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●解放の力<バースト>●

煉君の新たな力。

最早チート(笑)

「あの子達、大丈夫かしら……」


エレメント学園の理事長室で、シンディは1人落ち着かない表情をしていた。

煉達が出ていってもう数時間が経過している。コールブレスの映像を見ようとしても原因不明のノイズのせいで見れない。


「やはり様子を見に…」


シンディが理事長室から出ようとすると、


「た、大変です!!」


また1人の騎士が飛び込んできた。もうつっこむのが面倒なので単刀直入に騎士に話を聞いた。


「今度は何かしら?」


「い、今…エレメント学園から北の方角で、巨大なエレメント反応が感知されました!!」


「巨大な、エレメント反応が…?」


「はい!平均値を遥かにオーバーしています!タイプから見て、炎属性かと思われます!!」


炎属性。騎士の一言で、シンディは頬を緩めた。


「報告ありがとう。それと、避難している生徒達は戻していいわ」


「……は?」


「もう、片付くだろうから」


シンディの言葉の意味が理解できない騎士は、その場に呆然と立っていた。


「やっと、爛の言葉の意味がわかったみたいね」


窓の外を眺めるシンディの表情は、子供を見守る母親のような慈愛の笑顔だった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「何なんだろ…これ…」


「俺も…わからん」


「一体何が……」


「わかるとしたら…」


「煉君が原因、かな?」


自分達を包み込んだ火柱の中で、リオ達は状況を理解しようと考えていた。

最初火柱に包まれた時は、焼け死ぬと騒いでいたが、この炎はむしろ自分達を守ってくれていた。

すると突然炎は、煉の右腕に集まり始めた。だんだんと掌へと集束して、やがて一振りの刀を形作った。

真紅の刀身に、赤と黒で編まれた柄。金色の鍔。

膨大な火柱の炎が、一振りの刀へと変化したのだ。


「応えてくれて、サンキューな。炎よ」


煉は刀の腹をかるく叩いた。


「煉……それは?」


「これか?う~ん、わかんねえや。けど、」


煉は言葉を切り、


「お前らを守るために、俺の炎が力をくれた」


そう言うと、自分と双角魔竜との間に、刀で線を引いた。


「だから安心して見ててくれ。この線からは、塵1つ通さねえからよ」


そんな煉達を無視し、双角魔竜は再び咆哮を放とうと口を開いた。


「ギュアア……」


「うっせーんだよこらぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

しかし煉がその咆哮を上回る大声で双角魔竜の咆哮を掻き消した。更に大声の音圧が双角魔竜の巨体を吹き飛ばす。


「さあ立てよ。この場できっちり、焼失させてやるからよ!」


煉は刀の切っ先を双角魔竜にまっすぐ向けて言い放った。


「グルァァァッ!!」


双角魔竜はすぐさま立ち上がり、双角を煉に向けて突進を繰り出した。強大な威圧感を纏った突進は半端では無い。しかし煉は眉1つ動かさず、その場に仁王立ちしている。やがて双角魔竜が煉へと激突した。

完全に粉砕されたと思われたが、違った。

煉は左腕1本で双角魔竜の突進を受け止めていた。

双角の内左の角を掴んで止めていたのだ。


「大したこと無いな…」


煉は左腕に少し力を込め、双角魔竜の巨体を垂直に持ち上げた。「グル!?」


「落ちろ」


煉はそのまま垂直落下で双角魔竜を地面に叩き落とした。自慢の双角が深々と地面に突き刺さってそのままもがいていた。しかし体を回転させて強引に地面から双角を引き抜いた。

そして怒りのままに再び煉へと突進してくる。


「学ばねぇな…お前…」


煉は腰を落として、右足は前に。左足は後ろに。

刀は鞘に納める形で腰に当て、目を閉じる。


「あれは、居合いでござるな…」


十蔵が口を開く。


「居合い……?」


初めて聞く言葉にリオとライズとウェドが頭に?マークを浮かべた。


「日本に昔から伝わる剣術でござる。自らは動かず、自分の領域に入ったものを切り裂く技でござる」

「あいつ、そんな技できたんだ…」


「うむ。確か煉殿は剣道をしていたと聞いているでござる。恐らく、そこで居合いを修得したかと」


十蔵が説明が終えると、双角魔竜は煉のすぐそばまで接近していた。やがて双角魔竜の双角が、煉の間合いに侵入した。その瞬間、


シュンッ!!


