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第三十九話 不当な扱い

「いきなりこうされるのが怖くないのかって聞いてるの! 無能力者バニラ異能力者サイキッカーに関わっても良い事なんか一個もない! わたしたちにその気がなくたって、ちょっとチカラの加減を間違えたら大変なことになるのよ⁉︎ それなのに、結婚なんて……」


 白鳥はそのまま泣き崩れてしまった。

 異能力の効果が切れ、僕はそのまま床に降り立った。


「どうして、どうしてきら星ちゃんを持っていくの……? あなたたち無能力者には代わりの存在がいくらでもいるじゃない。でもわたしには、わたしの味方になってくれる人は、きら星ちゃんしかいないっ……!」


 なるほど、それが本音か。

 今度は僕がため息をつく番だ。言わなきゃわかんないのか。


「あのなぁ白鳥、君は僕に散々無知だなんだと言ってくれたが、それは君から見た僕に関しても同じことが言えるんじゃないか?」

「……どういう意味」

「君が無能力者バニラだと一括りにしている僕らなんか、それこそ異能力者より分母は多いんだ。なんか君の周りには自分とちょっと違う人間をわざわざ攻撃する愚か者ばかりみたいだけど、そんなのと僕を一緒にしてもらっちゃ困るって言ってんだよ」

「……」

「僕は不当な扱いってやつがこの世で一番嫌いだ。僕ら人間が全生物の中で最も醜くて最も非効率的な生物だってことを突きつけられている気がするからね。時折、自分のことも吐き気がするくらい嫌いになることがある。そして今の君の態度も気に食わない。君は自分自身を不当に扱っている。そんなんじゃ苦しんで当然だ、なんでそんなことも分からない?」

「じゃ、じゃあわたしにどうしろって」

「だから差し伸べられた手を素直に取れって言ってんだ」


 僕は床に座り込んだ白鳥の手を取り、引っ張り立たせた。

 こいつ、改めて見ると本当にボロボロでムカつくな。

 この不当な扱いを放っておき、よしとしているこの世界の全てにイライラする。


「ひとまずそのボロボロなのをなんとかしよう。許婚だとかはその後だ。もし僕が許婚なのが気に食わないなら君が綺羅子を説得しろ。許婚の話はあいつが断れば立ち消えになるんだ」

「え、そ、そうなの?」

「言っただろ保留中だって。僕も本当はとっくに断られて東京に帰ってるはずだったくらいだ。それが色々あってこんなことになっているだけだ。ほら、行こう」

「ちょっと、あんまり強く引っ張らないで……」


 僕が白鳥を広場から連れ出そうとしたその時ぐぅ〜、と大音量で誰かの腹が鳴った。

 いや、誰かは分かってる。

 犯人の方は床に座り込み、すでに顔を逸らして表情を隠していた。


「あの、なんか急に脚の力が抜けちゃって、アハハ、おかしいな……」

「いつから食べてないの」

「え」

「お前、いつから絶食してるんだって聞いてるんだけど」

「……昨日の夜、おにぎりをひとつ食べました」

「その前は?」

「えっ……ああ、三日前にドーナッツをひとつ食べた、かも?」


 本当にこの女は。呆れを通り越して怒りが湧いてくるレベルだ。


「よい、しょっと」

「うわわっ⁉︎ い、いきなり何するんだ! おろせ!」

「はいおろした。ちょっとそこで待ってて。食べられるものを持ってくるから」


 僕は抱え上げた白鳥をソファに座らせて厳命し、広場の隅っこの方にある自販機コーナーへ。


「こういう商業施設なら食べ物を売ってる自販機が一台くらいはあるんだよな……あった」


 “沖縄名物の味が食べられる!”と銘打った自販機には酒のつまみに混じってポーク卵おにぎりが売っていた。ラウンドワンに行った日の夜に食べた中にもあったやつだ。

 僕はそれを二つと、その横の自販機で適当なお茶を一本買って白鳥の元へと戻った。


「これ、一度に食べ切れなかったら後で食べてもいい。あ、卵アレルギーとかないよね?」

「別にアレルギーとかは、じゃなくて! 何でわたしに優しくしようとする? 何かの罠?」

「罠じゃない。これは僕が僕自身の怒りを鎮めるための儀式に君を巻き込んでいるだけだ。だからありがたがらなくて結構。分かったらとっとと食べてよ」

「わたしが言いたいのは、あっ……!」

「ちょっ、何を⁉︎」


 白鳥は突如言葉を中断したかと思うと、手元に発生させた小さいブラックホールで渡したおにぎりを包装ごと極小の球体に圧縮し、そのままお茶で胃に流し込んでしまった。


「ありがたがらなくてもいいって言ったけど、流石にその食べ方は問題があるんじゃ……」

「ごちそうさま。わたしはもう行くから」

「オイ待てよクソ女」


 白鳥が立ち上がって去ろうとしたそのとき、僕の背後から男の声がした。


「なんだ? 後ろに誰か……あっ」

「よお、また会ったなオタク野郎」


 振り向いた僕の視界に映ったのはゴリラのようにガタイのいいヤンキーと二人の取り巻き、だけではない。

 いつの間にか僕と白鳥の周囲は、額にハチマキを巻いた人間に囲まれつつあった。

 

 ハチマキに書かれた文字は、WAIS。

読んでいただきありがとうございます!

遅くても3日ごとに更新予定!

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