第三部 三話 ユリウスとセシリアの違い
※ちょっとだけ性描写ありです。ご注意ください。
父親から継いだ王冠が俺の傍に置かれるようになって、改めて皇帝になるのだと思い直してみても、それまでとあまり変わらない日常があるだけだと冷めた気持ちで日々を眺めるだけだった。
それよりもセシリアを飾る皇后のティアラはどんなデザインにしようかと考える方が、よほど俺の心を軽く明るくしてくれて…
「家族の時間を邪魔してしまうかな?」
「いいえ、セシリア殿下なら歓迎してくださいますよ」
「俺が気にしてしまうんだよ。あまり長く時間を割いてもあげられないしね」
そんなことを返すと、まだ幼さの残る護衛騎士は不思議そうな顔で首を傾げた。そんな彼にアウローラ王国にいるアルトゥールを重ねて、笑みを浮かべた。
宮殿の中でも次に広く豪華に作られている俺の領域へ戻ると、即座にグランドハープの音が響いてきたのだけれど、今日ばかりは聞こえてこない。まだ家族の時間を楽しんでいるらしい。
自然と歩く速度がゆっくりになってしまう。邪魔をしたくない気持ちもあるけれど、両親からの愛情を惜しみなく注がれて育ったのだと分かると、胸の奥底のざわつきに名と形を与えてしまいそうで恐ろしかった。
「ままならないものというのは、どうしたってあるという事かな」
不思議そうな顔をしている護衛騎士に苦笑して、意を決してセシリアのいる部屋のドアを開けさせた。中ではハーブティーとお菓子を囲んでの茶会が開かれていて、近づくのも躊躇われた。
「ユリウス…! もうそんな時間だったのですね。気づかなくてごめんなさい」
「いいや、家族の時間を邪魔してしまって申し訳ないかな」
急いで駆け寄ってきたセシリアを抱き締めてみたけれど、ひどく寛いだ様子に胸の奥底がざわつくのを禁じ得ない。…愛されたもの、愛されなかったもの。
その決定的な違いはどうしたって出来てしまう。人の世は不平等でセシリアのようにありったけの愛を注がれて育つ子供もいれば、俺のように愛されずに育つしかなかった子供もいる。
…セシリアが悪いわけじゃないと分かっても、嫉妬というもので胸がざわつくのを堪えきれない。
「もしも邪魔なら今日のお茶会は日を改めるけれど…」
「いいえ、勝手をしたのはこちらなのだもの。もうお暇をしなければね」
空気を呼んでくれたのだろう。女王夫妻からヴェスペル侯爵夫妻と改められたセシリアの両親達が席を立つ所で。
「お母様、お父様! ぜひまた来てください。次こそは宮殿の温室を案内しますから」
「世界各国の素敵な花々が咲いているんだったわね。楽しみにしてるわ」
ヴェスペル王国女王からヴェスペル侯爵夫人と改められたセシリアの母が優しく娘を抱き寄せながら言うと、父も優しく娘の頬を撫でてやりながら、
「楽しみにしているよ。お前がそこまで気に入っているのだからね。エリックのことも心配しないでくれ。私達の方でマメに様子を見に行くから」
と安心させるように言った。両親から愛され、民から愛され…… ありったけの愛情を注がれて育ってきたセシリアを、俺は……
ただ愛し方を知らないというだけで帝国の軍を動かした。たった一人を奪うだけの為に。懺悔をして許されたはずなのに、いまだに罪悪感が胸を突き上げてくる。
「皇太子殿下、ではこれにて失礼いたしますわ」
「セシリアのこと、よろしくお願いいたします」
深々と一礼して去っていくヴェスペル侯爵夫妻を見送って、俺は二人きりになると同時にセシリアを抱き上げていた。無性に彼女を独占していたかった。見苦しい、浅ましい、惨めになるだけだと分かっていても。
ただ奪うことしかできなくて……
「ユリウス…? こんな所でですか?」
「少しだけあなたに触れることを許してほしいな」
「許しますよ。私はあなたの妻になったのですから。あなただから許すのです」
何も知らないセシリアは豊かな愛情で俺を包み、抱き返してくれる。俺にできたのはただ彼女を抱くことくらいで……
ソファの上に横たえて、空気を呼んだ護衛騎士達が去っていくのを尻目にしつつ、セシリアのドレスをはだけていく。今は脱がせる時間も惜しかった。
お待たせいたしました( ^^) _旦~~ R17.5くらいの限界に挑戦です( ゜д゜)ウム 本当はギリギリを攻めてみたけれど、そういうのがメインじゃないのでこんな感じでお許しください(`・ω・´)ゞ 最後までお付き合いくだされば幸いです。




