魔竜(ディアブルス)のようだ。しかし煉は一瞥もせず、振り抜いた裏拳で双角魔竜の頭部を打ち砕き、打ち伏せた。

「見え見えだ、アホ」


地面にひれ伏した双角魔竜に悪態を付き、辺りを見回す。まだまだいる魔竜の群れに、ため息を吐いた。


「さっさと殺るか……………ん?」


<バースト>を解放させようとした瞬間、エレメント学園の方向から高速で近付いてくるものを感知した。

数は5。いずれもかなりのエレメント反応だ。

煉は警戒しながら、感知した方向に視線を向ける。

そこで見たのは……


「うわぁ!凄い数の魔竜じゃない」


「色々いるねぇ。どれも悪そうな面してやがる」


「しかし、恐るに足りぬでござる」


「今となれば可愛いもんだよ、あんな奴等」


「まったくですね。あんまり怖くないです」


重力を無視して、空を飛んでこちらに向かってくる

リオ達の姿であった。


「いや何してんだお前等ぁぁぁぁっ!?」


煉はとりあえずリオ達に向けて渾身のツッコミと呼べるシャウトをかました。


「何って…?加勢に決まってるじゃない」


「加勢…?」


「そうそう。<バースト>解放したての煉が、こんな数の魔竜を相手にするのは荷が重い、って理事長が言ってたからさ♪」


ライズが意気揚々と答える。


「ばあさんが?何でお前等に?」


「シンディ殿に修行をつけて頂いたからでござる」


今度は十蔵が。


「いやー…本当に死ぬかと思ったよ。1ヶ月間シャドーマンとの戦いは…」


ウェドが続ける。


「まあでも、そのお陰で、強くなれましたし」


最後に美紀が締めた。


「お前等、シャドーマン修行をやってたのかよ?」


「うん。1ヶ月は長かったよ。煉もやったんだよね?」


ライズが煉に聞く。


「ああ。俺も長かったよ……3ヶ月はやったな」


煉の言葉にリオ達が凍り付いた。自分達が1ヶ月で死にかけたのに、煉は3倍の修行をやっていたのだ。

リオ達は煉の異常な強さと生命力の源を垣間見た気がした。


「ま、まあいいわ!!とりあえずやるわよ、煉!!」


「いやいや待て待て!!

