第2話 中編
数日後、辺境の街の酒場にライアンが現れた。
彼の背後には、ふらつきながら歩くナキもいる。
義手義足を装着したナキはその感覚にようやく慣れ始め、自力で歩行できるようになったところだった。
ところが床の凹凸に足を引っかけてナキが派手に転倒する。
ライアンは苦笑交じりに手を差し伸べた。
「おいおい、大丈夫か?」
「問題ない」
ナキは手を借りずに立ち上がってみせる。
一方、酒場にいた者達は二人に注目していた。
その中でライアンは声を張り上げる。
「誰か、こいつと勝負してくれ。賞金は俺が出そう」
「待てよ、ライアン。そいつはまさか……」
「魅惑の迷宮でボロ負けした勇者ナキだ」
ライアンが答えた瞬間、場は騒然とする。
熱狂ぶりに耳を塞ぎながらライアンは用件を叫んだ。
「こいつは支配人リリーにリベンジするそうだ! だから練習相手を探している!」
「そいつは面白れぇ!」
「俺がやる! 受けて立つぜ!」
「報酬が出るなら参加するぞーっ!」
室内の客のほぼ全員が挙手をしていた。
そんな彼らをライアンが取りまとめ、ナキとの対戦環境を用意する。
酒場の中央部のテーブルにナキが座り、対面には客が一列になって並ぶ。
ライアンは持参したサイコロを掲げてナキに説明する。
「ルールは簡単だ。二つのサイコロを投げて、出目の合計値が大きい方が勝ちだ。ただしゾロ目は乗算で、1以外は数値が増える」
「理解した。始めてくれ」
ナキは淡々と頷き、最初の対戦に挑む。
そしてあっけなく負けた。
次の相手にも負けて、また次の相手にも惨敗した。
「かっかっか、大儲けだぜ」
「勇者様も賭け事は弱いようだなァ?」
「ライアン、こいつを毎日連れてきてくれよ!」
相手に煽られてもナキは真顔のままだった。
彼はライアンに尋ねる。
「なぜ俺は勝てない?」
「連中が出目を操作しているからさ」
ライアンはサイコロをつまみ取って「6のゾロ目」と言いながら転がす。
出目はどちらも6だった。
「手練れの博徒は出目を操作する。スキルじゃねえぞ。純粋な技術だ。ちなみにお前がサイコロを振る時は、机を僅かに揺らして悪い出目になるように細工していたわけだな」
「なるほど。もう一度振ってくれ。次も6のゾロ目で頼む」
「おう、よく見とけよ」
ライアンは再びサイコロを振って6のゾロ目を出す。
その一部始終をナキは瞬きせずに観察していた。
「もう十分だ。次こそ勝てる」
「勇者様よ、ギャンブルってのはそう簡単に攻略できるもんじゃないぜ?」
次の対戦相手が椅子に座り、得意げにサイコロを振る。
出目は5と6だった。
「ちっ、酒で手元が狂ったか」
「次は俺の番だ。不正できないよう机から離れてくれ」
相手を下がらせた後、ナキはサイコロを投げる。
出目は6のゾロ目だった。




