第1話 中編
ニートの田中は、昼間の公園のベンチで寝転がっていた。
「あああ、彼女欲しいなぁー」
田中は人生でモテたことがない。
当然ながら彼女がいた経験も皆無だった。
目的もなくスマホを眺める田中は、画面いっぱいに表示された広告に目を留める。
「お? 何だこれ」
それは恋愛リアリティーの出演者募集の広告だった。
田中は試しにタップして公式サイトへと飛ぶ。
そこに記された概要を流し読みして彼は呟いた。
「一般人の募集とかあるのか……ダメ元で応募するかね」
田中はその場で自撮り写真を加工し、経歴も少し持ってから出演者募集に応募した。
スマホをポケットに仕舞った田中はベンチの上で寝返りを打つ。
(まあ書類選考すら通らんだろ。真面目に仕事探すかぁ)
そして数日後、
都内の雑居ビルにて、スーツ姿の美女が一礼する。
「宮野です。田中さん、本日はよろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします……」
向かい側に座る田中は緊張していた。
上下ジャージ姿の彼は居心地が悪そうにしている。
そんな田中の動揺には触れず、宮野は冷静に話を進めていく。
「まずはご応募くださりありがとうございます。現段階で田中さんは書類選考を突破し、番組への出演が決まっております」
「え!? これって面接とかオーディション的なものじゃないんですか……?」
「はい、出演に際しての契約と説明ですね。それと事前のご挨拶を兼ねております」
「な、なるほど……」
驚きを隠せない田中は、ただ頷くことしかできない。
宮野は手元の種類をめくって告げた。
「基本の出演料は二百万円。ここに出演中のボーナスや賞金が加算されていきます。田中さん次第ですが、最終的に一億円を突破する可能性もあります」
「い、一億!? さすがに冗談ですよね……?」
「すべて事実ですよ。こちらにサインしていただくことで、田中さんの人生は一変します」
宮野が契約書とペンを差し出す。
それらを受け取った田中は渋い顔で考え込む。
(完全にヤバい案件だよなぁ。適当に誤魔化して断った方がいいか……?)
田中の懸念を見抜いたように、宮野は上目遣いで彼に問う。
「この先、あなたの人生で一億円を手にするチャンスはあるでしょうか?」
「いや、でも……」
「素敵な彼女が欲しくないですか? 現役アイドルに女優、インフルエンサー、看護師からキャビンアテンダントまで、様々な業種の美女が揃っていますよ。その方々と恋愛に発展することができます」
「じゃあやりまーす!」
田中はコンマ二秒で契約書にサインをした。




