本当に元勇者になりました。
試しに転移魔法を使って貰ったら本当に魔王の墓が出来ていた。
プライベート座標の事はまだ誰にも言ってなかったけど早急に伝えておいた方がいいだろう。
最新の登録では俺たちの住所は自治区にあり、開拓事業は魔王の墓の建設作業に変わっている。
王太子殿下の仕事が早すぎる。
元勇者の箱庭については国境外の建築物なので詳細はわかりかねます。
どこの領地か不明瞭なので勝手に触らないようにねって感じで処理をされていた。
ちょうどファリアがいた村と箱庭の中間に魔王の墓があるので、よっぽど詳しい人間が調べない限りここが魔王の城の跡地だと納得するだろう。
それにしてもキャシーは本当にただの村長の娘なのか?
このままだと国王を失脚させるのも時間の問題みたいだぞ?
とりあえず明日から紋章を返すまでは自治区にいた方がいいかもしれない。
次の日、勇者の箱庭が表に出せないのでギルド自治区に事務所が必要だと、カナリアとミューゼルは物件探しで奔走している。
俺とファリアはいつもの宿を拠点にギルドのランク上げをすることにした。
箱庭には神父が残っているが、魔剣ブレイカーがこっそり隠してあるので何かあれば後で俺にわかる仕組みだ。
リアルタイムにわからないのは仕方がない。
王太子殿下からの報告から3日後、キャシーが自ら俺の元に現れた。
念のためファリアにはクローゼットに隠れて貰い応戦する。
「ねえ、今どんな気分?」
「どんな気分って最悪だよ。立ち直れない」
「私に好きって言うなら許してあげるけど?」
それは無理なので勇者の紋章をキャシーに投げつけて返事の代わりとする。
正直コイツとは口を聞きたくない。
「ムッかつくー!何?何でそんな態度デキるのよ?」
キャシーは地団駄を踏む。
「何でコバルトはキャシー様の素晴らしさがわからないんだ?」
「キャシー様は聖女なんだぞ?」
「俺たちは今まで魔王を倒したって騙されていたんだ。真の魔王が目覚める事を一緒に防ごう」
かつてのパーティーの仲間が完全にキャシー信者になっている。
聖女ということで白のドレスを着てはいるが、レースとフリル満載でリボンや花のモチーフが飾られて相変わらず派手だ。
とても聖女には見えない。
「謝るなら今のうちよ。貴方になら国王の地位をあげてもいいわ」
さあ土下座して謝りなさい。
私に傅きなさい。
早く泣いて謝るのよ。
そんな心の声がだだ漏れだが無視する。
「こんなことされて好きになるヤツがいるわけないだろ。ばっかじゃねーの」
言われっぱなしも悔しいのでしっかり言い返す。
「ほら、さっさとそれを持って帰れ。しっしっ」
「なんで?何で折れないのよ!?」
ヒステリックにキーキー怒っている。
このまま居座られても面倒なので俺は悔しがる演技をしようとした。
「確かにこれを失ったら俺はもう終わりだ。悔しくないわけないさ」
…無理だった。声に感情がこもらない。
「私に愛してるって言ってよ。そしたら許してあげるんだから」
「何もない俺なんかの愛に価値はありませんよ」
「そんなことないわ!」
何でこの女はここまで俺にこだわるのだろう?
多分同じことを何回か言っている気がするけれど、俺側でこれなら検討してもいいという条件を出す。
「じゃあスッピンを見せてくれて、ローライズのサルエルパンツをヒップハングで履いて素足にサンダルで告白してくれたらな考えてもいいかもしれない」
俺は素直にキャシーについて考えてもいい条件を言ってみた。
ここまでできるなら考えてもいい。
「…何それ!?私に死ねって言ってるようなもんじゃない。もうあんたなんか知らないわよ!」
スッピンを見せるのも、短足を晒すのも、太い足首を見せるのも全部そこまで嫌か。
今までもヒステリックだったがさらにキーキー高い声を出して怒ってキャシーは帰っていった。
「キャシー様をいじめるなんてなんてヤツだ」
「本当に最悪だな」
元仲間たちも一緒に去っていく。
コイツらも何でこんなに変わってしまったんだろう。
俺は誰もいなくなったドアに向かってため息をついた。




