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異世界転霊  作者: 日曜花田
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学園入学

 う~む、ヨは退屈である。

 あっちへふらふらこっちへふらふら校舎の中を漂っている。

 ゼロア本体は入学式の真っ最中なので、幽霊の私は一足先に学園内の探検中なのだ。

 しかし、なんにもないな~

 お、ここ資料室かな?

 獣皮紙は高く、紙は先史文明の物なので、木綿の布に絵や文字を書かれているものが多いのだが、ここには紙の本が沢山ある。

 ファントムレイス家にも紙の本があったが、あまり学術的なものは無かった。

 ここには貴重な本がありそうだ。

 幽霊の私は自由に入れるが、書庫の空気は煙で白い、香を焚いているのだ。

 よく見ると外から香を取り替える小窓もある。

 幽霊の私には影響は無いが、この部屋の酸素濃度はかなり低いだろう、香を焚くのは書物を守る為で、まず盗賊はこの部屋に入ったとしても、室内ではほとんど行動出来ないし逃げても全身に香の匂いを付けることになる。

 次に書物の敵である衣魚(しみ)や、ゴキブリ除けの為で香を焚き込めておくと、書庫から出してもある程度効果がある。

 ん、誰かが香を取り替えに来たようだ。

 「まったく、いくら新米だからってこんな雑用押し付けて・・・

 今日は大事な入学式だっていうのに・・・

 男と女は第一印象が大事だというのに、ああもう、こんなこと・・・ 」

 うわ~ なんかケバい女性がいた。

 化粧に慣れてなくて下手な化粧をしたうえに、高そうな生地で胸の開いた赤いドレスの目立つゼロアより頭半分ぐらい背の高い黄色い髪、金色ではなくタンポポ色の髪と瞳をした女性で、学園にいるという事は教師なのだろう、たぶん・・・

 大きく深呼吸をしている。

 「すぅ~ はぁ~ すぅ~ はぁ~

 よ~っし、おちついたっ!

 だいじょ~ぶっ! 

 相手は子供よ子供っ! 

 大人のわたしがあせることなんてなんにもないっ!

 相手は子供なんだからちょろいちょろい!

 あーっはっはっはっは! 」

 顔が青ざめて全身が震えている。


 これは駄目なひとだあ・・・

 幽霊の身では出来ることはなにもないので、見ていることしか出来ないが・・・

 見ていてもどうなるものでもない。

 「あー もうこうなったらっ! 」

 小さい赤い壺のコルク?の蓋を喰い千切るように開けると飲み干す。

 目が据わる。

 顔に赤みが差し、震えが止まる。

 彼女が呑んだのは酒らしい。

 「よ、よ~し! 」

 のっしのっしと、歩き・・・

 慌てて駆け戻ると・・・





 彼女は酒を飲み慣れていなかったようだ。

 彼女の胸には大きな名札が付いていた。

 『カイア・クムト・ザルファニア』

 知らない名前ではなかった。

 同姓同名の別人だと思いたかったが、ザルファニア家は三代前にはブラッドハンド家傘下で港湾都市に在した男爵だったらしい。

 何故知っているかというと、彼女がゼロアの婚約者だったからだ。

 ゼロアの父親オーストが決めて、さらに婚約破棄したのでゼロア本人は知らないが、半年間ゼロアの婚約者だった。

 なかなか面白い女性のようで、ちょっと離れた所から見ているぶんにはよいが、ゼロアの嫁としてはゴメンナサイである。

 入学式の学園長の話を聞くのが面倒くさそうだったので、学校探検に来たのだが厄介な相手を見つけてしまった。

 のっぴきならない理由で化粧が崩れ、魔族のような顔になっていた。

 「うぇ~ぇ せっかくいっしょうけんめいお化粧したのにぃ~ 」

 べそをかきながら、顔を洗っている。

 一生懸命やっても、望む効果が得られるとは限らないという現実の見本だった。

 顔を洗って濡れた髪をまとめると、わりと美人だった。

 「あー もう急がなきゃ!! 」

 廊下を走る女教師の背中をなんとなく見ていた。

 ゼロアの学校生活が彼女と無縁である事を祈りながら。

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