ワイアットの怒り2
続きです、ワイアットはチート能力は持っていません、でも狡猾さで無双するのもいいかと
冷たい石造りの牢獄。
錆びた鉄格子から差し込む光はわずかで、湿った空気が肌にまとわりつく。
ミレイナは両手を鎖に繋がれたまま、膝を折り、静かに瞼を伏せていた。
その唇から、か細い声が零れる。
「皆……来ないで下さい……。どうか……私のせいで危険を背負わないで……」
──それは祈りにも似た願い。
だが、彼女の心の奥底では“必ず来る”という確信もまた拭えなかった。
その時、牢の扉が軋みを立てて開いた。
重い足音。分厚い鎧の擦れる音。
現れたのは、屈強な体躯を持つ大男──騎士団長ガナード。
鋭い瞳で彼女を見下ろし、唇に冷笑を浮かべる。
「無駄だな。そうやって拒もうと、奴は必ず来る」
鉄の響きのような声が、牢内に響く。
「人類など我ら魔族にとっては駒に過ぎん」
その声音は残酷な宣告であり、同時に罠の確信を帯びていた。
──やがて訪れるであろう、決定的な衝突を予感させながら。
冷たい牢の石壁に背を預け、ミレイナはゆっくりと瞼を伏せた。
鎖の重み、剣を奪われた無力感、そしてワイアットたちを巻き込んでしまったという絶望──。
「……我が君……皆……どうか、ここには来ないで……」
声は震え、涙が頬を伝う。
だがその刹那、背後の影がふっと揺れた。
「ミレイナ、大丈夫?」
──耳に届いたのは、聞き慣れた快活な声。
思わず顔を上げると、格子の隙間から現れたのは赤髪を揺らす少女。
「カレン……!? なぜここに……」
「ワイアットにね、“先に潜入してろ”って言われたから♡ それと、ほら──」
カレンが差し出したのは、奪われたはずの愛剣。
その刃は燭台の火を受けて、牢の中を淡く照らす。
「……剣……!?」
「じゃあ早くこんな所出よ!ワイアット達もそろそろ来るよ〜」
その笑顔は、牢の冷たい空気を一瞬で吹き飛ばすほど眩しかった。
ミレイナの胸に、希望が再び芽生える。
「……カレン……貴女は、やはり……頼もしいですね」
二人の目が交わった時、絶望の牢はもう“救いの待つ場所”へと変わっていた。
牢獄の暗がりに、鋭い音が響いた。
──ギィィンッ!
ミレイナの剣が鉄格子を斬り裂く。
堅牢なはずの鉄は、まるで柔らかな紐のようにたやすく切断され、床に落ちた。
鎖がほどけ、重苦しい牢の空気が一気に解き放たれる。
ミレイナは剣を収め、カレンのもとへと歩み寄った。
「カレン、ありがとうございます」
「いいよ♡ それより──始まるよ〜。ワイアット、今回マジでキレてたからね〜♡」
「……?」
カレンの唇に浮かぶのは、小悪魔的な笑み。
その意味を量りかねるミレイナだったが──彼女の胸に、妙な高鳴りが走る。
そう、これから始まるのはただの救出ではない。
ワイアット・クレインが“本気”で敵を叩き潰す、その反撃の序曲だった。
牢獄の石壁に差し込む松明の炎が、まるで戦の幕開けを告げる狼煙のように揺れていた──。
西の地下牢入口付近
カレンとミレイナが闇の回廊を進む。
静寂──その時だった。
──ドォォォォォンッッ!!!