お前等この前魔竜からボロボロにされただろ!?」


「大丈夫よ。見て」


そう言うリオの右手の甲には、風を現したような緑色の紋章が刻まれていた。


「属性……紋章?」


「あたしだけじゃない。ライズも十蔵もウェドも美紀も、皆手に入れたよ。

<バースト>を」


「お前等……どうして」


「あんたに守られるばっかじゃ、嫌なのよ!だから、あんたの背中を守れるくらいに強くなりたかっただけよ。それだけ」


リオは迷いを一切見せずに煉に言った。ライズ達を見ても、皆、頷いていた。

煉は、こんな仲間に出会えたことに感謝した。

ありがとう。その言葉は胸にしまい、代わりに


「背中は、預けたぜ」


信頼を込めてリオ達へ背中を預けた。


「まかせなさい!!」


「よっしゃ!!」


「お任せあれ!!」


「しっかりやるさ!!」


「行きましょう!!」


煉、リオ、ライズ、十蔵、ウェド、美紀の6人は、

正六角形の陣形を取り、

属性紋章が刻まれた右手をまっすぐ突きだし、

声を揃えて叫んだ。


『バースト!!!』


その瞬間、荒れ地に6つのエレメントが舞った。

逆巻く火炎。

荒れる暴風。

轟く雷鳴。

渦巻く激流。

凍てつく吹雪。

舞う砂嵐。

それらのエレメントが猛威となり、魔竜の群れを紙切れのように吹き飛ばす。

やがてそれらが治まるとそこに、それぞれの武具を構えた煉達が立っていた。


煉は真紅の刀身を持つ刀。リオは翡翠色の刃を持つ大鎌。ライズは金色の斧槍。十蔵は深い蒼の槍。ウェドは白銀に輝く双剣。美紀は土色の錫杖。


「さて、やるか」


煉が刀を構えて魔竜の群れに突撃しようとすると、


「あー煉。ストップ」


リオに服の襟を掴まれ、首が絞まり咳き込んだ。


「何すんだアホ!」


「理事長から伝言を預かってるのよ」


「ばあさんから…?」


煉は首を傾げた。


「この武器の名前を、預かってきてるのよ」


「名前を…?」


「そ。いつまでも武器の名前が無いのは可愛そうってわけだから、理事長直々に考えてくれたの」


「へ、へ~……で、お前等の武器の名前は…?」


「ちょっと待って………あったあった」


リオは一枚のメモを取り出し、読み始めた。


「あたしのは、『滅ぼしの嵐を呼ぶ大鎌<嵐滅>(らんめつ)』よ」


「俺のは、『天に轟く雷の斧槍<雷吼>(らいこう)』だってさ」


「拙者は、『大海を絶つ貫きの大槍<海絶>(かいぜつ)』でござる」


「僕は、『凍てつき断ち切る白銀の牙<凍牙>(とうが)』だよ」


「私は、『大地を治める偉大なる錫杖<地裂>(じれつ)』です」


ばあさん、あんたいい歳して中二病かよ……

煉はシンディのネーミングセンスに泣いた。


「当然煉のもあるわよ」


「予想出来てたよ…」


「じゃあ読むわよ。

『真の火焔を纏いし紅の一振り<焔真>(えんしん)』

だそうよ」


「………いいネーミングセンスだよ、本当に…

まあ、いっか」


煉は刀、もとい焔真を見つめ、語りかけるように言った。


「よろしくな、焔真」


そして焔真の切っ先を、魔竜の群れに向けた。


「来いよ魔竜共、1匹残らず灰にしてやらぁ!!」煉の啖呵と同時に、リオ達が一斉に魔竜の群れへと突っ込んでいった。


◇リオ◇


「さあ、いくわよ!!」


リオは右手に持った嵐滅を振るい、魔竜共の首を次々に切り落としていた。

風を纏った嵐滅の刃は、魔竜の鱗も意味を為さない。あっさり切り捨てられていくだけである。しかし、飛行能力を持つ魔竜は空からリオにブレスを放って応戦していた。嵐滅が届かない範囲からの攻撃は有利かと思われたが、それは簡単に打ち砕かれた。リオは全身を風で包み、空へと舞い上がっていた。戸惑う魔竜に構わず高速で接近し、


「<嵐魔刃>!!」


リオは嵐滅を振るい無数の真空刃を放ち、魔竜をバラバラに切り裂いた。

肉塊と鮮血が降り注ぎ何ともホラーな雰囲気を作り出してくれた。リオは地面に下りて一息つこうとしたが、空気を読まない魔竜共がリオを取り囲んだ。

しかしリオは恐れではなく、面倒くさそうに魔竜を睨み付けていた。


「面倒くさいわね……さくっと殺っちゃお」


物騒な呟きを吐いたリオは、嵐滅を構え直すと、全身に膨大な暴風を纏い始めた。その暴風で、魔竜共の陣形が崩れ始めた。暴風により巻き上げられた砂嵐が視界を妨げ、リオの姿が確認出来ない。砂嵐が収まる頃には、リオの姿はそこにいなかった。代わりに、6人に分身したリオが、魔竜を取り囲んでいた。


「グルァッ!?」


当然、魔竜共は混乱していた。さっきまで1人しかいなかった筈のリオが、分身していたのだから混乱するのも頷ける。


「さあ、」


「どのあたしが、」


「本物なのか、」


「わかるかしら、」


「馬鹿蜥蜴さん?」


「………」


「いや、最後の奴に台詞残しといてやれよ!?」


煉のツッコミが戦いの最中にもよく聞こえた。


「さあて、さくっと殺るわよ!!」


リオ×6人は、一斉に嵐滅を構えて、暴風を嵐滅の刃に纏わせる。渦巻く暴風が刃となり、巨大な風刃となった。


嵐魔六幻(らんまむげん)!!!」


6人のリオが振るった嵐滅は、6つの旋風となり魔竜を斬砕した。やがて5つの分身は消え、1人に戻ったリオは自慢気に鼻息を鳴らした。


「どんなもんよ!!」


◇ライズ◇


「ほらほら、邪魔邪魔」


ライズは雷吼を軽々と振り回しながら、魔竜共を切り裂いていた。斧部分で切り、槍部分で貫いている。

しかも、刃は常に帯電していて、切りつけられた魔竜共は体が麻痺して動きを封じられていた。

やがて全ての魔竜が封じられたのを確認したライズは、雷吼をまっすぐ天に向けた。同時に、天を分厚い雲が覆い隠す。雲の切れ目からは迸る稲妻が光り、雷鳴が鳴り響く。やがて雲から地上へ向けて、一筋の落雷が落ちた。落雷の狙いは、ライズが天に向けた雷吼。避雷針に引き寄せられる雷の如く、雷吼に落雷が直撃した。


ピシャーーン!!


