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ルーメン  作者: 神響音音
サキュバスの家族編

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9/27

お別れ

「あの人は誰なんですか?」

「あ?母親だよ。お前わかって聞いてるだろ?」


今度は手のところにも穴が空いている布を被った僕は、ココさんと二人外を歩いていた。


「まぁなんとなくわ。でも、角無いんですね」

「……ああ」


どこか彼女の表情が曇った感じがした。

なのですぐに話題を変える。


「あの、どこに向かってるんですか?」

「あ?ああ。適当に話せそうな奴いねぇかなって」


適当に話せそうな奴?


「お、アイツにしよう。お前ちょっと話してこい」


そう言って彼女が指差した方には、身長170cmの僕の半分ぐらいしかない魔物がいた。

見た目はアルマジロっぽく、二足歩行でゆっくりとこちら側に歩いてきている。


「アイツは大人しいタイプで、知らない奴と話すのをを嫌う一族なんだ」

「じゃあ話しかけないほうがいいじゃないですか」

「バーカ。ちょっと話すのが目的で、長々話すことが目的じゃねんだよ」

「いや、だとしても僕言葉―」

「行ってこい」


彼女にダンッと背中を押され、僕はよろよろと魔物の前に出てしまう。

魔物は僕の顔を見て目を逸らす。


「えと、随分ゆっくりですね」


今度はギロっと目を負けてきた。


「どいて」


めちゃくちゃドスの利いた女性の声で言われた。


「あ、はい」


僕はササッと魔物の前からどく。

すると魔物はずっと僕を睨みながら横を通り過ぎていった。


「ナンパなら鏡見てからしなよ。布切れみたいな見た目して。どこの劣等種だよ。何がゆっくりですねだ。私の歩く速度にケチつけてんじゃないわよ」


多分通り過ぎたから心の声が漏れたんだろう。

ただ歩く速度が遅いせいで余裕で全部聞き取れてしまった……ん?

聞き取れた!


「どうだよ?」

「凄いです!でも何で?」

「さっき食った玉の効能だよ」

「へー、凄いなっ。でも、具体的にどんな原理なんですか?」


僕は嬉々として聞く。


「菌だな」

「え、きんて……もしかしてばい菌とかの菌ですか?」

「そう」

「いやそうじゃなくてっ!」

「大丈夫だって。お前すぐ焦るよな?」


そりゃ焦るでしょーが!


「菌つっても世の中悪い菌ばっかじゃないだろ?あの食いもんの菌も体に害はない。ただちょっと脳の言語を司る部位に侵入してコントロールするだけだ」

「十分ヤバいじゃないですかっ!」

「だー。うるせぇな。入った菌は時間で死ぬんだよ。あの玉の効果はせいぜい一時間だ。一時間後にはお前は綺麗さっぱりだ。その代わり言語の理解も発音も出来なくなるけどな」


僕は頰を膨らませる。


「何だよ、悪かったって。言語理解できてよかったじゃんか。そんな怒ることねーだろ?」


ちょっとしょんぼりしている彼女を見ると、何だか自分が悪いことをしてる気分になってきた。


「……次から何かする時は説明して下さいね」

「おう」


彼女はニッコリ笑った。

ほんとに分かってるんだろうか?


「よし、じゃあ行こうぜ」

「今度はどこにですか?」

「どこって、町の入り口以外あんのか?」

「いえ……」

なぜだろうか?

彼女と別れるのが少し寂しい。





僕らは町を出て少し進んだ場所に居た。


「ほら。あっちの方向に行けば不死町まで真っ直ぐ行けっから。途中渓谷(けいこく)があってって、どした?」

「いや、なんか1日も経ってないのに色々あったなって」

「そうか?んーそうだな。私も人間とは久しぶりに話したしな」

「前はいつ話したんですか?」

「多分3、40年前とかか?そいつは勃ったんだけどな」

「ちょっとうるさいです」

「フフッ」

「本当にこれもらっていいんですか?」


瓢箪を手に持ちながら僕は聞く。


「ああ。私は使わないからな。この先私みたいなヤツが助けてくれるわけじゃないんだ。言葉ぐらい話せなきゃ死ぬぞ」

「はい。ありがとうございます」

「おう。布は町が小さくなるまで被っとけよ」

「はい。では」


僕はお辞儀をして歩き出す。


「元気でなあああ!」


大きく手を振る彼女に振り返り、もう一度お辞儀をして僕は次の町へ向かう。

一日にも満たない時間の関わりで、これほど別れを惜しむことがあるんだと僕は驚いていた。

きっとシェルにいたら、この寂しさや心細さは知らずに生きていたんだろう。

決していい感情ではないと思う。けど、知らずに死ぬには勿体無いと僕は思った。

これから何回も感じる感情なんだろうか?

それとも彼女、サキュバスの魅力だったんだろうか?

それは次の出会いが教えてくれるんだろう。

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