水難救助
ナッペというのは雑草の名前で、村の周りでよく見かけるギザギザの葉っぱで葉脈が紫の草だ。
あまり女の子に付ける名前ではない。
ゼロア君の事だ、適当に眼に入ったものの名前を言って、OKが出たので(それでい~や)にしてしまった可能性がとても高い。
おそらく、アンとマリーとネクア嬢はその事に気付いているだろう。
女性の空気を読む能力は男性のそれより遙かに高い(一般論です。たまに例外が居ます。)俗に女の勘と呼ばれているものを支えているのはこの能力であるともいわれる。
とにかく、ナッペの措置だが、ネクア嬢が自分の下女(メイドさんの事です。)にすると言い出した。
魔法学園に行くのに、帝都で誰か雇いなさいと、指示されていたらしい。
アンとマリーに教育を依頼していた。
ナッペ本人は、食事がおいしいと泣きながら食べた後、毛布で寝るよういわれて、そうしていたのだが一度寝ぼけた状態で起きると、馬車の隅っこで丸まって寝ていた。
二台並べた馬車の後ろに座って、帰って来ない仲間に呪詛の言葉と、女の名前とその容姿についてを交互に呟いている。
そしてその様子を、馬車の中から興味深々で聞いているアンとマリー。
ゼロアとネクア嬢は就寝中だが、ネクア嬢は自分の毛布を出てゼロアにしがみついている。
ゼロアは、しがみつかれて重いのかうなされている。
「重いって言っちゃ駄目 重いって言っちゃ駄目・・・・・・ 」
うん、それ寝言でも言っちゃ駄目なんだけど・・・・・・
虫の声を聞きながら、夜は更けていった。
翌朝、マリーが手綱を取って出発すると、昼少し前に河に差し掛かる。
古い橋が掛かっている。
先史文明によって造られた巨大な橋で十キロ程ある、その下の河は幅約三キロ大陸でも最大の河、芯河である。
ナッペが河を眺めている。
「こら、おべんきょうするの。」
ナッペが河を指指す。
「しんでる~ 」
・・・・・・・・・・・・・・・
「え? 」
私は、指差す方に飛んだ。
河原に異様な死体? があった。
下半身を水中に残し、紫に染めた絹の着物を蝶のように広げて倒れている。
美しく凛々しい顔の女性が・・・よく見ると森狼を抱えていた。
森狼? なんか絞め殺しているように見える。
ゼロア達がやって来る。
ゼロアが水を吐かせると、すぐに眼をしばたかせる。
「生きてる。」
「・・・まだ途中・・・ 」
ゼロアはとても冷静に蘇生措置を行っていたが、心臓マッサージも、マウストゥマウス法も、行う前に意識を取り戻したので、迷っているようだった。
念の為教えて於いて良かった。
青白かった肌に赤みが差してくると、とても艶っぽかった。
「水に濡れた服は体温を奪う。」
そう言って毛布を差し出す。
流石ゼロア君、良い対応です。
「ありがとう。」
毛布を差し出させたまま、服を脱ぎ始める。
慌てて顔だけ反対を向く。
「視ててもいいのよ。」
冗談ではない、彼女の着物には皇帝の紋と地方領主の紋が上下に並んでいるのだ。
これは、この女性が皇帝に輿入れするということだ。
そんな女性の肌を見て、不敬罪で断罪とか、御家取り潰しとか・・・
ま、まあ、私は幽霊だし、見てもばれないし・・・え?
「ついてる~ 」




