ただ木陰で涼みたかっただけなのに
「いつの間にか育ったなー」
幸運の種を埋めた木がいつの間にか俺の背丈を越えていた。
「あっ、ルトさん。この木は神格種になりましたよ」
ミューゼルがとんでも無いことを言う。
元々この木は育てると実から希に幸運の種が取れる幸運の木だった。
ステータスアップアイテムだが、たまたま未使用のまま手元に残っていたので木陰で涼むのに丁度良いと埋めただけだった。
早く木陰で涼みたいという理由で成長促進効果がある精霊の涙を少しかけたが、そこから追加効果があるとは思わなかった。
「実は竜の涙を持ってたのでなんとなくかけておきました」
「私もせっかくなので天使の涙を少々」
幸運の種に精霊の涙をかけた段階では成長効果と幸運の種採取率微量アップ程度の効果であったが、さらにミューゼルが手持ちのレアアイテムを使った為凄い補整がかかり、さらにアリッサが天使の涙を持っていたので、幸運の木から神格化し今はよくわからない木になっているらしい。
鑑定するにも前例が無いものは難しいと言われた。
「でもまぁ、育ったんだしそろそろ枝を折って木を増やすか」
「元魔王の城から新たな聖地誕生なんて胸熱ですわ」
「いやさすがに聖地はどうかと…」
俺は魔剣の指示に従い剪定した枝を敷地内に刺していく。
加護が増えたので箱庭内であればこれだけで育つとのことだ。
開拓作業を終えて夕食の為自治都市に戻ると予想外の客人が来ていた。
「王太子殿下!?」
「しっ…今の俺は吟遊詩人のジョニーだ」
ついに国王派の旗色が悪くなって来たので逃げ出してきたらしい。
「しばらくウロウロしているが、お前に大事な話があって今日はやって来た」
なんと、昨日の今日で俺の勇者の紋章の剥奪が決まったらしい。
今は自治都市に住んでいることにしてあるので、しばらくの間箱庭には帰らずに自治都市に滞在し使いを待つように言われた。
勇者では無くなるが俺と国王との仲なので、代わりに国王の紋章が入った勲章を贈るという。
武勲をあげた臣下に日常的に贈られているもので、勇者の紋章程ではないがイザと言うときの身分保証程度には使えるだろうとのことだった。
「後、世界座標を書き換えて魔王の城の跡地に転移したらさっき俺が作った魔王の墓に飛ぶようにしたから気を付けろよ」
最後に、もうキャシーの勢いは止められないと肩を竦めてジョニーは何処かへと去っていった。




