表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転霊  作者: 日曜花田
29/64

第四乃宿

 馬車に揺られながら並んで座っていると、ネクア嬢は眠ってしまった。

 「ははうえ・・・・・・」

 眠りながら泣いている。

 母親が亡くなった日からろくに寝て無いのだろう、ゼロアに抱き付いて眠っている。

 「重いな・・・ 」

 くぉらっ! ゼロア!

 それ女の子に言っちゃ駄目なNGワードの筆頭だからな。

 一瞬『一言伝』を使いそうになった。

 一年程前に開発に成功した能力で、実体化出来ない状態でも話が出来ないかと試していたら、ゼロアの頭の中に実体化した時の私の一部を置いてくる事で、一言だけ伝えられるようになった。

 腕一本分残しても、爪の先少し残しても一言しか伝えられない能力で、試しに二カ所に残してみたが、結果は同じ・・・いや、腕一本残した時は十日間、頭を重そうにしていた。

 これから今日を含めて五日、帝都までの道程に何があるかわからない。

 実体化出来ない状態では、『一言伝』だけが私が使える能力となる。

 馬車が揺れるたびに、ネクア嬢がゼロアに寄り掛かっていく。

 「重い・・・・・・ 」

 「ゼロアさまぁあ~ 女の子に『重い』なんて言っちゃいけないんですよぉお~」

 「殺されても仕方ないです。」

 え?! なにそれ?

 確かにこの世界では命が軽いけど、そんな事で殺されるの?

 キョドった顔で二人の男装メイドを見ると、二人はそれが常識であるかのように頷いてみせる。

 騙されてる、騙されてるからね。

 とはいえ、これから行く帝都では貴族の子女を相手にするのだ。

 ・・・確かに命に関わるかもしれない。

 そのへん、しっかり叩き込んでおかないと不味いが、私には出来ない。

 ゼロアには、ここ二年程礼儀作法を仕込まれてきたが、考えてみたら作法だけを機械的に仕込まれただけで、常識とか対人関係、空気を読む能力とか、そういったものは学習していない。

 ずっと土蔵の中で、一人だったのだ。

 人間関係は、人に揉まれて身に付けるものだ。

 生まれて九年間、二人の乳母と二人の乳兄弟と、サイドトゥース医師、そしてゼロアの父親ファントムレイス現当主、それがゼロアが交流を持った人間だ。

 ボルケノバースとエビルハンドの当主とは一度会っただけだった。

 父親はおよそ一年に一~二度会うだけだった。

 乳兄弟のアンとマリーは、五歳ぐらいからしばらく会わなくなっていた、二年前からは時々遊びに来るようになったが、男より女のほうが早熟だという現実を実感する事となった。

 私はいつも側にいたが、話すことは出来なかった、人間じゃないし。

 現在アンとマリーは、男性の冒険者の格好をしている。

 帝都までの道は必ずしも安全ではない、そのため女性である事を隠して男装しているのだ、幸い二人とも胸はあまり大きく無い。

 ネクア嬢は男装しても隠しきれない大きさである。

 ネクア嬢も随分と成長した、漏洩する魔力を操作して、漏らすのを部分限定することが出来るようになって、現在は胸当てに仕込んだ蜘蛛の糸に魔力を溜めている。

 糸繰りも格段に進歩していて、特に糸で獣をつくることで糸に溜めた魔力を吐き出すという魔力回路が構築された。

 それによって攻撃魔法が使えるようになったのだ。

 それも、糸による外付け魔力回路なので地水風火を自在に使えるようになったうえに糸を通じて直接魔力を相手に流し込む戦法をも確立していた。

 弱点もあるのだが、それはまたいずれ。

 魔力漏洩症候群のものが魔法を使えるようになった事は無かったので、特例として特待生となった。

 ゼロアも、過去に例の無い魔法現象として特待生に選ばれた。

 サイドトゥース医師の推薦である。

 皇家と固有魔法を持つ大公家は、入学試験無しに入学出来るのだが、ファントムレイス家は固有魔法を持たないので、これまでは入学試験を受けて魔法学園入学していた、父のファントムレイス現当主はゼロアの魔法がファントムレイス家の固有魔法となることを期待しているが、そのためには守護霊の存在が不可欠だと思うので、不可能だろう。

 もうじき次の宿場町に着く。

 ゼロアはネクア嬢と寄り添って眠っている。

 宿場町は、大人の足で日の出に出発すると、夕方には次の宿場町に着く距離になっている。

 だいたい四百ケルト(約七十七キロメートル)前後の距離に宿場町があったはずだ。

 宿場町というのは定住者が五十人以上の旅行者を相手に商売する町で、半径一ケルトの広場を中心に、街道沿いに宿がならんでいる。

 広場は外周八方位に皇家の家紋を記した石塔があり、広場は馬車のまま泊まったり、野宿したりすることも出来る。

 広場は、皇帝の直轄地扱いなのでこの中で犯罪を犯すと死罪にされても文句は言えない。

 人の足より馬車の方が速いので、陽はまだ高いが次の宿場までゆけるほどではないし、馬も休めなくてはならない。

 広場で馬車を停めると、いきなり囲まれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