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社交界のおじさん 嫌われ者の地味なおじさんが、社交界から逃げ出します  作者: タッセル


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第3話 撮影者と傍観者

「おじさん同盟作らない?」


ルクスは医務室で手当てを受けていると、突然声をかけられた。彼は確か...社交界のメンバーにいたようないないような。


他の人にも声をかけるから、とバタバタと部屋を出ていった。一体何だったのだろう。


医務室で休んでいるが、ルクスは、まだ調子が戻らなかった。何となく、まだ全身がだるい。


ルクスが、ぼーっとしていると、外からわあわあと人々の話声聞こえてきた。あれは、ファニー嬢だろうか。


医務室から出て、ベランダから外を遠くから眺めて見る。

ファニー嬢と他の数名が、動いて何か撮影をしているようだった。


ルクスは、またいつもの取材だろうと思った。

いつもの取材とは、貴族の屋敷に出入りして、その生活ぶりを番組として報道していることをいう。


ルクスに声はかからなかった。

こんな地味なおじさんに、世間は興味を示さない。人気があるのは、若いイケメンか美女なのだ。


というわけで、一度もそういった、華やかな社交界とは縁遠い生活をしていたわけだが。


遠くから見つめるのが慣れすぎて、すっかり傍観者になっていたから、襲撃の際に防御するのを忘れてしまっていた。


今度から気をつけよう、とルクスは思った。





「おじさん同盟のメンバーが集まったよ」


メールが来た。先ほどの謎の青年は、思ったよりも仕事が早かった。

ルクスは、メンバーを確認する。ハイツ氏、パトリック氏、ホームキン氏、後はレース氏か。結構、錚々たる面子が集まったらしい。


どうやら社交界に居場所がないのは、自分だけでは無かったらしい。


外では、わあわあと未だに撮影続いているらしい。遠くから、金属音やら、スタッフが掛け声をかけるやら、ずっと忙しいそうだ。


暑いのに、大変だな。なんて、涼しい医務室の中で考え事をする。ひんやりとした空気が、ルクスの傷を癒やしてくれた。この時間は貴重だ。


おじさん同盟か。


案外悪くないかもしれない。

社交界は、本当に仕事がないおじさんにとって退屈で仕方がない場所だ。


仕事がないのは、ずっと。前から、20年前から、ずっと。退屈過ぎて、忙しい貴族の手伝いに回されていたほどだった。


時間が溶けていく。何があっただろう、今まで。何も無かった。思い出すのが、ひとつふたつ。それぐらいだった。


他の、おじさん同盟の人たちも同じなのだろう。ルクスと。何もないんだ。






夏の日差しが地面を照りつけている。

暑い。やる気は全く無い。医務室で、今日の仕事はサボってしまおう。そう決めて、ルクスは、ベッドに横たわった。


そう、これは役目なんだ。


どうでもいい、おじさんたちがいるからこそイケメンが目立つ。そういう役目なんだ。


ルクスは、とにかく今は、泥のように眠りたかった。眠って、そのまま面倒な人間関係から逃げ出したかった。


医務室に扇風機の音が鳴り響いている。ルクスは何となく退屈に感じて携帯を確認すると、社交界メンバー限定で撮影の動画がシェアされていた。

ルクスは、少し退屈だったので、ライブ配信を見てみることにした。


「ほら、リオンは今回は...」

「ええ...」

何だろう。トラブルだろうか。

ファニー嬢のふて腐れた様子がライブ映像に流れていた。


「違うんだよ」

「......そんな、だって...。今までは」

「だからルクスがさ」

「わかったルクスがリオンのものを盗ったんでしょ」


何やら自分の噂話をしている。しかも、濡れ衣を着せられそうになっている。

さっぱり意味がわからないが、また面倒な事に巻き込まれそうだ。


「だって、嫌、私が、ダメだって言いたいの...!?」


ファニー嬢が明らかに動揺した場面でライブ配信が、プツリと切れた。


またトラブルか...。

ルクスは、気が遠くなる気がした。




「ちょっとルクス!」

あたりはすっかり暗くなった後、ファニー嬢が医務室ぼんやりと眠っていたルクスを叩き起こした。ルクスは、まだ眠りから覚めない。


撮影スタッフがファニー嬢の後を追って医務室に入ってきた。すっかり、大渋滞になった。


「貴方がリオンの名前を盗ったんでしょう!」


(名前?何のことだ)

「どうせ、羨ましいかったんでしょリオンが。ルクスなんて、ぜんぜん地味な役立たずじゃない」


「ちょっと、ちょっと、ファニーちゃん」


撮影スタッフも困惑している。

ルクスは、何のことわからなかったが、とにかくヤバいことだけは察した。


「名前盗るって?どうやって...」

「それは...」


ファニー嬢は何かを言いかけて、黙った。

周りの不穏な空気を察したのかもしれない。


そのまま、黙ってファニー嬢は医務室を出ていった。撮影スタッフも一度、ルクスに会釈してファニー嬢の後を追った。


大事にならないと良いけど。


空は、雨雲が覆っていた。



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