第1話 後編①
「ギャンブルには興味ない」
そう言ってナキは斬りかかろうとする。
ところが彼の剣が忽然と姿を消した。
動きを止めたナキは手元を睨む。
(抵抗する間もなかった……)
対するリリーは余裕綽々と笑っていた。
彼女は楽しげに解説する。
「無駄ですよ。この空間は暴力行為を禁じています。ペナルティで聖剣は没収させていただきました」
「そうか」
ナキはすぐさま新たな神器を取り出して攻撃を試みるも、同じ要領で没収されてしまった。
眉間に皺を寄せたナキは室内を見回す。
(空間内の法則を操作しているのか。殺傷力はないようだが絶大な効果だ)
考察するナキは無計画な攻撃を断念する。
これ以上繰り返しても無駄だと悟ったのであった。
そんな彼の心を見透かしたかのように、リリーは嬉しそうに忠告する。
「ナキ様。あなたは私に勝負を挑みました。この領域に入った時点でギャンブルは避けられません。ご了承くださいませ」
「俺はギャンブルを知らん。武力による戦闘を希望する」
「では、それを賭けの報酬にしましょう。あなたが勝った場合、小細工抜きの真剣勝負に応じます。私が勝った場合は――」
「それでいい。さっさと始めろ」
ナキが頷くと、リリーはカードの束から二枚を取り出す。
カードにはそれぞれ剣士と淫魔が描かれていた。
「人間とサキュバス。二種類のカードから人間を選べばあなたの勝利です。初心者にも優しいゲームにしてみましたが、ルールは理解できましたか?」
「問題ない」
「では始めましょう」
リリーは二枚のカードをテーブルに置くと、カードの束を頭上にばら撒いた。
散らばったカードは空中に浮かび、ゆっくりと動いて整列する。
ちょうどすべてのカードがナキから見て裏向きとなっていた。
「どうぞ。ご自由にお選びください」
ナキは躊躇わず近くにカードを掴み取る。
絵柄は淫魔だった。
「残念、あなたの負けです。神器を一ついただきます」
リリーの宣言の後、ナキの身体から光の粒子が放出された。
粒子は吸い込まれるようにしてリリーの谷間へと消える。
彼女は探るような目で説明をした。
「敗北するたびに、あなたの所有するものを没収します。それでも良いなら再戦いたします」
「構わない。もう一度勝負だ」
「ええ、喜んで。特別サービスで引いたカードは戻さないでおきましょうね。そうすれば、あなたの勝率が上がりますから――あとは、失う覚悟をもって進むだけです」
「上等だ」
ナキは臆せずサキュバスの魔王に挑んだ。




