一つの戦闘ーーダスト
夜風が靡いてる。何度でも言おう、夜風は気持ちいい。嵐の前の静けさということわざがあるが、今の俺の前には、そんなものないも同然だ。なぜなら俺はすでに嵐を通り過ぎている。ミツとの交戦、リスタとの喧嘩。これを嵐と言わずして何を嵐と言うんだ。
「今日はありがとな。お前はこれからどうするんだ?」
「私は公務があるのでな。これ以上は君に付き添えない。どうしてもと言うのならまた送り届けても大丈夫だが。」
「いや、遠慮しとく。1日に2回あれを喰らうのはヤバそうだからな。」
軽口を言う余裕すらある。今ジャンプでもしたら月の裏まで飛べそうだ。
「それじゃ! またな!」
「あぁ、また明日ーーーーー」
瞬間、後ろから爆発音が響き渡る。吹っ飛びそうになった所を拳で地面をついて支えた。振り向くと、そこには木っ端微塵となったアスカルト家があった。
「ヒカル、そこで止まっていてくれ。」
直後、ヒュンといった音の後にダストが視界から消える。そして、地面には遅れてクレーターが出来ていた。どうやら前の俺の時は全然全力では無かったようだ。
そのまま戦闘が始まったようだ。まだ爆発音の影響で耳がキーンとしているがそれ越しでも分かるほど、キンッ! ガキンッ! カンッ! と強く金属音が鳴り響いていた。
しばらくすると、煙の中から敵がこちらの方に向かってきた。思わず拳を出そうとするが、間に合わない。……万事休すか。
瞬間、ガキィィィンと強く剣がぶつかり合う音がした。目を開けると、ダストが横から俺と敵の間に入って刀を振り上げて、敵の剣を遠方に飛ばしていた。
「チッ邪魔すんなよ。ダスト・アスカルト。」
「君こそ、私の友に何か用かね?」
「用しかねぇよ!」
敵がそう言った瞬間にこちらに向かって飛びかかってきて、ダストもそれに応戦する。剣同士がキィィィンと音を立てて火花を散らしている。
「私から言うのもなんだが、彼にそこまで価値があるようには思えない。なぜ君たちはそこまで彼に執着するんだ?」
「うるっせぇな。俺らにとって価値が無くても陛下にはあるんだよ!」
敵がそう言うと、刀を強く振り下ろしてダストの剣をパキンッと叩き割った。
「ヘッ、かのご有名な元首、ダスト・アスカルトサマも所詮この程度かよ。全力出す理由がねぇとこっちが冷めんだよ!」
敵が剣を燕返しのように振り上げる。ダストは一歩引いて避けたが、敵は攻撃の手を緩めない。数多の剣撃が一つ。ダストの頬を掠めてしまった。ヒカルは思わず声が溢れ出した。
「ダスト!」
「ヒカル! 心配するな。君は後ろに下がっていろ。」
ダストは叱責するような声でヒカルを制する。その声によって、ヒカルはハッとした。この戦いは俺が割り込めるような戦いじゃない。今もなお、敵の攻撃はどんどん加速していく。
「だがヒカル、情けないようだが一つ頼みがある。手頃で硬い石を私に投げてくれないか?」
石だぁ? と声が出そうになったが、ここはもうダストを信用するしかない。疑問など持っている暇は無いんだ。地面を手当たり次第掘って、投げるのにちょうど良い硬い石を見つけた。その間もダストの傷は片手で数えられる程度だが、増え続けている。
「ダスト! 受け取れ‼︎」
俺は石を力一杯強く投げた。だが、ダストへの攻撃の手を緩めずに俺の石はグシャと音を立てて砕かれてしまった。
「何しようとしてたのか分からねえが俺に石ころ如きで傷を与えられると思うなよ!」
「いや、むしろこれは君が死地に近づいただけの話だよ。」
「は?」
「形成し、貫け(アスラート)。」
ダストがそう言うと、粉々にされた石から剣やら槍やらが生成されて、ザシュと音を立てて敵を串刺しにした。
「ふぅ、久々にスリリングな戦いだったね。」
「お前……まだ隠し持ってたのかよ。」
「隠してはいないよ。ただ聞かれなかっただけだ。」
とりあえずダストのおかげで脅威は死んだ。数分前の油断してる俺をぶん殴りたい気分だ。
「この程度で俺が死んだと思うなよ……。」
後ろから声が聞こえた。それは先ほど葬ったはずの者の声だった。
今回でダストの技が判明しました。今までのダストの身体能力は素です。魔術強化とかいうドーピングはしてないです。




