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異世界転霊  作者: 日曜花田
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美姫?誘拐

 男は肩で風切って歩くと表現されるように、肩で表現される。

 女性は腰を中心に動くことで艶っぽさを演出する。

 男性でも、その動きを真似する事で艶っぽさを演出する事が出来るらしい。

 女形という職業があることは知っていたが、会ったことはないし、古典演芸に興味もなかったのでどんな人がいるのかも知らなかったが、眼の前にいるのはその類いのようだ。

 「ことの起こりは十二年前、先帝が帝位を譲ってプライストベーム領の水没都市に静養に来た時の事です。

 当時四歳だった私は先帝に見初められ、現皇帝の妻の一人にならないか?  と・・・

 三代前に爵位を失った我がラルブハイル家に否などあろうはずもございません。

 ただ、問題が一つ、私が男だったということでございます。」

 それって致命的なんじゃあ・・・

 「されどこのような機会は希有のこと、なんとか女児を得ようと一族総出で頑張りましたのですが、女児を得ること叶わず、それどころか尿を赤く染めて死んでいく者が出る始末。」

 頑張り過ぎ、というか、無茶し過ぎ。

 でも、ちょっと羨ましい。

 「余所にふさわしい者がいないかと、探しましたが、これもなかなか、これといったものが無く。

 最後の手段として、迎えに来た御使者の方々を狼の群に私ごと襲わせて事なきを得る事としたのですが、不覚にも生き延びてしまいました。」

 それで狼抱えていたのか。

 「先帝のお尻は御歳の割に引き締まっておいででしたので、いささか皇帝のお尻にも未練はありますが、我がラルブハイル家を潰す訳にもいきませんし・・・

 ああっ、丈夫な我が身が恨めしい。」

 あの、まさか・・・

 「あら、ごめん遊ばせ、乙女となるよう育てられたせいでしょうか?

 どうしても殿方の方に食指が向いてしまって・・・

 お恥ずかしい限りですわ。」

 アメイラスさんとゼロアの下半身を、潤んだ瞳で行ったり来たりしている。

 「若い子のお尻も佳いものですけれど、冒険者の方も野趣にあふれてて素敵。」

 思わずお尻を押さえて後じさるアメイラスさん。

 ラリアルさんの瞳が逃げる獲物を追う肉食獣の輝きで、アメイラスさんを照準しました。

 うんうん、冒険者の皆さん、護衛なのだから守って下さいね、命の危険だけではなく貞操の危機からも。

 ラリアル姫のことは聞いた事があった。

 帝国一の美姫で、その美貌でラルブハイル家を子爵にしたとか、伯爵家の長男を狂わせたとか、鳥が落ちたとか、虫が鳴くのを止めたとか、川が流れを変えたとか・・・

 河原で毛布にくるまって、焚き火に当たっているだけなのに、華がある。

 河の水の流れが速い、雨期は一月前に終わったがそれはこの辺りまでのことで、北の方、水没都市の辺りではまだ雨期が終わってないのだろう。

 流れは速いが、あまり濁った様子は無い。

 ん、誰かが近づいて来る。

 いけない、水音のせいで誰も気づいていない。

 ラリアルさんとアメイラスさんは気づいたようだが、近づく速度が速い。

 相手は五人、騎鳥に乗って大弓を構えている。

 騎鳥というのは、大きな七面鳥といった感じで高さが二メートルくらい、馬より速く不整地走行が得意だが、持久力では馬に劣る。

 一キロメートルも人を乗せて走るとバテてしまう。

 替え馬、というか替え鳥が用意されているのがわかるが、その場所を伝える方法が無い。

 素早い襲撃だったのでこちらの迎撃態勢が整っていない。

 ネクア嬢が、こっそりと糸繰りをしている。

 なんとか二十秒時間を稼げれば・・・

 「私の名はラリアルと言います。

 皇帝へ嫁ぐ途中です。」

 そう言って干してある着物を示す。

 「私が人質となります。

 それで充分でしょう。」

 いきなり首領らしき騎鳥に毛布一枚で乗ると、手綱を奪って走り出す。

 あまりの素早さに、誰も何も出来なかった。

 いや、それでも糸が一本。

 ネクア嬢の手の中から伸びていた。

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