169.帰省
side:シア
ガイアの移送は滞りなく終わった。
戦闘に集まっていた私達のノーステリアへの帰還に合わせたのだから、戦力は充分。
今のメラリアにすぐそこまでの戦力を出せるはずもなく、ガイア自身も大人しいものだった。
道中、何故かガイアにやたらフランクなリリちゃんが話しかけていること以外、おかしな所はない。
そういえば、リリちゃんは【絶命】ショーンさんにも最初から……
そう、まるで旧知の仲のような接し方かもしれない。
ネームドだから?
いや、【消失】オルガさんには憧れ?みたいな感じだし、【炎帝】デイビッドさんには……
なんだこいつ?みたいな態度だ。
一概に一緒ではないけど、なんだろう?
やっぱり、ネームド同士の親近感でもあるのかな?
んー……
私もネームドになれば、もっとリリちゃんの役に立てるかな?
もっと強くならなきゃ。
「報告は以上になります」
私達は長官室に来ていた。
ショーンさんが長官に移送の報告を行ったところだ。
「皆、ご苦労だった。
この勢いでクウィントンも奪還と行きたい所だが……
アルステリアは当面の間、レストデーンの復興に忙しくなる。
対メラリアの要だからな。
まずは皆にはしっかり休息を取らせるようにな」
「了解です。俺も流石に今回は堪えました」
「ショーンさんも歳ですからね。あれ?白髪増えたんじゃないですか?」
「だとしたらお前のせいだよ」
「なんでですか!?こんなにも心配しているのに!」
「顔がニヤついてるぞ!俺も分かるからな!」
「凄いですね。素晴らしいレスポンスです」
「れ、レスポンス?」
「あっ…………老化ポイント1点追加です」
「やめろ!変なポイント付けるな!」
「まったく。コイツらはずっとこんな感じか?」
リリちゃんとショーンさんのやり取りに、やれやれといった様子の長官。
「はい。大体こんな感じです」
目線が私だったので、私が答える。
「何故うちのネームドはこう、癖が強いんだ……」
長官はそう言いながらも笑っていた。
まだ長官室には数えるくらいしか来ていない私は若干の緊張をしていたが、少し和らぐ。
きっとリリちゃんは狙った訳じゃないんだろうけどね。
今回はなんで自分も長官室に呼ばれたのか分からない。
周りはネームドの皆さんと長官と秘書アリスさん。そして、アランさん。
勧められるがままに、わざわざ長官が入れてくれたコーヒーを飲む。
苦い……
「ふふッ、ブラックは苦いだろ。砂糖かミルクを入れたらどうだ?」
顔に出ていたようで長官から提案がくる。
リリちゃんはブラックだ。って言ってたから同じのにしたんだけどな。
「じゃ、じゃあ、ミルクを……」
「それがいい。お前達の年代だと、あまりコーヒーを飲む機会もないだろう」
「そうですね。初めて飲みました」
「俺も長官のしか飲んでないっすね。ここに慣れると市販のはもう飲めないですよ」
アランさんの話に長官は上機嫌だ。
「ハッハッハ。そうだろ?豆から違うからな」
ミルクを入れたらかなり飲みやすくなった。
美味しいかも。
「さて、アランとシア。今回残って貰ったのには理由があってな」
なんだろう?私とアランさんに?
「お前達は既に、ネームドに近い。いわば準ネームドといった所だ。
大量のゾンビ殲滅と【スペクター】の討伐。
申し分ない戦果を挙げている」
私が準ネームド!?
驚きと嬉しさで心臓が跳ねる。
「そこでだが……
2人にはネームテストを受けてもらう」
ネームテスト!
