美姫?追跡
「急いで追って下さい。
この魔法は、十ケルト(1.9キロメートル)が索敵限界なんです。」
ネクア嬢の声に皆は馬車に向かい、私はラリアルさんを追った。
今現在私の言葉を伝える方法は無い。
しかし、ラリアルさんをどうすればよいか、貴族としての模範解答が私の中にあった。
ラリアルさんを殺し、ラリアル姫にすり替わった暗殺者として遺体を皇帝に差し出すのだ、ラリアル姫のラルブハイル家に大きな貸しをつくり、暗殺を未然に防いだとしてファントムレイス家の覚えもめでたくなる。
ラリアル姫の死体が男のはずはないので暗殺者という説明は信憑性が高い筈である、さらに皇家の使者が森狼の群れに襲われるという不自然な状況にも説明がつく。
これを皇帝に報告するときに内憂をほのめかせば、政敵を葬ることすら可能だ、下策だが・・・
こういう切り札を持ってますよとちらつかせて、仲間を増やし、敵になるのは損だと思わせる方がいい。
切り札は使ってしまったらそれで終わりなのだから。
・・・うわ、貴族って汚い。
でも、貴族として生きていくにはこういう考え方も必要なんだよな~
考え事をしながらラリアルさんを追っていたが、横でネクア嬢の魔力の糸が切れるのが見えた。
蜘蛛の糸は獲物を逃がさないとか言ってなかったかな?
仕方ないので私が掴む。
ラリアルさんや山賊達の『ソーマ』は記憶しているので十キロメートル離れても追うことが出来る。
ネクア嬢の糸は魔力を糸状にしているので幽霊体の私でも掴むことが出来る、出来るのだが、気色悪い。
表現しづらいが、糸から粘着質な何かが伝わって来るような・・・
まあ、そういう意図を持って放った糸であり魔力なのだから当然なのかもしれないが、出来れば触りたくない感触だった。
山賊達の向かう先に、とても嫌なものを感じた。
そういえば橋より下流に障気の谷があると聞いていた。
山賊達が騎鳥に乗っていた理由は速く走れるからだけではなかったようだ。
この世界の俗説に蛇は蛇の毒が効きにくく、虫は虫の毒が効きにくいとある。
鳥は鳥の毒が効きにくい。
障気の谷は石化毒の息を放つ魔鳥、コカトリスの巣だった。




