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異世界転霊  作者: 日曜花田
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障気乃谷

 鳥類で家畜化したものを家禽、そうではない野生のままのものを野禽と呼ぶ。

 ニワトリの野禽種に近い姿のものが魔鳥コカトリスの外見であった。

 違うのは羽毛の下に見え隠れする肌が鳥のものではなく爬虫類、おそらくは恐竜のそれではないかと思われる。

 この世界が地球と同じ進化をたどったかどうかわからないが鳥類が恐竜から、それも肉食恐竜から進化したのであれば、魔災という現象は先祖帰りという特殊進化を、爬虫類の毒を鳥類の強靭な肺を使って石化毒のブレスという補食能力を発達させたのかもしれない。

 この世界ではドラゴンの次に恐れられている魔獣で、走るのも速いので見つかったら逃げるのは難しい。

 騎鳥は、コカトリスから逃げることの出来る数少ない乗用生物だろう。

 馬車がこの谷に入れば、コカトリスの餌になるだけだ。

 私は馬車に戻った。

 「ヤバい、この先はコカトリスの谷だ。

 戻るぞ! 」

 「大丈夫です。

 このまま行って下さい。」

 ちらりとこちらを見て、蜘蛛をほどくと、糸繰りを始める。

 私の手の中の糸が消える。

 谷には馬の蹄跡で一本道が出来ていた。

 どんな優秀な山賊でも、この谷で工作の余地は無いだろう。

 ネクア嬢の手の中に糸で巻き貝が出来る。

 『蜃蛟』と名付けた魔法で幻を投影するだけの魔法である。

 冒険者の馬車の馬は、半魔獣で手綱から魔力を送ることで、持久力を高めることが出来る。

 だが、騎鳥のような速度が出せる訳ではない。

 「なんだこりゃあ・・・ 」

 馬車の屋根から、竜の頭が四つ。

 小さかったそれが馬車より大きくなる。

 小刻みに炎を吐いて、大きな眼で辺りを睥睨している。

 「お、お~い、嬢ちゃん・・・ 」

 「話しかけないでっ!

 集中してるんだからっ!!! 」

 ネクア嬢の綾取り魔法は、移動しながらの使用が難しいのだ。

 馬車に乗っているから辛うじて使えるが、走りながら使うのは不可能である。

 実験の結果、五十歩以内に転ぶ確率85%。 

 ただし、歩きながら、それも同じ場所をうろうろしながらの方が、魔力を集中させやすいらしい。

 そのときも、たまに転ぶ。

 ちなみに、蜃気楼を発生させるという伝説の生物はハマグリで、二枚貝なのだが、ファントムレイス領は内陸なので、貝など田螺タニシか、行商人の持ってくる飾り物の貝しか見たことがない。

 田螺は十~五十センチメートルのもので、たまに掘りの中を這っている。

 飾り物の貝は、髪飾りなどでこれも巻き貝ばかりである。

 二枚貝については、いくら説明しても理解してもらえなかった。

 ファントムレイス領の九割以上の者が一生海を見ることなく死んでゆくのだ。

 

 コカトリスが、岩陰から馬車のほうを見ている。

 アメイラス達冒険者は、爆裂式の魔導器を握って警戒している。

 私は、ラリアルさんの方に向かうことにした。

 そして、その行動を後悔することになる。

 

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