遂に私にもこのテストが
文字通り、ネームドになるために必要なテストだ。
このテストに合格した者に二つ名、新たな名前が贈られる。
色々とイレギュラーなリリちゃん以外は全員がネームテストを行っている。
「おぉ、懐かしいな」
「え゛!?」
いつの間にか話を聞いていたショーンさんと、驚きの表情をしたリリちゃん。
「おめぇは大丈夫だ。
関係ねぇから、大人しくしてろ」
学校では習わない。
私も聞いていただけ、そもそもこうやって声をかけられることでしか、受けることも出来ないテスト。
リリちゃんが知らないのも無理ないよ。
私は?と言いたげなリリちゃんの頭をショーンさんが抑える。
「ネームテストは1週間後の予定だ。
2人とも持てる力の全てを出せるように、調整しておけよ」
遂にネームドへの道が見えるところまできた。
ネームドになれば、ようやくリリちゃんに肩を並べて戦える。
5年前のクウィントンの時のような事は繰り返さない。リリちゃんの力になるって決めたんだ。
「いやー、シアもネームドかぁー」
「リリちゃん。気が早いよ?」
長官から話があった帰り道。
リリちゃんがもう合格した気で話す。
私は対照的に、緊張がふつふつと湧いてきているのだけど、大丈夫かな?
「そんな不安そうな顔してー。
テスト受けれるってだけでも、実力を認めて貰えてるってことだよ?」
そう言ってリリちゃんが私を抱き締めてくれる。
あったかい。リリちゃんの匂い。
お胸はあんまりないけれど、どうしてか凄く安心する。
「それにショーンさんから聞いたけど、アランさんはもう2回受けてるらしいよ?」
「え?そうなの?」
「うん。実力を見るものだから、別に回数制限もないってさ。
とりあえず、全力でやるんだって。
……身体測定みたいなもんだね」
そう…なのかな?
でも、気負う必要はないんだね。
今は焦っても仕方がないね。
「そうだね。
うん!そうと決まればなんかお腹減ってきちゃった……」
「あ!私もッ!5年振りだよ!5年振り!!
ノウレアから帰ってきて、ようやくの家だよ!」
「そうだよ。帰ってきた日は急だったから、そのまま寮だったもんね。
お母さんもルナリアも楽しみにしてるって!!」
「今日はリサさんがご馳走様用意してくれてるんでしょ!?早く帰ろー!」
「私もお母さんの料理久しぶり。
帰ろー!」
私達は足早に帰宅する。
お母さんと妹のいる我が家に。
ノーステリア軍基地からはちょっと距離があるけど、明日は休日だしゆっくりできる。
「ど、どうしよう。なんでか緊張してきたかもッ!?」
「ふふッ、あまりに久しぶりすぎて?」
「そう!!」
今度はリリちゃんがソワソワし始めていた。
久しぶりの帰省。
お母さんは絶対泣くね。ルナリアは大っきくなったから、どうかな?
まもなく家が見えてくる。
「ッ!?」
リリちゃんの動きが一瞬止まる。
ふふッ……思い出してるのかな?
この辺はもう懐かしい景色ばかりだろう。
リリちゃんが走りだすのに合わせて、私も走りだす。
さすがリリちゃんだ。
足が速くて少し離されるけど、もう家まではすぐそこだ。
あ、お母さんもルナリアも家の前で待ってたんだ。
2人の前で止まったリリちゃんに追い付いた。
「リリー……よく戻ったね……」
お母さんの目にはもう涙が浮かんでいた。
「う……ん……」
対するリリちゃんの目にも涙が浮かぶ。
「リリ姉……死んだかと思ったよ」
ルナリアも涙を必死に堪えているが、溢れていた。
「そうだよ。リリー、もういなくならないでおくれ」
「リリねえ゛ぇぇ」
お母さんが泣きながらリリちゃんをギュッと抱き締める。
ルナリアもそれに続き、3人が抱き締め合う。
強く存在を確かめるように……
「ゔッ………ゔん゛……」
そういえば、私でもこれまで見た事ないリリちゃんの涙。
5年振りの再会に感情が込み上げたようで、涙は大きく頬をつたっていた。
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side:リリーナ
私は感情が追い付かず、声が出ない。
涙が溢れて……溢れて……止められない。
どうしたらいいのか分からなくて……
どうして……
どうして、赤くハイライトされているんですか?
リサさん……
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