●あの言葉の意味●
煉が気付いた言葉の意味とは…!
エレメント学園から北の地点。煉は孤軍奮闘の勢いで双角魔竜と激しい戦闘を繰り広げていた。双角魔竜の拳、蹴り、尻尾、双角の突進を回避しながら少しずつダメージを与えていく。
しかし致命傷に至らない傷は、双角魔竜を鈍らせるどころか、逆に怒りを底上げしてしまう。煉も全てを回避出来ず、死角から振り下ろされた尻尾が背中を打ち付けた。
「ぐはっ……!!」
袈裟懸け状に背中の肉を抉られた煉はその場に膝を着いた。口の端からは血が一筋流れている。
「なめんじゃ……ねえぞ……!<火爆大炮>!!」
煉は炎を纏わせた右腕から炎の砲撃を双角魔竜目掛けて放った。炎の砲撃は狙い通りに双角魔竜の顔面に直撃する。だが、ただの鼻息で瞬く間に鎮火された。
「野郎………!もう一発……ぐぅ!?」
煉が再び双角魔竜へ炎を放とうとした瞬間、煉の体に異変が起こった。身体中に、先程まで無かった傷が現れ始めたのだ。同時に煉が苦悶の声を上げる。
シンディのエレメントの効果が切れたのだ。全身を激痛が駆け回る。あまりの痛みに気が飛びそうだ。
立つことすら出来ず、煉はうつ伏せに倒れ込む。
どうにか首だけを動かして双角魔竜を見上げる。
止めを刺そうとしない。
何故だ?双角魔竜の意図が理解出来ない煉はただ、見ているしか出来ない。
すると双角魔竜は煉ではなく、<威圧の竜眼>によって動きを封じられたリオ達に向かって歩を進めた。
「なっ……!?」
双角魔竜はリオ達の前まで行くと、右の拳を高く振り上げた。リオ達は、恐怖で顔が青ざめている。
「止めやがれ……!!ぐあっ…!!!」
体が言うことを聞かない。動かない。悔しい。もどかしい。煉は歯軋りした。
「うおぉぉぉぉ……!!」
痛いからどうした。
ボロボロだから何だ。
動け。動け、動け動け!!
身体中にはしる激痛に耐え、煉は立ち上がった。
血を流し過ぎてるせいか、頭もフラフラする。思考が回らない。いや、難しいことは考えなくていい。
考えることは、ただ1つ
「あいつ等を、守ることだぁぁぁぁぁっ!!」
煉は一気に踏み込んで、双角魔竜の下に走った。身体中の傷から血が吹き出して大地を赤に染める。そんなことに構わず、煉はリオ達と双角魔竜の間に割って入った。もうその瞬間には、双角魔竜の拳が振り下ろされて、間近に迫ってきていた。煉は右腕に膨大な炎を溜め込んだ。右腕に炎が吸収されていく度に右腕が熱く、光輝いた。炎そのものと化した右腕を、双角魔竜の拳にぶつけた。
「<火紅鎚ぃ>!!!」
ぶつかり合う2つの拳。火花を散らし合い激突する。先に悲鳴を上げたのは、
煉の右腕だった。巨大な質量に耐えきれず、煉の右腕の骨にヒビが入った。
「……だっしゃあっ!!」
しかし煉は、ヒビが入った右腕で、双角魔竜の拳を弾き飛ばした。だが、双角魔竜は左の拳を再び撃ち出した。煉も再び左腕で<火紅鎚>を発動させ、同じように弾き飛ばす。今度は左腕の骨にヒビが入る。
双角魔竜は左の拳を引き、また右の拳を撃ち出す。
「しつけえんだよ、この野郎ぉぉぉぉぉっ!!!」
煉のだめ押しの<火紅鎚>が再び双角魔竜の拳と激突した。
バキィッ!!
何かが粉砕された鈍い音が聞こえた。煉の右腕が、完全に粉砕されたのだ。
「ギュオアァァァ!!!」
怒り狂った双角魔竜は両拳をがっちり組むと、一気に振り上げ、それを煉達にに向けて振り下ろした。
大気との摩擦で辺りが灼熱に見舞われる。巨大な質量がとんでもない威圧感と共に迫る。まるで、隕石。
受け止めようにも、右腕は粉砕骨折。左腕は強度打撲。全身の骨の9割にヒビ。内臓はほとんど破損。
受け止めれば潰されるのは必至だ。それでも、
やらなきゃならない。
絶対に、守る。
ドオォーーーンッ!!!!!
本物の隕石と差がない一撃が直撃した。リオ達は死が確定したと思っていたが、違った。双角魔竜の拳は、煉が受け止めていた。
頭上でクロスした両腕で、自分よりも巨大な一撃を止めていたのだ。
「………大丈夫…か?」
「煉……!あんた……」
「よかった………怪我は……ねえみたいだな…」
「あんた、そんなに……ボロボロなのに…!」
リオが泣きそうな顔で煉を見た。
「そんな顔すんなよ………俺が…守ってみせる…
この力で…絶対に…!」
その言葉で、煉はふと思い出した。3年前のあの日、爛が言っていた言葉。
『何で強くなりたいんだ?』
何で?あの時はわからなかった。ただ、兄貴に追い付きたかっただけで強くなりたいと思ってた。親父とお袋を殺されて、兄貴を眠らされた時は、復讐するために強くなりたいと思ってた。でも今は違う。俺の後ろにいるこいつ等を守るために、強くなりたい。
結局、兄貴の言葉の答えはわからない。でも俺の答えは、合ってる気がした。
「気付くのに……時間がかかっちまったな……」
煉は少し頬を緩めた。
「なあ、聞こえるか?
エレメント……悪いな、お前を知るのに時間がかかっちまって…」
煉は自分自身のエレメントに、炎に語りかけた。
「もう道は間違えねぇ……もう道を踏み外さねぇ…
だから…もう1度だけ、俺に力をくれ…」
双角魔竜の拳が煉の体を押し潰そうと力を増してきた。煉の足下が蜘蛛の巣状にひび割れる。それに耐え、煉は魂の底から叫んだ。
「なあ…エレメントォォォォォォォッ!!!!!!」
その瞬間、煉の足下から巨大な火柱が上がり、煉達を包み込んだ。火柱の発生で、双角魔竜の体は後方へと飛ばされた。
天に屹立する火柱。
それは煉に新たな力を与える進化の合図だった。
次回、進化するエレメント




