161.1人の弊害
私の影からアランさんが現れる。
待ちに待った弾の補給の時間だ。
「アランさん、遅いですよぉ」
嬉しくてついついちゃちゃを入れてしまう。
「これでも急いだんだぞ」
ドサリと置かれるのは大量の弾薬。
お陰で弾切れの心配はもうしなくて良さそうだ。
ハンドガン【オズ】は仕舞い、アサルトライフル【カルカロス】を取り出す。
「あ、来ます!」
「え?ちょ、ちょッ!?ヤバいヤバい」
カオスドラゴンが空気を吸い込み、既にその口腔は灼熱に染まっていた。
「あれは大丈夫ですよ」
展開される、半透明の光壁。
アランさんごと包み込むように広げる。
次の瞬間、ブレスが直撃する。
ゴォォォォォオオオ!!!
視界が赤く焼き潰される。
瓦礫が溶け、地面が爆ぜ、周囲の空気すら歪む。
「うおおおお!?マジでか!!」
アランの叫びは、轟音の中に掻き消えた。
だが、熱は届かない。
シールドの内側は、まるで別世界のようだ。
やがて、炎が途切れる。
「いやーゾンビも片付いて、補給も完了。一石二鳥ですね」
「……は?」
ポカンとした顔のアランさん。
「じゃ、アランさんは下がってゾンビをなるべく減らしてください。
急いで下がらないと、ブレス以外はあの膂力で吹っ飛びます。私もそこまでは守れません」
「お、お、お、おう」
やたらと、「お」が多かったアランさんが影に沈む。
さぁ、反撃の時間だ。
ガガガガガガガガッ!!
乾いた連射音。
カオスドラゴンの肩口に、弾丸が叩き込まれる。
リロードを終えたアサルトライフル【カルカロス】。残弾は満タンだ。
グォォオオオ!!
苛立ちを露わにするカオスドラゴン。
巨大な翼を叩きつけるように羽ばたかせ、一気に距離を詰める。
それでもこちらに攻撃してくるあたり、厄介な奴だな。
振り下ろされる前脚。
前脚の攻撃はシールドだと、吹っ飛んでしまうため、なるべく躱す。
二歩、滑るように横へ。
地面が抉れ、衝撃が爆ぜる。
間髪入れず、尻尾を横薙ぎ。
回転しながら跳んで、躱す。
着地と同時に、再び射撃。
だが……
ガアアァァ!!
横合いから、ゾンビ。
「邪魔!」
一発。
頭部を撃ち抜いて倒す。
しかし、その一瞬。
ドゴォン!!
再び振るわれる前脚。
動いて回避。
「チッ…!」
さらに背後から、足音。
ゾンビだ。
前からはドラゴン。
左右後ろはゾンビ。
カオスドラゴンの攻撃を避ける。
カオスドラゴンの攻撃を避ける。
カオスドラゴンを撃つ。
ゾンビを撃つ。
また、カオスドラゴンの攻撃を避ける。
クソぉ……
ゾンビが多過ぎてカオスドラゴンへ、ほとんど発砲出来ていない。
カオスドラゴンの広範囲攻撃で周囲のゾンビごとぶっ飛ばしてもらい、その空いたスキマで発砲する。
逆に言えば、その時しかチャンスがない……
「ははッ……攻撃する隙が全然ないじゃん……!
こりゃー時間がかかる、なっ!」
1番近いゾンビを足場にして、飛び上がり、カオスドラゴンの爪を躱す。
足場に使ったゾンビはもれなく爪の餌食になって、上半身が吹き飛んだ。
カオスドラゴンの攻撃を食らえば即死。
ゾンビに噛まれても感染して死ぬ。
あれれー、おかしいぞぉ。
ゲームの方が回復出来る分、難易度易しいかもぉ!?
ちゃんと、ゾンビも処理しながらだと、ホントに攻撃チャンスが少ない。
グオォォ!!
カオスドラゴンがイラついたように咆える。
「うるせぇ!こっちだってムカついてんだよ!」
八つ当たり気味にゾンビを蹴り飛ばし、纏めてゾンビを転ばせる。
すかさず、カオスドラゴンの弱点部位へ、銃撃だ。
肩口を撃たれたカオスドラゴンはまたブレスのため、息を吸い込む。
その炎はあらゆるものを燃やし尽くす。
でも、私のシールドは破れない。そして、周りのゾンビは死ぬ。
やはり、ブレスとは、一時的に奴を撃てる絶好の機会である。
「ハハッ!こいやァ!」
私が笑ってシールドを張ると、あろうことかブレスをキャンセルしやがった。
フェイント!?
