一休み
「姉貴、そのハーブ取ってくれ」
「はい」
リリさんが尻尾でココさんに赤の葉を渡す。
「ココ、料理も出来るようになったのね」
「そりゃ出来るだろっ、もうガキじゃねんだ」
「媚薬はどうする?入れとく?」
「リリさん!」
僕はリリさんの手から瓶を取り上げる。
「なーに?」
「僕で遊ぶの楽しいですか?」
「うん、とっても」
無邪気な笑顔だった。
「姉貴、そいつで遊んでも多分損するぞ」
「ちょっと、どういう意味ですか?」
「ココは自分のおもちゃを取られるのが嫌なのね」
「何言ってんだ!」
まな板が目の前を飛んでいった。
はぁ。この人たち疲れる。
二人が喧嘩をしたのは二日前。
昨日は二人ともベッドで寝ていて、料理も僕がなんとなく食材の情報を聞いて作った。
それぐらい大人しかった。
でもそれがどうだ。今日になったら二人とも寝袋で寝ていた僕の顔を覗き込んでいたし、急に料理を作り出したかと思えば今は言い争っている。
……サキュバスってかなりタフなんだな。
「ごちそうさまでした」
「美味かったか?」
「はい」
「これで三日間は勃ちっぱなしよ」
僕はココさんを見る。
「ば、姉貴の冗談真に受けんじゃねぇよ。私がそういうの嫌いだって知ってんだろ?」
「や、えっ!二人はもうそんな深いところまで知り尽くしているのね」
「ちょっと黙れよ姉貴」
無意識にため息が出る。
「ふふ。冗談よ。媚薬はさっきあなたが取り上げたじゃない」
「リリさんは取り上げなければ入れてたんですか?」
「ええもちろん」
ああ、ニコニコ楽しそうだ。
「ねぇウィザーク君。いつまで私たちにさん付けなのかしら?」
「えっ」
「私たちあんな事があったのだから、他人行儀なのはやめたいのよね。私もウィザークって呼ぶし。ココが許せばだけど」
ニヤッとして彼女はココさんを見る。
「なんで私が許すんだよ」
「許してもらえなかったわ」
「ちげ、いちいち私の許可いらねーだろって言ったんだよ!」
「いいみたいよ。ほら、呼んでみて」
僕は二人の視線を一点に浴びる。
「……ココ、リリ」
なんで名前を呼んだだけで恥ずかしくなるんだっ?
「可愛い。照れてる」
「可愛いか?キモイが」
「これからはさん付け禁止ね。指切り」
僕はリリさんと指切りをする。
「う〜わ。気分悪くなったから寝るわ」
ココはベッドに向かって飛んでいった。
「じゃあ指切った。さん付けしたら舌切ってケツの穴に入れるからね」
「ええ!」
笑顔で言うセリフではない。
いや、これがサキュバスの指切りの文言なのか?
「リリは寝ないんですか?サキュバスって夜行性ですよね?」
「私は昨日一日中寝たから大丈夫よ。そう言えばウィザークって旅をしてるのよね?」
「はい」
「今までどこを旅してきたのかしら?」
「えっと。まだスメールとここしか知らないです」
「始めたばかりってこと?」
「……はい」
なんかせっかく聞いてくれたのにと、気まずく思ってしまう。
「じゃあ、不死町のことは教えましょうか?」
「えっ、いいんですか?」
「こないだのお礼代わりよ。それとも私の体がいいかしら?」
「不死町について教えてください」
「もう、ちょっとは乗ってくれてもいいじゃない」
ちょっと乗ったら、なんかわかんないけど最後まで行くでしょ?
「で、教えてくれるんですか?」
「……ええ。旅をするなら知っておいた方がいいわ。この町ほど歪に支配されている場所は多分ないと思うから」




