168.顔見知り?
レストデーンを奪還して、20日が経過した。
この間、私は残存するゾンビを駆逐するため、街中をキョロキョロと巡回。
それが終わるとすぐに到着した調査チーム。
……という名の研究室の面々。
アルル室長やシモーナ副室長には、それはもう質問攻めをされ続けていた。
「やっと解放されたぁー!」
毎日毎日、あれやこれやだったので、解放されると空気が美味しい。
「お疲れ様ッ!」
迎えに来てくれたシアが飲み物を手渡してくれる。
「くぅ〜、染みるぅー」
「アルル室長達、テレーズ長官にこっぴどく怒られたはずなのに、なかなかリリちゃんを解放してくれなかったね」
そうなのだ。
自動防御装置【ジュラ】の開発の時もそうなのだが、あの人達は、休むってことを知らない。
本来、暦通りの勤務であるはずだから、テレーズ長官も私が休んでいると思っていたらしい。
私がブラック環境に慣れてしまったせいもあるが、何も思わず実験の日々。
結局、実家にも帰れず、帝都で過ごすことになってしまったのだ。
ただ、そのお陰で、エンドによる射撃を防げたのだから、私としてはちょっと責めにくい所がある……
しかし、この件で怒られたはずの彼女達は、相変わらずであった。
シア達が夕飯に迎えに来るのを合図に、私も振り切って逃げなきゃずっと続くこと間違いないし。
本当に反省していない。
とにかく、私の知ってることはもうないし、後は調べてくれるだろう。
「それね。これでやっと帰れるよ」
明日には特務機関がレストデーンから引き上げる。
「うん!お母さんもご馳走を作って待ってるってよ」
お腹空いてる時にそれは……ジュルり。
早く帰りたくなる。
「やった!リサさんのご飯だ!
2人とも元気かなぁー。ルナリアは大きくなってるよね」
なにせ5年振りである。
楽しみだなぁ……
「ふふっ。
リリちゃんが見つかったと思ったら、ネームドになってるんだから、2人とも大騒ぎしてたんだからね」
「アハハ、そういえばそうだね。
早く会いたいぜッ」
「そういえば、私達の撤退はリリちゃんが見たいって言ってたガイアの移送も兼ねるみたいだよ」
「そうなの?ラッキー。見れるじゃん。
シアは見た?」
原作ファンとしては見とかなきゃいけないよね。
原作時点だと粗野な感じだけど、男らしいって感じの人だった。
漢って感じのね。
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side:シア
「私もまだ見てないよ」
「そっかぁ。
10年以上経ってるはずだから、歳は取ってるんだよなぁ……」
声は小さかったけど、私には聞こえた。
まるで知ってるかのような口ぶり。
リリちゃんは時々こういったところがある。
そして、それは本当に合ってるんだよね……
ずっと一緒にいるはずの私にも分からない。
きっと、リリちゃんは私なんかと違って、色んなものが、見えているんだと思う。
時に、怖いって言う人もいるけど、リリちゃんは私達の味方なんだから、怖がる必要ないのに。
リリちゃんが凄すぎるから仕方ないけどね。
翌日、帰省の日。
私達はウエストテリアの街を経由し、ノーステリアまで帰る。
「さぁ、こい!」
ノリノリのリリちゃんが、移送車両の前で仁王立ちしている。
これから、ネームド【ガイア】が連れられてくるのだ。
ガイアはずっと拘束され、【絶命】、【消失】【炎帝】いずれかのネームドが交代で監視していたらしい。
それだけの厳戒態勢。
特務機関メンバーが勢揃いする中、そんなワクワクしたテンションなのはリリちゃんだけ。
参謀本部のスティーブン・ウルフ准将とアッシュを先頭にした一団がやってくる。
ロジェ達に両脇を抑えて、連れられているのが、拘束衣を着たガイアだ。
少し後ろには万一に備えての【炎帝】デイビッドさん。
私達はウルフ准将の到着に合わせて敬礼を行う。
ワンテンポ遅れて、リリちゃんも。
基本的にリリちゃんは軍の階級に疎い。
いや、既にネームドなどという、軍階級の理の外に出てしまっているんだけど、そうなる前からちょっと適当なところがある……
基本的に誰でも名前で呼ぶし……
でも、リリちゃんだから、許されているので、そこも凄い所だ!
話は逸れたけど、ようやく、出てきたガイアは髭が伸び、やつれたように見える。
しかし、その眼光は歴戦兵士であることが、一目で分かるほど鋭い。
私達を認識し、どうするか思考しているようだ。
みんなの警戒感は何処吹く風。
リリちゃんは無防備にガイアに近付く。
「ちょッ、リリーナさん?」
拘束衣と魔力阻害の手錠で拘束しているとはいえ、相手は【炎帝】と渡り合える程の実力者。
ウルフ准将も戸惑いを隠せない。
「ほっほーう?
髭が伸びているけど、うんうん。分かる分かる!」
「なッ!?おまッ……!?」
しかし、ガイアの反応は、驚き。
いや、驚きの表情から……あれは…………恐怖かな?
「ア、【隻眼の死神】……」
リリちゃんの名は、メラリアにも轟いていたようだ。
「ほっほう。ガイアくんにも知られているとは嬉しい限りですなぁ!
フッフッフ……」
リリちゃんがよくわかんないテンションのまま会話している。
「な、何故あんなにシーランを撃てたッ!?」
ガイアが少しパニックになっている。
リリちゃんを見てからのガイアの態度が明らかに変わっている。
「え?シーラン?
アレは魔力があれば撃てるでしょ?」
「なッ!?……は!?」
ガイアが言葉に詰まっている。
シーランの消費魔力量は大きい。
メラリアもシーランを撃ってきたのがリリちゃんだと認識していたんだろう。
それで、リリちゃんの魔力量がおかしい事に気が付いたかな?
ガイアは小細工している。とか思ってたかもしれないけど、種も仕掛けもない。
ただ純粋に魔力量による暴力。
あぁ、ガイアはアレに巻き込まれたんだもんね。
トラウマになるのも分かる。
生きてるだけで、よっぽど凄いよ……
「なに?どしたの?
あぁ、私が小さいからってびっくりしてる?
それとも惚れちゃった?」
その言葉にアッシュがピクリと動く。
私は見逃さないよ?
「ごめんね。期待には答えられないよ」
そう言ってガイアの肩を叩くリリちゃんに、ガイアの思考が全く追いつけていない。
あのガイア相手にまるで昔からの顔見知りのような軽いノリのリリちゃん。
もういいのか、ガイアから離れ、ウルフ准将を見る。
「ふふッ……。
では行きましょうか。
予定通りリリーナさんはこちらの車両にでいいですか?」
ウルフ准将も笑ってしまっている。
「はいっ!お任せ下さい!」
リリちゃんを見る、ガイアの目に畏怖の感情が伺える。
ガイアの車両にはネームド4人とアランさんに私が乗車する。
逃げる隙などどこにもない。
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