反対側、城の東の塔が凄まじい轟音とともに吹き飛んだ。
石壁が砕け、爆炎が夜空を赤く染め、兵士たちの悲鳴が一斉に響き渡る。
「なっ……東の塔が!?」「爆発だぁぁッ!!」
瓦礫と炎の嵐の中、見張りの兵たちは右往左往。
指揮官の怒号も掻き消され、城全体が混乱に呑まれていく。
カレンは爆風の揺れを受けながら、口角を吊り上げた。
「ふふっ、始まったね──ワイアットの反撃♡」
ミレイナは騎士らしく凛とした眼差しで剣を握り直す。
「……あれこそ、我が君の宣戦布告──!」
東の塔を焼く炎が夜空を裂き、
ワイアットの“卑怯で苛烈な逆襲”が幕を開けた──。
西側の地下牢を抜けた直後、爆炎の赤が夜空を焦がす。
兵士たちが右往左往し、混乱の渦が広がる中。
「ミレイナーー!!」
聞き慣れた声が、轟音を切り裂いて響いた。
振り返るミレイナの視界に、駆け抜けてくる影が映る。
漆黒のレガシーロジストに跨るワイアット。
その隣には、白銀のリボーンズエスポワールを操るアイネス。
「ミレイナさん! リボーンズを!!」
蹄が大地を蹴る。
二頭の馬が疾走し滑り込むように停止する。
「……我が君!」
ミレイナの瞳が潤む。
ワイアットは片手を差し伸べ、いつもの笑みを浮かべた。
「待たせたな。──行くぞ、まだ終わってねぇ!」
「にしてもアイネスも馬に乗るの上手くてびっくりしちゃった!」
カレンが振り返り、からかうように声を上げる。
アイネスはわずかに胸を張り、誇らしげに微笑んだ。
「ふふ……当然です。私、300年も練習してましたから!」
ほんの少しだけドヤ顔。
その姿に、思わず皆の頬が緩む。
城の中枢──。
怒号が響く。
「おい!兵を集合させろ!迎撃の陣形を組むんだ!」
ガナードが声を張り上げる。だが、返ってくるのは焦燥混じりの報告ばかり。
「だ、団長!!城内本丸より……兵舎一帯に毒ガスが発生!動ける兵士は、ほとんど……っ!」
ガナードの顔が凍りつく。
「なん……だと……?」
その時も、遠くから兵士たちのうめき声が微かに届いてきた。
鎧を引きずりながら倒れ込む兵、必死に窓を開けて咳き込む兵、
次々と“戦う前に戦意を奪われていく”惨状。
「くそっ……ワイアットの仕業か!」
潜入前
城に向かって馬は地を蹴り、箒は空を裂いた。
緊張感の中、その道を塞ぐ影──
「ワイアット!お前この前はよくも!」
仁王立ちで叫ぶのはジグ。だが次の瞬間、ワイアットは迷わず叫んだ。
「ジグ!丁度いいとこに!──エトラ!網だ!!」
「はいっ!」
エトラが展開した魔法陣から、光る網が放たれる。
不意を突かれたジグの仲間、ミュラが捕らえられた。
「ちょっ……な、なんなんですの〜!?!?」
必死にもがくが、網は蛇のように絡みつき身動きを封じる。
ワイアットは馬上からジグを見下ろし、悪びれもせずに言い放った。
「ジグ!コイツ借りるぞ!」
「待てッ!!ミュラをどうする気だ!?」
ジグが慌てて叫ぶ。だが、ワイアットはにやりと笑った。
リィナとエルミナも
「ミュラ!?」
「ワイアット!お前!!」
魔法の網に絡め取られたミュラは、必死に体を捩って暴れていた。
「いやですわ〜!!離してくださいませ〜っ!!」
その様子を横で見ていたエトラが、微笑みながらふわりと声をかける。
「大人しくしてくださいミュラさん!……このまま落としますよ?」
にこやかな表情とは裏腹に、言葉の内容は冷淡そのもの。
ワイアットも思わず肩を揺らして笑った。
「ははっ、エトラっておっとりしてんのに、たまに一番怖ぇこと言うよな」
「ひぃぃぃぃぃぃぃ!!??」
エルデファー城に到着するとワイアット達はミュラを本丸の一階に押し込み、縄で簡単に固定すると、エトラが小さな点滴器具を取り出した。
「ちょっとチクっとしますね」
にっこりと微笑みながら、エトラはミュラの腕に針を刺す。
「な、なんですの!?この点滴!?いやですわ〜!」
必死に暴れるミュラだったが、魔法の網に絡め取られて逃げられない。
「ただのMP回復薬ですよ。飲むより効果的ですから」
エトラの口調はあくまで穏やかだが、内容は容赦なかった。
ワイアットが顎をしゃくって命令を下す。
