再会
町に着いたので僕はココさんを起こすことにした。
「ココさん。起きてください」
「はーあ。まぁまぁ寝れたな、サンキュー」
「ま、それはいいんですけど」
「じゃあ私は姉貴に会いに行くから」
ふわふわと飛んでいこうとする背中に僕は声をかける。
「あの、僕も行っていいですか?」
「……え、やだけど」
彼女は訝しげに距離を取る。
「なんでですか?」
「逆になんでついてこようとしてんだよ?」
「それは……」
確かに。でも。
「この町のこと聞きたいんで」
「……ほんとか?余計なこと聞くんじゃねーだろーなー?」
余計なこと?
僕は首を横に振る。
「えーっと、ほんとに色々聞きたくて。あと二人の方が心強いし」
「……はあ。本音は最後の方だろ?」
バレてる……。
「他のやつに聞けよっ、て言いてぇけど。この町じゃなー。分かったよ。こっちだ」
この町はスメールと違って、奇抜な見た目の建造物はない。ほとんどが同じ見た目の平屋、レンガで作られている。入り口は扉の代わりに布が垂らされており中は見えない。
町の雰囲気としては落ち着いているが、一つ嫌なところがある。
臭いだ。
町の中に入って奥に行けば行くほど、鼻をつく臭いが強くなっているような気がする。
僕にとってはスメールよりキツく感じる。
ある家の前を通った時は、鼻を塞いでしまうほどそれは強烈に臭った。
この家が原因ってわけではないんだろうけど。
「着いたぞ」
彼女の後をついて歩くこと数分、お姉さんの家に到着した。
お姉さんの家も例に漏れず、周りの家と同じ外装だった。
「……」
「ココさん?」
一向に入ろうとしない彼女の顔を覗く。
するとパンッと両手で自分の頬を彼女は叩いた。
「よし」
そのまま彼女が家に入って行ったので僕も後に続く。
「姉貴ぃ」
「お邪魔します」
中に入ると四角いテーブルが中央に置かれていて、入り口の横には料理をできるところがあった。
奥にはこの空間に似つかわしくない派手で大きいピンクのベッドがあり、壁には草や食材と思えるものがびっしりと吊るされている。
そのうちの一つを手に取ろうとしていた銀髪で長髪の女性が、僕らの方を見て固まっていた。
「……ココ。それと、人間?」
「姉貴、母さんが会いたがってる。一回だけ家に帰ってきてほしい」
驚いた顔をしていた彼女だったが、ココさんの言葉を聞いた途端冷たい表情に変わった。
「私は家には帰らないわよ」
「別に戻ってこいって言ってんじゃねぇよ。一回だけ会いにきてほしいって言ってんだ」
「なんで?」
「なんでってそりゃ」
そう言いかけたココさんは僕を見て言葉に詰まる。
「その子がなんかなの?もしかしてお母さんの新しい男?」
「はぁ?おま―」
「結婚するから祝いに来てほしいのかしら?」
「ッ。姉貴、またそんなこと言うのかよ」
風も吹いていないのに、僕は急に空気のうねりを感じた。
ふとココさんを見ると、鋭い目つきでお姉さんを見ている。
浮いている体はどこか前傾姿勢で、今にも飛び掛かるんじゃないかと不安になってくる。
「そんなことってどんなことよ?」
「母さんを馬鹿にするようなことだろうがよ」
「馬鹿にしてるつもりなんてないわ。ただ聞いただけじゃない。なによあんた、やるの?」
体全体を何かになぞられた感じを覚え、僕はビクッとしお姉さんの方を見る。
するとお姉さんの方も何かを始めようとする雰囲気を纏い出していた。
ビシッ!!
僕は目をぎゅっと閉じて片手をまっすぐ上げた。
「お茶ください!!」
静寂が訪れた。
とにかくなんとかしようとして出た行動だった。
「アッハッハッハッハッハッハッハッハ!」
「お前何言ってんだ?」
二人の雰囲気がどこか落ち着いたのが分かった。
「面白いね君。お名前は?」
僕は目を開ける。
「ぼ、僕ウィザークって言います」
「ウィザークかぁ。カッコいい名前ね」
「ありがとうございます」
お姉さんは笑顔で褒めてくれる。
「ウィザーク君はお母さんと結婚するの?それともココ?」
また少しピリつく空気。
「はぁ?なんで私がコイツと結婚すんだよ!」
「じゃあやっぱりお母さんなんだ」
「ッ。勝手に言ってろ」
ココさんは吐き捨てるように言うと、家を出て行ってしまった。
「ココさん―」
「ウィザーク君」
追いかけようとした僕の真後ろ。いつの間にかいたお姉さんに耳元で囁かれ、僕はビクッとし鳥肌がたった。
「私とちょっと話さない?」