大気を震わす爆音と衝撃波が辺りを包む。落雷をまともにくらってライズが無事とは思えない。魔竜共はこれを好機と思い、一斉にライズへと突っ込んだ。

しかし、この思い込みが間違いであった。ライズは落雷を受けても無傷。どころか、雷吼に先ほどの落雷が帯電し、雷の刃を形成していた。


「フィニッシュと、いこうか?」


ライズはその場から紫電のようなスピードで空へと跳躍し、雷吼を大上段で構える。


「<雷電吼断>(らいでんこうだん)!!!」


怒号と共に振り下ろされた雷吼は、正に落雷となりて、地上の魔竜共を消し炭へと変えた。ついでに地面には、一筋の斬撃痕が刻まれていた。


「楽勝楽勝!!」


◇十蔵◇


「ぬぅんっ!!」


腰の力を乗せた十蔵の海絶の一突きが、魔竜の巨体を貫き吹き飛ばす。高圧水流を纏った海絶の槍先は、魔竜の鱗を紙のように容易く貫いた。元々十蔵の実家は槍術道場で、槍を扱うのには慣れていた。幼い頃から基礎を叩き込まれた十蔵の槍さばきは素人の目には見えない速度だ。槍先だけではなく、石突きでも魔竜を殴り付けている。


「いくでござる!!」


海絶の槍先に激流が渦巻き、まるでドリルのような槍先を作り出した。高速回転する海絶の槍先は一撃で全てを砕くものに強化されている。


「<海破絶槍>(かいはぜっそう)!!!」


海絶の突きを放ち、残りの魔竜全てを貫いた。さらに貫いた箇所から高速回転する激流が魔竜の体を抉り、粉々に砕いた。


「よい勝負でござった」


◇ウェド◇


「ほいほい、鈍いよー」


ウェドは両手に握った双剣、凍牙を華麗に操り、魔竜共を切り裂いていた。切り裂かれた箇所は氷結し、魔竜の動きを阻害している。しかもウェドの周りは、スケートリンクのような氷の大地へと変わっていた。

氷の上では魔竜は上手く動くことが出来ない。逆にウェドは氷上をスケート選手ばりに滑り、魔竜共に華麗な剣を叩き込んでいる。


「綺麗に散りなよ」


ウェドの凍牙に吹雪が纏う。周りを全て凍てつかせるような吹雪が辺りを包み込む。


「<凍狼凶牙>(とうろうきょうが)!!!」


ウェドの振るった凍牙が魔竜共の体に1つの傷を付ける。それだけで、魔竜共はその傷から一瞬で全身を凍結させられた。氷の彫刻となった魔竜共は砕け散り、辺りを氷雨で包んだ。


「う~ん。華麗に決まったねぇ」


◇美紀◇


「邪魔です」


美紀が振り下ろした錫杖、地裂が地面に当たると、魔竜共の足元が隆起して体を突き上げた。怯む魔竜がほとんどだが、すぐさま立ち上がった魔竜が美紀に向けて走ってくる。が、美紀は慌てる素振りを見せずに地裂で再び地面を叩く。すると地面が隆起し、形を変え、巨大な双腕となる。

双腕の内、左腕が魔竜を受けとめ、右腕が容赦無く魔竜を殴り飛ばした。


「一気に決めます!」


美紀は地裂で、強く地面を叩く。すると、地面から無数の土塊が宙に放たれる。土塊は形を変え、土の拳となる。それは、魔竜に向けて一斉に放たれた。


「<土拳百裂>(どけんひゃくれつ)!!!」


降り注ぐ百の拳が魔竜共を殴り付けた。最早原型を留めず魔竜共は砕かれた。


「強くなれたかな?」


◇煉◇


「おらぁっ!!」


煉は焔真を横一文字に振り抜き、魔竜の首を切り落とした。さらに切り口から発火し、魔竜の体を焼き付くした。剣道をやっていた影響か、鋭く無駄の無い太刀筋で的確に魔竜共を仕留めていく。すると突然煉は動きを止め、居合いの構えをとった。それを理解していない魔竜共は一斉に煉へと飛び掛かる。しかし360度からの強襲を、煉は簡単に捌いた。


「<居合い壱の型・火煽薙>(かせんなぎ)!」


居合いの構えから放たれた高速の一太刀は、煉を中心に円形を描き、それに触れた魔竜を焼き切った。

残り1体の魔竜、三頭魔竜(トライバイト)は、怒り狂った雄叫びを上げて煉に三頭の顎を放つ。


「てめえで終いだ」


煉は焔真に炎を集束させ始めた。すると、刀身に炎が渦巻き、やがて、魔竜の身の丈をゆうに越える炎の刃が出来上がった。


「<真火焔斬>(しんかえんざん)!!!」


炎の刃を振り下ろし、魔竜を一刀両断にする。切られた魔竜は、業火に呑まれて焼失した。

総計30体の魔竜は、6人の学生によって、殲滅された。

次回、異世界修学旅行編です

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