「ミュラ!死にたくなきゃ毒ガス出し続けろよ!」
「イヤですわーー!!!」
泣き叫ぶ声を背に、ワイアットとエトラは走り去る。
その直後、異変に気付いた兵士たちが雪崩れ込んできた。
「何だこの臭いは!?」「毒ガスだ、下がれ!!」
恐怖に駆られたミュラは、生き延びようと必死に両腕を広げ、魔力を絞り出す。
――溢れ出す紫煙。広間を覆い尽くす、濃厚で致死的な毒霧。
「ひぃぃぃ!!出ますわ出ますわぁあああ!!!」
その絶叫とともに、ミュラは“毒ガス発生器”として稼働を始めたのだった。
そして今に至る
爆発に毒ガス──エルデファー城は既に地獄と化していた。
兵舎も本丸も濃霧に包まれ、兵士たちの悲鳴が夜空に響き渡る。
「ぎゃあああッ!!息が……く、苦しい……!」
「た、助け……誰か……っ!!」
「爆発!?毒!?な、何が起きている!?」
その惨状を遠目に見ながら、ワイアットたちは馬上で駆け抜けていた。
ミレイナが剣を握りしめながら、ちらりと横目で彼を見やる。
「本当に……我が君のやる事はえげつないですね」
ワイアットは歯を見せて笑い、怒りを滲ませた声で返した。
「当たり前だろ!──誰の女に手を出したか、分かってないみたいだからな!」
燃え盛る城を背に、ワイアットの双眸は怒りで紅く染まっていた。
その怒りは決して“正義”などではない。
ただ、愛する女を奪われたことへの報復──
それだけが、彼を突き動かしていた。
「私はあの男との決着を付けに行きます」
ワイアットはニヤリと笑い
「おう、行って来いよ」
ミレイナの肩を叩く
ミレイナは走る。
廊下を抜け、瓦礫の舞う城内を駆け抜け──たどり着いたのは、かつて騎士たちが鍛錬に励んだ訓練場だった。
そこに立つのは、巨大な斧を携えた大男。
騎士団長、ガナード。
「来たか……女騎士。やはり貴様はワイアット・クレインの影に囚われている……だが今宵、貴様はその誇りごと潰えるのだ!」
ミレイナは腰の剣を静かに抜き、瞳を燃やす。
「……私はもう、影では無い。私はただ、あの人の隣に立つ女騎士。貴様に……屈する理由など無い!」
ガナードが大斧を振り下ろす。
地面が砕け、砂塵が舞い上がる。
だが次の瞬間──ミレイナの姿は掻き消えていた。
「なに──ッ!?」
背後を取られたことに気づいたときには、既に銀の閃光が走る。
ミレイナの剣がガナードの大斧を弾き、力で勝るはずの巨躯を後退させていた。
彼女の動きは研ぎ澄まされていた。
無駄がなく、鋭く、迷いがない。
「我が君を怒らせた……ここで償え、ガナード!!」
銀閃が幾重にも走り、訓練場に鉄の火花が散った──。
剣と斧が火花を散らし、訓練場に轟音が響いた。
ミレイナの剣は正確無比、風すら切り裂く速さで何度も斬撃を重ねる。
「はぁッ──!」
閃光の如き一太刀がガナードの鎧を裂き、鮮血が飛ぶ。
「ぐっ……小娘が……ッ!」
巨躯の男は歯を食いしばり、周囲の瓦礫を片手で掴み取ると──無造作に投げつけてきた。
ゴロゴロと転がる瓦礫の群れ。
避けるしかない!ミレイナは大きく跳躍し、その場を離れた。
「卑怯な──!」
銀髪が揺れ、瞳が怒りで燃える。
ガナードは獰猛な笑みを浮かべ、低い声で吐き捨てた。
「戦に卑怯も正義もあるか!くだらぬ誇りに囚われている限り、貴様は決して俺には勝てん!!」
大斧が振るわれる。地面が抉れ、破片が飛び散る。
だが、ミレイナは動じなかった。
ガナードの豪腕が斧を振り下ろす。石床が砕け、砂煙が舞う。
しかしミレイナは動じなかった。静かに剣を下ろし、冷ややかに言い放つ。
「卑怯も正義も無いか……。確かに、貴様に誇りを懸けるのはくだらない」
そう言うと──ミレイナは腰に隠していた物を左手で抜き取った。
黒鉄の輝き、二丁拳銃の一つ。ワイアットのピストルだった。
「なっ──!?」
ガナードの目が大きく見開かれる。
乾いた銃声が訓練場に響く。
次の瞬間、ガナードの膝が弾けた。
「ぐぁぁぁぁあああッ!!」
巨体が崩れ落ちる。片膝を押さえ、絶叫するガナード。
膝を付き倒れ込む、ミレイナは疾風のごとく踏み込んだ。
「がっ……うぐぅッ!」
その胸元を狙って、渾身の蹴りが突き刺さった。
──ドガァッ!!
