●暴走<バーサーク>●
煉の大暴走回です
初めは何が起きたかわからなかった。全身の骨が砕けてるし、内蔵も潰れていた。生きてるのが不思議な状況の俺の目の前で、あいつ等が殺されそうになっていた。シヴァの腕が、リオの首を締め付けている。
動こうとしても体は言うことを聞かない。
「やめろ……」
やっと口にした言葉にも力が入らない。そんな俺を嘲笑うように、シヴァは腕に力を入れる。
「やめろ……!」
これ以上、俺から大事なものを奪うな……!
「やめろ……!!」
今力をくれるなら、悪魔でも何でもいい。俺に、
あいつを殺せる力をくれ
「やめろっつってんだろうがぁぁぁぁぁ!!!!!」
魂の底から叫んだ言葉に、誰かが応えた。
憎しみに、囚われないで
誰が言ったかわからない。でも、懐かしい。
ただその声が聞こえる頃には、俺の意識は消えていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ククク……クハハハハハハハハ!!面白いなぁ、赤堂煉。まさかあの状況から
<バーサーク>を発動させるとはなぁ!!」
シヴァの狂った笑いがリオ達の耳を刺した。
「<バーサーク>…?何よ、それ?」
「簡単に言うなら…エレメントの暴走」
「契約者が…強い怒りや憎しみに囚われ自我を無くした時…発動する禁術でござる」
「その力は強力で…通常とは比べ物にならない戦闘力を手に入れられる…」
「ただ同時に、自分の身体と精神に大きなダメージを与える諸刃の剣…」
リオ以外の全員が解りやすいように説明した。
「ぐおぉぉぉぉっ!!」
獣のような咆哮を発生させた煉は瞬間移動したかのような爆発的なスピードでシヴァに接近し、至近距離から殴り飛ばした。更に飛ばされたシヴァの顔面を鷲掴みにして地面に叩き付ける。同時にクレーターが出来上がり、地盤を大きく揺らした。煉はシヴァの顔面を掴んだらまま、掌から爆炎を放射する。
「<火爆掌>!!!」
シヴァの顔面を容赦無い爆炎が襲った。その炎の余波は地盤を突き破り、大地から炎の柱を上げた。
煉はシヴァの体を持ち上げ、きつく睨み付けた。
「ここで……死ね」
それだけ言った煉はシヴァの体を空高く放り投げる。そこに両手の掌を向け、
「<双蓮火爆掌>!!!」
2つの爆炎を撃ち放った。天を焦がす双蓮の炎はまっすぐにシヴァへと向かう。そしてその身を焼き尽くす。はずだった。
煉の<双蓮火爆掌>はシヴァに当たる直前に現れた黒い炎に防がれたのだ。
「………!?」
「シヴァ様に手を出そうなど、身の程を知れ」
突如聞こえた声と共に、煉に向けて黒い炎の矢が放たれた。高速で飛来する矢を、煉は片腕で叩き落とした。矢が飛んできた方向には、先程まではいなかった人物がいた。漆黒の長髪を持つ紫の瞳の男。全身を近代的な鎧で包んでいた。
「間に合ったようだな」
「は。お待たせ致しました」
「よい。おかげで、中々楽しめた」
「おい…」
シヴァと乱入者の会話に煉が割り込んだ。
「誰だてめぇは?」
「口を慎め小僧。貴様が私に口を聞こうな…」
「質問してんだよこっちは」
「……!」
不意打ちで放たれた煉の火炎球を咄嗟に回避する。
「もう一度だけ聞く。てめぇは誰だ?」
「……いいだろう。私は“炎鬼のガルファ”。シヴァ様の側近、“六鬼槍”が1人。貴様は何者だ?」
ガルファと名乗った男の質問に煉も答える。
「赤堂煉だ」
「赤堂……なるほど。赤堂爛の愚弟か…」
「…!んだと?」
ガルファの言葉に煉の瞳が細まる。
「負け犬の赤堂爛の愚弟がシヴァ様に手を出したか。まあその様なら、敵わなかったようだな。ふん、兄弟揃って無様だ」
「ガルファよ…」
唐突にシヴァがガルファの名を呼ぶ。
「死ぬぞ…?」
「は……?…ぐうっ!?」
シヴァの言葉の意味がわからず呆けているガルファを、巨大な衝撃が襲う。
衝撃の正体は当然煉だ。
怒りのままにガルファに掴みかかり、地面に投げ付けた。隕石並のスピードで地面にぶつかり砂埃を巻き上げた。
「ぐ……!貴様ぁぁっ!」
「があぁぁぁっ!!」
ガルファに向けて急降下する煉は右腕に炎を纏わせる。ガルファも対抗するかのように黒炎を右腕に纏わせた。
「<火紅鎚>!!!」
「<邪炎鬼劫>!!!」
炎と黒炎の拳が激突し、辺り一帯を火の海へと変える。天は焦げ、熱風が吹き荒れた。
「ぐ……私の黒炎を破るとは……」
そこには、身体中に火傷を負ったガルファがいた。
目の前には、傷だらけの煉。
「殺してや……!」
ガルファへ近付こうとした瞬間、煉の口から大量の鮮血が吐かれた。
<バーサーク>発動の副作用がきたのだ。体のいたる箇所から出血した煉はあっという間に血だらけになった。
「ふん。<バーサーク>の副作用か。愚か者が、」
ガルファが煉に止めを刺そうとするのを、
「待て、ガルファ」
シヴァが制した。
「生かしておこう。その方が面白い」
「……シヴァ様の仰せのままに」
「ククク…赤堂煉。私を殺したくば、まだ強くなることだ」
シヴァとガルファはそれだけ言うと、溶けるように空間に消えていった。
「……ち…くしょう…」
煉は涙を流しながら固い地面に拳を叩き付けた。
次回、またしても最悪な敵が…?




