第2話 後編
対戦相手の男は、赤ら顔で感心する。
「ほう、マグレにしてもやるじゃねえか」
「どけどけ、次は俺の番だ!」
次の対戦相手が男を突き飛ばし、掴み取ったサイコロを放り投げる。
出目は6のゾロ目だった。
相手は得意げに笑う。
「そら、最高値だぞ。どうする!」
「問題ない」
ナキは表情を変えずにサイコロを転がし、6のゾロ目を出す。
結果に反応せず、彼はライアンに確認した。
「引き分けの場合はどうする」
「仕切り直しだわな。勝負が着くまで繰り返せばいい」
ライアンが答えた瞬間、ナキは連続でサイコロを投げる。
結果はいずれも6のゾロ目だった。
異常な現象の場の人間は仰天する。
「何ッ!?」
「こいつ、ずっと6のゾロ目しか出さねえぞ!」
「どんなイカサマを使ってやがる!?」
騒然とする場で、ライアンだけがニヤニヤと笑っていた。
彼はナキの肩に手を置いて語る。
「元々こいつはただの村人だった。スキルは何一つ持たず、レベルも低いザコだったんだ。それなのにどうして人類最強の勇者になれたと思う?」
ライアンの問いかけに誰も答えない。
少し間を置いてから、彼は勇者の秘密を明かした。
「こいつには天性の模倣能力がある。五感すべてで相手の動きを読み取って正確に真似できるのさ。スキルやレベルとは異なる才能だ」
「模倣能力で他人の技を盗んで強くなったってわけか」
「ああ、その通り。ナキは魅惑の迷宮でスキルやレベル、超強力な神器を失ったが、根底の力はまだ健在なのさ」
ライアンが語るそばで、ナキは何度も6のゾロ目を出してみせる。
客達は唖然として固まっていた。
「見たか! ナキは同じ動きをいくらでも再現できる! 俺が出した6のゾロ目を真似してるんだ。こいつは絶対にミスをしない! それでも勝てる自信のある奴だけで挑戦してくれ!」
ライアンが促しても、客達は黙り込んでいる。
日常的にギャンブルを嗜む彼らにとって、出目の操作は朝飯前の行為であった。
しかしその制御も決して完璧ではない。
何度も行えばミスもするため、ナキのように連続で6のゾロ目ばかり出すのは不可能だった。
「本当に誰も挑戦しねえのか? ったく、情けねえな。もう少し張り合いがねえと練習に――」
ライアンの言葉を遮るように挙手する者がいた。
それは酒場の女主人だった。
カウンターから出た彼女は、豊満な肢体を揺らしてテーブルに歩み寄る。
「――ねえ、あたしとヤろうよ」




