新技習得
やっと帰った~
厄介な客が帰ってくれてほっとして浮かぶ。
幽霊だとばれないように人間のふりをしていたが、どうやら御客人には気付かれなかったようだ。
地面を歩いたり、ただ座っているふりをするのも実行している間はどうという事もないが、終わったと思った途端疲れた、肉体が無くてもこういう感覚はあるものだなぁ。
アンとマリーが卓上を片ずけている。
「あ、御茶は捨てないでね~
御庭の虫除けに使うから~ 」
うわ、あの御茶殺虫剤レベルだったのか。
「し~ちゃん ごくろ~さま~ 」
カルミアさんがアンとマリーの動きに目を配りながら、床で寝ようとするナッペの耳を引っ張って起こす。
ナッペは目を離すとすぐ寝ようとするらしい。
ほぼ全ての魔力を使ってしまったのだから、わからないでもないが、ナッペの魔法はコストが悪すぎる。
文字通りの必殺技で、威力の加減が出来ない、触れたら死ぬ。
ネクア嬢の魔法陣式なら再現は可能だと思うので、研究してみるようと思う。
・・・と、思ったのだが、ルルア嬢とリノス嬢が異論のありそうな、不満気な眼でこちらを見ている。
「ルルアちゃんは試験も終わったから『亀炎弾』の強化版を練習してもらおうかな、『亀旋弾』と『亀轟砲』のどちらかが良いだろう。」
『亀炎弾』というのは、肩に乗せた亀型ゴーレムの頸を筒に変形させて、あらかじめゴーレム内部に蓄えておいた炎を発射する魔法で、常にショルダーガードのように肩に亀型ゴーレムを乗せることによって即応性と連射機能を持たせることが出来る。
『ダイエ』と呼ばれることになった回転して飛ぶ亀型ゴーレムと組み合わせると、かなり凶悪な魔法となる。
ルルア嬢の父親のボルケノバース卿に使ったところ、流石に八傑の第二位だけあって余裕をみせてよけていたが、見た目ほど余裕がないのは体内のソーマの動きでわかったし、やたらと私を睨んでいたので間違いないだろう。
『ダイエ』で足元を狙うよう言ったのは私だったから、よけいにだろう。
ついでに『亀旋弾』は筒に螺旋条を刻んで直進性を高め、飛距離を伸ばす魔法で、『亀轟砲』は大出力で火炎弾を放ち、同時に反対方向に噴射炎を放つことで、発射時の衝撃を抑える(無反動砲)を魔法で再現したものだ。
どちらも魔法で再現するというのは、感覚で現実化するという事で、簡単ではない。
『亀轟砲』を、と言うので練習方法を教えたらすぐに外に行った。
説明は簡単で跳び上がった状態で両肩から前後に発射と噴射を行い、バランスが取れたら、つまりその場から移動していなければオッケーということで上手くいったら威力を上げてゆくという方法である。
『亀炎弾』は充填直後で七発、最終的にはその七発分を左右一度に発射して、移動しないのが理想である。
ルルア嬢が出てゆくと、リノス嬢が私の前に立って笑っていた。
次は自分の番と言いたげに。
「ないよ。」
「は? 」
「マークツーの威力を上げる方法は二つ、一つは武器の性能を上げること、角の硬さと強度を上げる。」
「かたさときょーどってなんだ? 」
「硬さは貫くとき必要なもの、強度は貫いた時折れたり潰れたりしないためのもの。
貫いた後『あれ』を踏めば獲物の動きは鈍る。
貫く為の力と速さを鍛えるのがもう一つ。」
「しゃっ! あたしがあたしを鍛えればいんだなっ!
わかったっ! 」
「うん、理論上は硬いウロコを貫くことが出来れば、ドラゴンでも倒せるはずなんだ。」
「お~ どらごん どらごんかぁ~
なんかやる気でてきぃたぁ~っつ! 」
Mk-2に付けたのは、自転車に付いていたような空気入れを足で押せるようにしただけのものである。
真ん中の鼻角の先につながる管があり、獲物の体内に角を突き入れて、獲物の体内に空気を入れれば、ほぼ全ての生物にとって有害となり、とくに静脈に入ると致命的となる。
設計図はかなり前に描いてあったが、冶金技術がやっと使えるレベルになった。
さて、疲れた、疲れたは疲れたのだが、もう一人いる。
カルミアさんに一つお願いをして、ネクア嬢にナッペの魔法について説明を始めた。




