これから
二人が喧嘩してから四日が経った。
サキュバスの回復力は凄まじく、二人ともすごく元気になっていた。
二人曰く骨にヒビが入った程度だったようで、サキュバスなら余裕とのことだった。
「今日の夜ご飯は媚薬サラダと精力うどんよ」
「安心しろウィザーク、ただのサラダとうどんだ」
「ありがとうございます。では、いただきます」
こうして三人で食卓を囲むのにも慣れてきた。
「あ、そうだ。さっきココと話したんだけど、明日スメールに帰るから。準備しておいてね」
「明日ですか?随分と急ですね」
「まぁもう行くって決めたらには、とっとと済ませたいのよ。体も八割は回復したし」
「つーか姉貴っ、こいつも連れてく必要あんのか?」
「あら、どうして」
ココがフォークを向けて言ってくる。
「だってよ。こいつにはこいつの旅があんだぜ。これ以上付き合わせるのもよ。次の町行くならまだしも戻るんだぜ」
「それが?旅は道連れ弱者は強者について来いって言うじゃない」
「まぁそりゃそうだけど」
そうではなくないか?
「邪魔なら明日お別れでも僕は―」
「ダメよっ。少しでも長く私を楽しませてくれないと」
ココがやれやれと言った顔でリリを見ている。
僕も何も言わずサラダを食べる。
「と言うことだからお願いね」
「……はい」
不服そうに返事をしたものの、それも嬉しそうにリリは聞いていた。
そして僕もなんだかんだ言って、この三人でいるのももう終わるのかと思うと寂しくなった。
珍しく深夜に僕は目を覚ました。
ベッドを見るとリリの姿しかなく、ココが外にいるのかと思い家を出る。
「ココー」
家の前。月明かりに照らされた薄暗い道に、小声で声をかけるが反応はない。かと思った次の瞬間に背後から声をかけられた。
「なんだよおめぇ、起きたのか?」
ココは家の屋根、三角の部分に跨っていた。
「何してるんですか?」
「朝寝すぎたから寝れねんだよ……ちょうどいいや、ほら、手ぇかせ」
そう言って少し降りて来たココは手を差し出す。
僕は少し戸惑いながらも手を伸ばす。
そして引き上げてもらい、跨るように屋根に座った。
そんな僕の横にココは浮きながら胡座をかいた。
「さてと。あのさ……」
ココがなんかソワソワしているのがわかった。
「どうしたんですか?」
「いや……こないだはありがとな」
顔を背けながらココはそう言った。
「え、いや。僕はただ眺めていただけで―」
「いや、それは違うぜ。お前がいなきゃちゃんと話し合えなかったと思う。きっと私一人で来てたら、あのまま家に帰ってた。だからお前がいてくれたおかげで、明日二人を合わせられんだ。ありがとう」
今度は顔をまじまじ見られながら言われた。
「面と向かって言われると、照れますね。イタッ」
「照れんなっ」
そして少しの間、二人揃って月を見上げているとココが聞いてきた。
「お前この先どうすんだ?」
「決めてないです。でもエルフと言う種族を知ったので、できれば住んでいる場所に行ってみたいかなと」
「危ないって言ってたろ?」
「でも、行き方もある程度教えてもらったので」
昨日キリさんと話す機会があり、その時昔話を聞く過程で元々住んでいた場所までの道のりを、こと細かく教えてもらい地図も書いてもらった。
「どうせ行く当てもない旅ですし」
「でもよぉ……」
「心配してくれるんですか?」
「ば、バッカじゃねーの!」
「ココ静かに静かにっ」
焦る僕をよそにココは一人地上に降りていく。
「あれ、ココ?ちょっと―」
「おやすみバーカ」
僕を見上げてあっかんべをしたココは、家に入っていってしまった。
「……ええ」
僕はそれから30分ほどかけて、屋根を降りる羽目になった。




