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異世界転霊  作者: 日曜花田
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石垣造記

 エビルハンド伯爵家は、ファントムレイス領の中で最も動員人数が多い、身体強化魔法を主体としているが、同時に武術も教え、町の警備巡回も行っているからだ。

 そのため、町の石垣作りも彼らが行う事になるというのが暗黙の了解としてあったのだが、彼等が先ず作ったのは池だった。

 その池に丸太を浮かべその上で闘う。

 決着はどちらかが水に落ちることで決することとなる。

 娯楽のない田舎町だ、派手に水しぶきをあげて落ちる様を面白いと人が集まって来る。

 そうなると、次はどちらが落ちるか賭を始めるようになる。

 無秩序な賭博は風紀を乱すと、胴元として名乗り出たのは、エビルハンド家であった。

 正確にはエビルハンド婦人である。

 とは言っても、実際に彼女がその場で仕切る訳ではなく、警邏隊のものにやらせている。

 町の者が小銭を賭けるだけなので、大した儲けでもないが、それでも五日に一度位は飲み代になる。

 勿論当日の当直は飲みにいけない、なによりの肴は、彼らの怨嗟の声だった。

 せめて一杯だけでもと追いすがる同僚を、自分の飲む分が減るといって蹴散らす姿は、町を守る警邏隊の日常であった。

 丸太の上で闘うのには混ぜてもらえるのに、飲みに連れて行ってくれないと、文句を言うのはリノス嬢である。

 『この娘を酒場に連れて行ったら殺します。』微笑むエビルハンド婦人に逆らえる者はこの町にはいなかった。

 酒といっても、蒸留酒も清酒もない、果実酒を店で出すのは帝都ぐらいだろうか。

 酒場でそんな話をしていた。

 穀物酒、それも濁り酒といわれるものが、この町の酒場で飲まれている。

 幽体には、口はあっても飲み食いはできない。

 酒かあ、私より女房の方が酒豪だった。

 石垣作りだが、まず石で竈を作ってもらうようにした。

 だいたい十ケスト(約十九メートル)ごとに、石と土で竈を作っていく、これを基準にして石垣を繋いでいく。

 ちなみにケストというのは初代皇帝ケストベルトの身長、より正確には帝都にある塑像の身長が一ケストになる。

 さらに言うと、ケットが百分の一で約1.9cm、ケルトが千倍で約1.9kmになる。

 この竈は領民に自由に使ってもらうようにした。

 石積みの石垣はどうしても石と石の間に隙間が出来る。

 地球と違ってどんな生物が脅威となるかわからないので、石垣に竈を埋め込む事で対応するのである。

 この世界の竈は木を燃料にして煮炊きをする。

 木を燃やせば必ず煙が出る。

 煙やすすは、殆どの生物の、特に小動物ならば致命的となることもあるものだ。

 熊を煙で燻して巣穴から追い出したり、蜂の巣を燻して蜂を殺したりするのは、昔から地球でも行われてきた。

 似たような方法を使えるようにするための竈である。

 ・・・・・・だったのだが、竈を領民に開放すると、食事の煮炊きや、酒の肴を持ち寄ったりの他に石を焼くようになった。

 焼いた石を丸太を浮かべている池に放り込むと、風呂になる。

 昼間は訓練用の施設兼賭博場、夜は公衆浴場、しかも混浴。

 しかし、町の人口から比べると、狭いだの小さいだのと、文句が多くなっていて、責任者となっているエビルハンド家は困っているようだ。

 石垣が完成したら風呂用の池を増やすと宣告して、領民を納得させた。

 石垣は、竈を繋ぐかたちで少しづつそれっぽくなっている。

 ただ、私の何かが、いやおそらく『ソーマ』が、次を予測している。

 それが来る前に石垣が形になっていると良いのだが・・・

 

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