一つの通告
あ゛ー疲れた。肉体も疲れたし、何より精神が疲れまくった。二度とこんな無茶な戦い方したくねぇな。
気づくと、朝日は昇りきっていた。それはもう"朝日"というには時間が経ちすぎてるように思えるほどに。家に帰って早々、リスタとアートに詰められた。だがその言葉は全て右から左へと流されていった。その理由はミツが最後に吐いた捨てゼリフにあった。
"お兄さんが彼女のパーティになってから世界の均衡は崩れ続けてるんだよ"
その言葉の真意はなんなんだ、俺がリスタのパーティに入ったからなんなんだ。確かに、俺は多分特別な方の人間だ。だが、リスタは言っちゃあれだが普通の少女って感じだ。そこに俺が入ったからなんなんだ。
「…………まぁそういうことだ! 聞いてるのかヒカル!」
「ん? あぁ、悪い。1ミリも聞いてなかった。」
「ちゃんと話聞けって!」「ちゃんと話聞いてくださいって!」
「クソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソ! なんなんだあいつ‼︎ 僕が何したってんだ‼︎」
ミツは嘆いていた。命からがら逃げてきた彼は叫んだ。生の七欠片として生を受けてから彼は敗北といったものを経験してこなかった。戦闘の後、彼の視界に入るのはいつも血を流し、ピクリとも動かない物体のみだったのに今回は逆とも言える結果になってしまった。
「この僕が! 地を這いつくばるだって!? そんな……そんな屈辱! 許してたまるものか! あの男が僕たちの計画に必要だなんて知るか。絶対に殺してやる。」
「おーいおい。ちーとそれは聞き捨てならねぇな。」
ミツの前に和装の男が薙刀を肩に担いで現れた。
「なんだカルテン、僕を嘲笑いに来たのか?」
「ん? あぁ、そうだよ。一般人に負けやがったお前を笑い物にしてやろうと思ってな。」
「お前……やっぱり、僕はお前のことがキライだ。」
「ははっ、嫌いで結構。有名税ってやつだ。
まぁ冗談はさておき、陛下がお呼びだ。さっさと来い。」
ミツの目の色が変わった。すぐさま身なりを整え、陛下の元へ向かった。
「すみません、諸事情により遅れてしまいました。」
「あぁ、気にするな。私はそのような些事は気にしない。」
陛下は女性にしては低い声で言い放った。ミツはその陛下からの恩赦を噛み締めていた。口元をきつく締めていたが、その言葉を聞いた瞬間口元を綻ばせた。
「では、通告を始める!」
「「「「「「はっ!」」」」」」
先ほどまで少し騒がしかった欠片達が一斉に静まった。
「今回の通告の内容だが、セツ。貴方から連絡事項があると聞いたのだが、伝えてはくれないか?」
「はっ。アスカルト家にて、元首ダストが行方不明になったようです。攻め時かと。」
「検討しよう。他にもなにか通告がある者はいるか!?」
欠片達は微動だにしない。陛下を恐れているわけではない。逆だ、陛下に無駄な思考をとってほしくない。その心配の気持ちで欠片達は微動だにしないのだ。
「では、本日の通告は終了とする! アスカルト家の襲撃は後日伝えよう!」
「「「「「「はっ! ありがとうございました!」」」」」」
欠片達は各々散らばっていった。