前脚が来る。
私はシールドごと吹き飛ばされる。吹き飛ばされたシールドは直線上にゾンビも巻き込みながら血に染まった。
私はそのまま坂の法面に激突、シールドの中だけど、その衝撃は受ける。法面の整えられていた石畳は私を中心に亀裂が入り、その衝撃の強さを物語っていた。
イッタイなぁ……
私が踏ん張ったくらいじゃ、簡単に吹っ飛ばされる。
あんにゃろ…
私がブレスを誘ってるのを理解してきやがった。
パターンが決まった攻撃だけじゃない。学習している。
じゃなきゃ……
追撃のために追ってこないもんな。
見上げると私から少し離れた空中に現れたカオスドラゴンがいる。
その豪炎が今度こそ私目掛けて放たれる。
視界が全て炎に染まる。
……何も見えない
否。
私の場合は見えている。
カオスドラゴンが少しずつ近付いていた。
そして、ブレスが終わると同時に剛腕が振るわれる。
ブレスが効かないことを想定した攻撃。
やっぱり、このドラゴン、相当に頭が良い。
見えていた私は叩き付けるように振るわれた腕を躱して、肩口を撃つ。
グキャァァアア!!
悲鳴のような声を上げて転がるカオスドラゴン。私はここぞとばかりに追撃。
見えた腹部にある腐食部分へ銃撃を加える。
カオスドラゴンは起き上がり、再びこちらを睨みつける。しかし、その姿勢は肩口を庇っているようだ。
ゲームと違って、頭が良い代わりに、ダメージを無視ってこともない……かな?
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side:ショーン
「なんだぁ、ありゃ!?」
バカでかい咆哮の後、ゾンビが全てリリーナのいる方へ。なにかでかい生き物のいる方へ向かって進むようになった。
俺達は救出した市民の搬送班を残して、ゾンビの向かう先へ来た。
「あ、あれはドラゴンなんですかっ!?」
マジだよな?まさか、ドラゴンとは思わなかった。
「す、すげぇッ!」
「カッケぇ!」
馬鹿野郎共のテンションが上がっている。
男ならその気持ちも分からんでもないが……
「お前ら……」
分かってるのは、イーノスくらいか?
次の瞬間、凄まじい業火が口から吐き出される。
建物はすぐに燃え尽き、崩れ去る。
あまりの迫力にテンションの上がっていた奴らが押し黙る。
そう、あれは敵。
俺達、特務機関が倒さねばならない存在……
「分かったか?お前ら、今からあれと戦わなきゃいけねぇんだぞ?」
自分で言ってて嫌になる。
あんなのどうやって倒せと?
ブレスが途切れ、建物が崩れ、ドラゴンが何にブレスを撃っていたのかが現れる。
……リリーナ。
薄々感づいてはいたが、マジかよ。アイツ。
ドラゴンの攻撃がどれだけヤバいかは、周りが教えてくれている。
ゾンビは肉塊となり、木片は粉砕。
コンクリートがバターのように抉り取られている。
リリーナはそれを躱しながら、戦っていた。
戦場のレベルがそこだけ明らかに別次元だ。
すると……
「うぉおお!!」
「撃て!少しでも減らせぇ!!」
叫び声と共に銃声が近付いてくる。
振り返るとアランとロジェがゾンビを倒しながら走っていた。
「アラン!!」
「ッ!?ショーンさん!!」
アランが影移動で俺の側へ来る。
「ショーンさん、手伝いに来てくれたんですね!」
「お、おう。状況は?」
「話せば長いんですが……」
「ショーン!状況は?」
アランが言いかけたのと同時、オルガ達も合流する。
あれだけ目立つのだ。オルガも俺と同じ思考だろう。
「オルガさんも聞いてくださいッ!
手短に言います。
この事態を収めるためには、あのドラゴンを倒さなきゃいけません!
今はリリーナがドラゴンと戦ってますッ!」
アランの息が上がっている。
俺達ネームドに近いレベルのアランが、だ。
ずっと全力で動いていたのか?
「何とかして、リリーナがあのドラゴンに集中できるように…俺達はゾンビを倒さないと……あぁ、もうあんなに……」
アランはここからリリーナを見る。
更にアイツの周りにはゾンビが大量にいた。
あぁ、なるほど…
ゾンビの処理が追いついていないんだな。
そう見ると、確かにリリーナはドラゴンに加えて、ゾンビの処理も並行して行ってる。
流石のリリーナでも、ほとんどドラゴンを撃てていない。
ゾンビはレストデーン中から集まっている。そもそもアラン達2人で何とか出来る量ではない……が、2人で少しでも減らそうと戦っていたようだ。
「アラン、俺達をリリーナの元まで送ってくれ!援護しに行く!」
「はいッ!」
あのドラゴン、明らかにヤバいが、殺らなきゃいけないんだろ!?ならやるしかねぇじゃねぇか。
俺達がリリーナを援護する。
……いくら“死神”でも、一人で戦わせる訳にはいかない。
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