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第三話 村長(2)


クス、と人知れず村長は笑った。


何だこの人は。

突然、城を建てて。

都で貴族同士の争いから逃げてきたのかと思った。

なにか小さくていいから、治めたくてしかたないのかもしれないと思った。


でも全部違うらしい。

ひざについた土を村人たちに払われて、あわあわしているこの貴族を見ていると笑いしか思いつかなかった。


トレスタ、レイオン・トレスタと言ったか。

この何十年生きてきて、こうも変な人は珍しい。

貴族という枠にはめられていない人間を初めて見た。

またこれは、村が忙しくなるなと笑いながら思った。


今の現状を見ていれば、わかる。

トレスタの土を払いながらも、村人たちは笑っている。

子供たちは、貴族たちの子供たちとかっけこをして遊んでいる。

さきほどあんなに殺伐としていたのに。

村人が、受け入れた。この小さな村であるからほかの地域の人間はあまり好まない人間が出来上がっていた。

それがいまはどうだ。


先ほど失言をしてしまった男の子の親は心の中で感謝でいっぱいであるに違いない。本当に殺されるかと思った。

今回は確実に体から力が抜けた。


その男の子だって、いまじゃあそこで砂遊びだ。

平和じゃなぁ、と村長はまぶしく村人を見守った。


「引っ越してきたのはいいんじゃが、どうしてこんな辺境地に」

「土地がね、子供たちが遊べる土地がね、どうしても欲しかったのです。子供たちには飽きられてしまいましたが、私は満足です。公園を作るのです。村の人たちとバーベキューだってしたいのです」


村長はその話をきいて思わず笑いが漏れた。

貴族が第一線をぬけるということ、自分から貴族ルートを抜けるということがどれだけ大変なことか。



「子供たちをあの空気に置いておけなかったというのもありますがね」

トレスタの目が一度光ったのを確認して、さすがに人の上にたつ人だと思った。

この人、ばかじゃないな。

すこし トレスタの表面的判断を変えながら村長は再確認する。


この人前、結構な地位についてひとだな。

七〇年生きていた勘が言う。

さきほどの男の子の失言だって故意であういう空気にしたに違いない。

読めないやつめ。

喉の奥で、ククと笑いながらそれでもいいかとトレスタを見た。


目が合う。



「気が合いそうですね」

「・・・そうだな」


やっぱり喰えないやつめ。それでも村長は楽しそうに笑った。


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