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FPSゲーマーの転生先なんて決まってる!~ストーリーモードなんて覚えてる訳ない~  作者: 栗飯


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167.本当の敵



side:エンド


重たい沈黙が、部屋を支配していた。


グラスも使わず、ボトルのまま呷るウィスキー。

その度に喉が焼けるように熱くなる。


ソファに沈み込む男。

虚ろな目は、もう何も映していなかった。


コン、という乾いた音。


扉が開く。


「……また、酒を呑んでおられるのですか」


入ってきたのは、スミン。

エンド直属の部下である。

部屋の惨状を一瞥し、静かにため息を吐く。

散乱した瓶、倒れた椅子と散らかった書類。

その中心にいるのが、エンドである。


「……もう来るなと言ったろ」


短く吐き捨てる。


スミンは返事をせず、黙々と片付け始めた。

割れた瓶を拾い、テーブルを整え、床を拭く。


「……身体壊しますよ」


「関係ねぇだろ……」


「関係あります」


スミンはすぐに反論し、エンドの眉が僅かに動く。


「まだ言うか」


「言います」


手を止めずに、スミンは続ける。


「隊長は……こんなところで終わる人じゃない」


ピタリ、と空気が止まる。


「うるせぇぞ。……お前に何が分かる」


低く、唸るような声。


「分かります!

分かるに決まってるじゃないですか!!」


スミンの感情が露わになる。


「私達をここまで叩き上げてくれたのは誰ですか!?

貴方が何もなかった私達に、居場所も!戦い方も!

全部、教えてくれたんです!

ここ10年以上ずっと一緒でした!

貴方が話してくれなくても、貴方がやろうとしていたことは分かります!!」


エンドは顔を上げない。

だが、スミンは止まらない。


「貴方はずっと……

奥さんと娘さんを生き返らせるためにやってきたんでしょ!?」


「黙れッ!!」


エンドの怒号。

持っていたボトルが床に叩きつけられる。


「俺がお前らを育てたのはなぁ!!

全部……全部、俺のためだ!!

傭兵共は使えないから、使える奴を育てた、それだけのことだ!

お前らは俺の目的のための駒に過ぎない!」


握る拳が震える。


「生者の柩であいつらをっ……!」


込み上げる感情に、エンドの言葉が詰まる。


「そのためだけに……!!」


スミンは、静かに息を吐いた。


「そんなこと知ってますよ」


「……んだとッ?」


スミンを見つめるエンド。


「最初から、全部」


「……」


「それでもついてきたんです。

どんな理由であれ、隊長が拾ってくれなければ、私達は5人とも路上で野垂れ死ぬ運命でした」


「「そうっすよ」」


いつの間にか部屋に入ってきていた同じくエンド直属の部下。

ラックとサックの双子の兄弟が声を揃えて同意する。


「だから、俺らは感謝してるんす」

「だから、隊長の役に立ちたいんす」


「貴方の目的のために、私達は死ぬ覚悟でついてきました……

そして、これからも……」


スミンの声が震え、涙が零れる。

それでも、エンドから目は逸らさない。


「でも……地下で二人が死んだ時……」


「……」


「隊長が何も感じなかったなんて、嘘です!」


ズキリ、と。

心臓を抉られたような感覚。

エンドは何も言えなかった。


「……っ」


否定、できなかったから……


あの時の光景が脳裏に焼き付いている。

地下の探索をした際に死亡してしまった2人。

スミン達と共に12年間育ててきた5人の部下のうちの2人。

苦楽を共にした2人はエンドの指示の元、用途もよく分からないアイテムを入手する時に死んだ。

しかもだ。

生者の柩を起動させた時、地下に埋葬したはずの2人が動き出し、もう一度、殺すことになった。


……その2人のこと。


そして、目の前の3人はいつの間にか、エンドの心に居座っていた。

間違いなく、枯れたと思っていた、心が傷んだ。


「埋葬した2人が立ち上がった時の歓喜と、違うと分かった時の失意。

それでも……

再び殺さなければならなかった……

全部、分かってます!」


「…チッ……」


スミンに全てを言われ、エンドの力が抜ける。

ソファにドカッと座り直す。


「……また、やり直しましょう」


小さな声。


「全力で、サポートします」


スミンの真っ直ぐな目……

トクン、と。

エンドの中で止まっていた何かが、動く。


「……………………はぁ

……俺は、な。

……あの2人をまた殺した時に、気付いちまったんだ」


エンドは手元の写真を再び見る。

その目はもう、虚ろではなく、慈愛の目……


「死んだ人間は生き返らねぇ……」


エンドの言葉は重い…


「妻も、娘も……な……

ハッ…………吹っ切れるまで15年もかかった…」


「はい」


スミンが優しく返事をする。

エンドは深く息を吐く。

アルコールで濁っていた視界が、少しずつ戻ってくる。


「今になって、分かったこともある。

ソロモン・エリオットを知っているな?」


「はい、ルンドバードの軍務卿ですね。

実質上、ルンドバードの支配者です」


「そう、そいつだ。

【生者の柩】についてだがな。そいつから聞いたことなんだ」


「「「ッえ!?」」」


「……昔、奴と取引したんだ。だが、吹っ切れた今だから分かる。

……あの野郎は、俺を利用して、生者の柩を起動させ、厄災を起こしたんだ」


「……ルンドバードに嵌められたってことっすか?」


「そうだ。

今、ルンドバードとは同盟関係になっちゃいるがな。

アイツらも敵だ!」


「ルンドバードといえば。

今日、へんな噂を聞いたっす。

ルンドバードが有力者の家族を人質に取って、命令してるって……」


「なんです?その噂?いくらなんでもありえないでしょう」


ラックの確証もない発言にスミンが反論する。


「でもでも、隊長だって、レストデーンからアルステリアに攻め出すのは愚策だって言ってたし!」


「んー、その失策の罪を擦り付けるため。とか?」


「……」


部下たちが話している中、眉間にシワを寄せ、エンドは考え込む。


(妻と娘の死因は爆死。

首に付けられた爆弾が爆発したことによるもの。

あの時、俺を殺そうとしたアイツは、アルステリアの刺客だった。


……本当か?


生者の柩はルンドバードからもたらされたもの……

何故知っている?


ルンドバードだけが得をしてないか?)


エンドの中で…………点だった情報が結ばれていく。


「まさか……全部!?」


「え?噂って本当なんすか?」


「そうじゃねぇ!」

思わず声を荒らげるエンド。


「……そうじゃねぇんだ」

一転、トーンが落ちる。少し震えた声。

それは怒りによる震え。


「あの野郎……

全部、奴らの……

ルンドバードの計画か」

少しでも面白いと思って頂けれれば、

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