鈍い衝撃音とともに、二メートル近い巨体が宙を舞い、訓練場の石壁に叩きつけられる。壁に亀裂が走り、砂塵が舞った。
仰向けに倒れるガナードの顔面にミレイナは落ちていた瓦礫を叩き付ける。
「ぐ、ぐおぉ……や、やめろ……!!」
膝を撃ち抜かれ、顔面を潰され這いつくばるガナード。その声はもはや哀願に近かった。
だが、ミレイナの瞳は氷のように冷たい。
剣を構え、容赦なく地を蹴る。倒れたガナードの胸元に鋭い刃を突きつけると、そのまま鋭く突き下ろした。
「──終わりだッ!!」
金属が肉を裂き、巨体が痙攣する。
訓練場に響いたのは、ガナードの断末魔と、剣が床に深々と突き立つ轟音だった。
彼女は刃を引き抜き、返り血を一振りで払うと、ピストルを見つめ静かに呟いた。
「我が君⋯いつの間に持たせてたんですか⋯」
訓練場での死闘を制したミレイナは、剣を収めて静かに息を吐いた。
そこへ駆けつけたワイアットと視線が交わる。
「スカッとしたみたいだな」
ワイアットがにやりと笑うと、ミレイナも微笑を返し──手にしていた拳銃を差し出した。
「お陰様で……はい、これお返しします」
鉄の重みを受け取り、ワイアットは肩を軽く竦めた。
やがて、決戦の気配が漂う。
ワイアットは振り返り、仲間たちに短く告げる。
「アイネス、レガシーを頼んだぞ」
「はい!お任せください」アイネスは真剣な眼差しで頷き、愛馬の首筋を撫でる。
上空からエトラの声が響く。
「ワイアットさ〜ん、捕まってくださーい!」
箒が旋回し、ワイアットは勢いよく跳び上がると柄を掴んだ。
「よし!皆は脱出しろ!」
その一言に、仲間たちの胸は熱くなる。
ミレイナは背筋を伸ばし、騎士としての敬礼を送る。
「我が君……ご武運を」
カレンは笑顔で手を振った。
「ビシッとやっつけてきてねー♡」
その声を背に、アイネスが手綱を引き、レガシーとリボーンズが力強く駆け出す。
蹄音が遠ざかる中、ワイアットはひとり、箒の上で前を見据えていた。
「……あの占い師、お前は俺がケリをつける」
──ここから、ワイアットと“魔王軍残党幹部イザベラス”との最終決戦が始まろうとしていた
塔の上──
風が吹き抜け、月明かりが夜空を切り裂く。
「エトラ、あの塔に降ろしてくれ。あとはミュラを連れて逃げろ」
「はい、ワイアットさんも……どうかお気をつけて」
軽やかな羽音と共に、ワイアットは塔の上に飛び降りる。
瓦礫混じりの屋上にブーツが着地する音が響いた。
月を背にしたワイアットは、真っ直ぐに前を見据えて声を放つ。
「よう、魔王復活計画は順調か?」
少し離れた屋上──
紫紺のドレスを纏い、妖艶な笑みを浮かべていたのは魔王軍幹部・イザベラス。
燃えるような瞳に冷たい光を宿し、彼女は言い放つ。
「あなたを殺した後で……復活の儀を再開するわ。楽しみにしていなさい、ワイアット・クレイン」
月明かりが二人を照らす。
夜風に髪を揺らし、イザベラスは冷笑を浮かべた。
「ま、俺は魔王復活自体は興味ないけど」
「勇者の息子が随分呑気ね……貴方の父は世界のために命を懸けたというのに。貴方も勇者の血を継いでいるのなら、同じく世界のために――」
遮るように、ワイアットは指先で銃をくるりと回した。
