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ルーメン  作者: 神響音音


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3/21

旅の始まり

暗闇の中、指先に鉄のざらつきを感じながら歩く。

少しして空気のプスーという音が響くようになった。

その理由はすぐにわかった。

壁に空気を吸引する穴が複数開いていたのだ。

それから薄い膜のようなものを体で破る感覚を何度も覚え、やっと光が見えてきた。

僕は駆け足でその光へ向かった。





人生で初めて外に出た。

そして僕は世界の眩しさに目を細めた。

初めての外だ!初めての空だ!初めての―。


「太陽だ!」


授業でしか聞いたことのない太陽が僕の上にある。

あんなことがあった直後なのに不思議と笑みが溢れる。

……ダメだっ。ダメだっ。なに笑ってるんだ?


「あれ、なんで涙が?」


笑いを堪えただけのはずが、僕は空を見上げ泣いていた。

これは、なんの涙なんだろ?


「いやダメだ!泣くのはもっとダメだっ」


僕は両手で涙を掬い上げるようにゴシゴシ拭く。

どんな理由でも今の僕に泣く資格はない。

人を傷つけたんだから。

なのに、なのに。

僕は蹲(うずくま)る。

誰かが見てるわけでもない。

でも感情を表に出したくなくて更に丸くなる。

もし今泣いてしまったら、一歩も進めなくなりそうで……。

だから、だから……もしよければ雨よ降ってください。

涙を僕に気づかせないで。





太陽の暑さにも慣れてきたころ、僕は顔を上げ通ってきた通路を見つめた。

すると入り口は壁になっていた。

そのことに驚くと同時にシェルの大きさと、壁が垂直のように聳(そび)え立っていることにも驚いた。

扇型になっているはずなのに垂直に見えるって、どれだけ緩やかに大きく造ってあるんだ?


「こんなにデカかったんだ」


そう考えると、まだまだ行ってない場所いっぱいあったんだろうな……。


「て、何考えてんだ!」


しっかりしろ。もうホームシックか?もう5年は帰れないぞっ。それに―。


「帰れたとしても、帰れない」


僕は踵を返して辺りを見る。

ほとんど木も無く荒野といったところか?

もちろん道らしい道もない。

僕は少し考え、シェルの入り口からまっすぐの方向に進むことにした。

理由は一つしかない出入り口を、わざわざアクセスしづらい場所に作るとは思えないからだ。

だから一番近い町は、こっちにあるんじゃないかと思ったのだ。

しかし半月が空に浮かぶ時間になっても町どころか建物、人にすら会えずにいた。

流石に歩き疲れたので、持ってきたキャンプ用品を使い今日は野宿をすることにした。

火元になりそうなものがないので火は諦め、パンを食べ水を飲み寝袋に包まれ僕は眠りに落ちた。





翌日。

太陽の光で目を覚ました。


「……おはよう」


目をこすりながら太陽に挨拶をし荷物をまとめる。

しかしここであることに気づいた。

どの方向へ向かって歩いていたのか忘れてしまったのだ。

地形の傾斜の影響かシェルは小さくすら見えない。

僕は肩を落とし大きくため息を吐く。

でも直ぐに気を取り直し、頬をパンッと叩き歩き始める。


こんなことで足を止められない。誰の助けもないんだから!


太陽の動きを見て、なんとなくで道を行くことにした。

シェルにいた時は、街の外ことはほとんど教わる機会が無かった。

ただ太陽のことは教わっていたので、その知識が正しいことを祈るばかりだ。

そして二度目の夕焼けを見て、やっぱり綺麗だなと思いつつも足を進めていると、遠くに建造物の集まりのような場所が見えた。

町だっ!

僕は早る気持ちを足にのせた。

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