第十二話 薬師と土
午後。
アルヴェインの畑に、エマがやってきた。
「アルヴェインさん」
「ああ」
「少し見せてもらっていいですか?」
「何を?」
「畑です」
エマは薬師らしく、畑の中をゆっくり歩く。
薬草。
野菜。
土。
水路。
そして、小さな木の枝まで観察している。
「……やっぱり」
「何が?」
「この土、普通じゃないですね」
アルヴェインが顔を上げる。
「分かるか?」
「薬草を扱っていると、土には敏感になります」
エマは土を少し手に取った。
「栄養が多い」
「元々荒れ地だった」
「それなのに?」
「ああ」
アルヴェインは少し考える。
「長く放置されていたから、地中に残っていたものが多かったんだろう」
「なるほど」
エマは納得した。
「じゃあ、この土なら薬草も育ちそうですね」
「種類を選べばな」
「教えてもらえますか?」
「ああ」
アルヴェインは畑の一角を指差した。
「日当たりはここ」
「はい」
「水は多すぎない方がいい」
「はい」
「薬草によって土の好みも違う」
エマは熱心に聞いている。
「農業って奥が深いですね」
「薬草も同じだろう」
「そうですね」
エマが笑う。
「じゃあ、お互い教え合いましょう」
「それがいい」
◇
数日後。
畑の隅に、小さな薬草園ができた。
エマが植えた薬草。
アルヴェインが整えた土。
二人の知識が、静かに混ざり始めていた。
村人たちは、それを不思議そうに眺めていた。
「薬師と農夫が一緒に畑を作ってる」
「何か変な感じだな」
「でも、よく育ってるぞ」
アルヴェインはそんな声を聞きながら、何も言わなかった。
ただ、薬草の芽を確認する。
「……順調だ」
それだけだった。