「勇者、ね……。父さんのことは尊敬してたさ。あの人は本物だった。だけどよ――今の時代の“勇者”はただの称号、肩書きだろ?取り繕った連中が都合よく飾りにする看板に成り下がってる」
言葉に冷たい皮肉を滲ませ、ワイアットは一歩前へ。
「だから俺は勇者にはならない。俺は俺だ。好き勝手にやって、好き勝手に奪って、俺の女を傷つけた奴を徹底的にぶちのめす……ただそれだけだ」
月光に照らされた笑みは、どこまでも不敵だった。
月を背にしたイザベラスの声が、夜空に鋭く響いた。
「ならなぜ、魔王様復活の拠点を潰しているの?」
ワイアットは鼻で笑う
「……まあ、言っても良いか。俺達はな、今から300年未来の――さらに別の並行世界から来たんだ」
イザベラスの瞳が細くなる。
「俺達の目的はただひとつ。アイネスを人間にする方法を探すことだ。そいつが見つかりゃ、それでいい。目的を達成したら俺達は帰れる。この世界線がどうなったって知ったこっちゃねぇ」
その眼差しは真っ直ぐで、不敵。
「だからよ――ついでだよ、ついで!俺達の目的の“ついで”に、魔王の復活を潰してやるだけさ!結果的に世界が救われる?……知らん、そんなのは勝手に付いてくるおまけだ!」
あまりに身勝手で、しかし揺るぎない宣言だった。
イザベラスは口元に笑みを浮かべる。だがその笑みは怒りと焦燥を隠す仮面でもあった。
月光の下、イザベラスが高らかに挑発する。
「なら目的を果たす前に魔王様の贄としてあげるわ!どうする?そこから私と勝負する?」
だが返ってきたのは、冷ややかな声だった。
「いや、お前の負けだ」
カチリ。
次の瞬間、イザベラスの後頭部に冷たい銃口が押し当てられる。
彼女が振り返ろうとするより早く、ワイアットは愉快そうに笑った。
「悪いな、あっちはマネキンだ。現世から持ってきたスピーカーにマイク仕込んで喋ってただけだよ」
イザベラスの瞳が揺れる。
「……この卑怯者」
夜を裂く銃声。
魔王軍幹部イザベラスは、抵抗も叫びも残せぬまま、地に沈んだ。
かつて「人に優しい王」と呼ばれた国エルデファー。
だが魔族に蝕まれたその国は、城ごと崩れ落ち、跡形もなく歴史から消滅した。
炎と煙の中を抜け出すと──
夜明けの光の下、ワイアットを待っていた仲間たちの姿があった。
「ワイアット!」
駆け寄る声とともに、リボーンズとレガシーが鼻を鳴らす。
剣を収めたミレイナは、深く一礼しながら微笑んだ。
「お疲れ様でした。我が君」
カレンは両手を腰に当て、にかっと笑う。
「やっぱりワイアット最高だわ!ほんっと期待を裏切らないよね〜♡」
エトラは安堵に頬を紅潮させ、そっと手を胸に当てる。
「……無事で良かったです、ワイアットさん……」
そしてアイネス。
馬上から柔らかく微笑みかけ、まっすぐに言葉を紡いだ。
「……ありがとうございます。また、旅を続けられますね」
仲間たちの声が、ひとつに重なる。
「お疲れ様!」
過労状態のミュラも一言
「ジグ様もこのくらいカッコいいとこ見せてくださ〜い⋯」
──燃え落ちる城を背に、
ワイアットは仲間と共に再び歩き出す。
空は晴れ渡り、馬の蹄と箒の音が高らかに響く。
黒い霧の晴れた国を背に、ワイアット一行は再び、次なる地を目指して走り出した!
正直この旅で魔王復活はどうでもいいんです。