風を切り裂く音が耳に届く。見れば、煉が刀を振り抜いた姿勢になっていた。

何を切り裂いたのか。答えは、宙を舞う双角であった。突進してくる双角魔竜の双角を、一閃で切り裂いたのだ。


「オ……!オォォォ!?」


双角魔竜が頭を抑えて悲鳴を上げた。名前にある通り、この魔竜の最大の武器は双角である。それをいとも簡単に切り裂かれたのなら、狼狽えるのも納得がいくわけだ。しかし、最早ただの魔竜へと堕ちた双角魔竜は後ろへ跳び、体を回転させ、その勢いを乗せた尻尾を煉目掛けて振り下ろす。断頭台のギロチンのような一撃が煉に迫る。


「これも切るか…」


煉はおくさず、振り下ろされる尻尾に向けて、刀を振り上げる。ぶつかり合う尻尾と刀。勝敗はあっさりとついた。何の抵抗も感じさせず、煉の刀が双角魔竜の尻尾を切り落とした。

双角と同様に宙を舞う尻尾を見た双角魔竜はやけくそになり、右の拳を煉目掛けて放った。煉は刀を左手に逆手で持ち変えると、右腕に炎を集束させる。そのスピードは今までよりも断然上だ。1秒かからず右腕を炎へとした。


「火紅鎚」


双角魔竜の拳に煉の炎の拳が激突し、簡単に双角魔竜の拳を破壊した。しかも拳だけでなく、肩から下が爆発で吹き飛んだ。「グルァァァッッ!?」


「もう終いにするか」


煉が放つ圧倒的威圧感が、双角魔竜戦慄させた。

魔竜種と呼ばれる、恐怖が具現化した存在が、たった1人の人間に畏怖した。

本能が呼び掛ける。このままでは、確実に死ぬ。

双角魔竜は本能に従い、

最後の手を出した。

背中から一対の漆黒の翼を生やし、それを羽ばたかせ空へと逃走したのだ。

それと同時に、リオ達を縛っていた<威圧の竜眼>の効果が消えた。


「お!動ける」


ライズが自由になった体で飛び回る。他の4人も同様に体を動かしていた。


「空に逃げたか……追えるでござろうか?」


「あたしの風を使えば、追えないことは無いけど……あっちの速度が上だから……」


「あの距離だと、凍らせるのも無理だね…」


「万事休す…かな」


「いや、問題なし」


諦めムードをぶち壊すように煉が会話に割り込んだ。リオ達はどこが問題なし、なのか理解出来ない。


「よく見てろよ?」


煉は背中に三対の炎の翼を作り、腰辺りに扇状の尾羽を形成した。


「<紅蓮鳳凰>!」


煉は翼を羽ばたかせ、双角魔竜の跡を追った。スピードは煉の方が上。つまり、一瞬で追い付いた。


「逃がさねえぜコラ!!」


「グル!?グルァァァァァァァァァァッ!!!」


双角魔竜は最早考えることを捨てた。歪な牙の並ぶ顎を開き、煉に食らい付こうとした。


「おらぁぁぁっ!!」


その開いた顎に煉は水平に刀の刃を叩き込んだ。

刃は双角魔竜の体を水平に切り裂いていき、最終的に上顎と下顎が切断された。2つになった死体は切り口から炎が燃え上がり、地面に落ちる前に焼失した。

「ふぃ~。終わっ……た……か…」


地面に下りた直後、煉は急激な疲労感に襲われて意識を失った。

次回、<バースト>の秘密公開。そしてリオ達に変化が……!

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