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第二十話 本日の宿

「さあ着きましたぞ。ここが私たちの宿です」

「「おおー」」


 コンビニを出て数十分、僕らはようやく本日の宿となる古民家に着いた。

 木造の二階建てでかなり古く、となりのトトロに出てくる家を縦に潰したような感じだが、屋根は赤っぽい瓦で“らしさ”全開だ。

 沖縄県は台風が多いと聞くが、よくこんなのが耐えてるなと不思議に思う。


「見ての通りの古さですが民泊として使っていますから手入れはされていますし、電気水道ガスはちゃんとリフォーム済みです。まあ、ドアの建て付けだけ……」


 フェルナンデスは説明しながら手早く解錠した玄関の引き戸をミシミシガタガタと音を立てながらスライドさせた。

 建物の外観同様に古めかしい作りの土間が顔を覗かせる。


「ご覧の通りです。土間もかなりの段差になってはいますが、一応あちらの方に回り込めば新しい玄関もあります。そっちはバリアフリー仕様ですぞ」

「説明もいいけどさ、早く中に入ろうぜ」


 綺羅子はそわそわとファミマの袋を揺らして言った。

 中にはほとんど彼女がチョイスした夕食が大量に突っ込んである。

 最初は軽食の予定だったはずが、いつの間にかこうなっていた。


「荷物はひとまず入ってすぐの居間に置けばいいので」

「おう!」


 フェルナンデスの言葉を許可と受け取った綺羅子は素早く家の中へと消えて行った。

 一応靴は脱ぎ散らかさずに揃えられている辺り、一抹の理性は残っているようだ。


「忙しないやつですな全く。さ、大統領、我々も入りましょうぞ」

「おじゃまします」


 案内されるままに土間を上ると、なんとも懐かしい感じのする畳間へと続いていた。

 大体八畳くらいの空間にちゃぶ台やタンスが置かれているがテレビだけやたら新しく、周囲からかなり浮いていた。

 襖で仕切られた奥の方にも似たような部屋が二、三個続いているっぽい。

 ちなみに綺羅子はというと、ちゃぶ台上にコンビニの戦利品をせっせと陳列していた。

 明らかにこの三日間で見た中で一番目を輝かせている。 


「どうせ後で好きに食べるのになんで並べてんの?」

「分かってねえな。どれから食べようか悩んでいる時がいちばん楽しいんじゃねえか」

「どれからって……」


 僕は改めて綺羅子が買ってきたもののラインナップを確認した。

 味の違うおにぎりとレジ横にあったホットスナックが大半で、菓子も数点。

 一応飲み物もあるけど、どれもどこにでもありふれている商品で何ら特別なようには見えない。

 珊瑚島にはセブンイレブンがまだないらしいがファミマはあったから、日頃見ないコンビニに興奮しているわけではなさそうだけども。


「大統領、入浴の順番はどうします? 女子の方が長くなるので、先に入りますか?」


 と、どうでもいいことに考えを巡らせていた僕をフェルナンデスの声が現実へと引き戻す。


「お風呂ね、僕は後でもいいよ。君たちの方が汗をかいているし、どうせドライヤーにも時間がかかるんだろ。僕は君らが出た後、その時間で入浴した方が効率的だと思う」

「ではお言葉に甘えまして……綺羅子ちゃん、お風呂を案内します。ついてきてください」

「んー、あたしはフェルナンデスの後でいいよ」

「後? 何を言っているのです、あんまり大統領をお待たせしてはなりませんぞ」

「え、一緒に入るのか⁉︎」


 綺羅子はまるで混浴に誘われたかのようにビクッと肩を震わせた。


「女子同士、共に汗を流した仲ではありませんか。ほら、行きますぞ」

「ちょっと待て心の準備が! あ、そうだ着替え! 着替えを荷物から出さないと!」

「綺羅子ちゃんが持参したリュックのことでしたらすでに風呂場に運ばせています」

「えっ手際良すぎない?」

「私たちも気が利く大人になりたいものですな。さ、観念しなさい」

「ホントに! ホントに待ってくれって! あっ抱えるのはズルだろおろせ!」


 ジタバタとしながらも最終的には身長二メートルの巨人に抱えられ、身長一五〇とちょっとのヤンキー女は風呂場へと連行されていった。


「何から何まで不思議なやつだな、綺羅子は……」


 さて、そうして僕は一人取り残されたわけだが、彼女らの入浴が終わるまでやることもない。


「買った物に何か法則性があるとか……いやないな。せいぜい味が濃いってところくらいだ」


 綺羅子の商品陳列になんらかの意味を見出す探偵ごっこに一瞬で飽きたところで、僕はちゃぶ台の端に置かれているテレビのリモコンに目を止めた。


「テレビなんか久しく見てない。でも、旅先の地元番組って意外と面白かったりするよな」


 なんて独り言を呟きつつ、僕は適当な座布団に腰を下ろしてテレビをつけてみた。


「おととい珊瑚島で発生した異能力者同士の大規模戦闘に関して、沖縄県警はSNS上に投稿されている誤情報を安易に拡散しないよう、異例の注意喚起を行いました」

「あー、本島でも珊瑚島のニュースをやるんだね……ん?」

「現在SNS上では通行人によって撮影された戦闘の映像が多数投稿され、被害者・加害者の身元を特定しようとする動きが活発化しており……」

「ちょいちょいちょいちょい⁉︎」


 僕は目を疑った。

 ニュース番組に使用されている映像は強くぼかしがかけられているものの、明らかにバイクに乗る僕と綺羅子、それを追う白鳥星河だ。

 それを投稿したアカウントの「これ多分道交法違反だよな?」のコメントが数千回拡散(リポスト)されている。


「えっ、身元を特定ってまさかっ!」


 僕は吹き出た手汗で滑る手でスマホを取り出した。通知は……十件⁉︎

 恐怖が喉元へ迫り上がったが確認しないわけにはいかない。

 僕は通知をタップして開いた。

読んでいただきありがとうございます!

遅くても3日ごとに更新予定!

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