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雷華の騎士 ~やがて支配帝(ハーレム帝)と呼ばれる男~  作者:
第2章 雷華の騎士と地獄迷宮
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7話 ギルドからのペナルティ①

 迷宮を出ると夜になっていた。4階層から一気に上に登った所為である。

 フレデリク達は冒険者ギルドへと向かっていた。

「うううう、さっさと寮に戻って寝たい」

「疲れた」

「っていうか明日ガッコ休みじゃん。やった、休める~」

「思ったより早く帰れてよかった」

「2週間は覚悟してたけど丁度って感じで良かったね」


「マインラートが落とさなければもっと早く帰れたんだけども」

「俺が悪いのか!?」

「まあ、13階層へのショートカットを確認したという事で」

「帰り道に12階層のフロアボスがいなければ文句は言わねーよ」

「とはいえ、魔力に余裕をもって帰れたから良しとしよう」

「余裕あったのはフレデリクだけだよ。クタクタだよ」

 マルコがうんざり気味にぼやく。


 フレデリク達が冒険者ギルドのドアを開けると、冒険者達が普通に歓談していた。

 フレデリク達が歩いて受付へと向かっていると、何やらこそこそとした声が聞こえてくる。迷宮内でフレデリクに伸された男達がこっちを指差して嘲笑うよう密談していた。


 フレデリクが受付で帰還申請をしようとパーティ名を口にするとギルド職員が少し待つように言って奥へと入っていくのだった。

 何事かと思って全員で首を傾げていると奥から恰幅の良い男がやって来る。

 険しい顔をしてやってきた男はドカッと機嫌悪そうにフレデリクたちを見下ろす。

「ガキどもが、調子に乗ってよくもやってくれたものだな」

 フレデリクらを睨みつける男は、自分がギルドマスターであることを告げる。

「何か問題でも?」

 マルコ達は最初の2階層であった一悶着の事だと直に気付いたが、フレデリクはまるで忘れたかのように古典と首を傾げて本当に何かあったのか理解しない声音で問うのだった。


「ふざけてるのか!迷宮内で他の冒険者に危害を加えるとはやって良い事と悪い事も分からんのか!お前達学生はフェルディナント様に守られているからと調子に乗りおって…」

「向こうが武器を抜いてこっちに襲って来ただけですけど。僕は素手で捻じ伏せただけですし」

「ルールを破ったからだと聞いている!」

「僕は迷宮に潜る際にギルド職員に確認してます。10階層まで潜る予定ですが注意事項はありますかと。特にないと聞いた以上、ルールはないと認識していますが?」

 フレデリクの言葉の方が筋が通っていた。


「黙れ!迷宮の何たるかも知らぬガキが、学園生だからって調子に乗るなよ。ヘレントルは多くの冒険者が生活基盤としているんだ!新参のガキが好き勝手して良い場所じゃないんだ!そんな事も分からずに我らに迷惑をかけたという事が分らんのか!」

 ギルドマスターの怒鳴り声にフレデリクはスッと目を細める。

「ほう」

 するとエリアスとエルッキは慌ててフレデリクの両肩を二人で抑える。

「な、何?」

 いきなり二人に羽交い絞めのような態勢にされてフレデリクは困惑するのは当然だった。

「ギルドで揉め事起こすなよ」

「学園にも学生全員にも迷惑が掛かるから」

 二人がフレデリクに訴える。

「こっちはとっくに迷惑をこうむっているわ!」

 ギルドマスターは怒鳴ってフレデリクを睨む。フレデリクは二人を自分から放してから溜息を吐く。

 エリアスもエルッキもまるでフレデリクが暴れるんじゃないかと言う視線を受けて不服そうにしていた。

 フレデリクに伸された冒険者達はニヤニヤと笑って事の顛末を眺めていた。


「で、僕に何を?」

「ふん、分かっているようだな。お前達パーティは今後一切の迷宮探査を認めぬ。ギルド証の没収を命ずる!」

 フレデリクはギルドマスターに訊ねると冒険者証没収という極めてきつい罰を与えられるのだった。

「マジかよ!?」

「そんな無茶な!」

 マインラートやマルコが悲鳴を上げる。

「ぷっ…連帯責任?冒険者が?適当に組んで潜っただけのパーティに連帯責任を求めるとか、いつから冒険者ギルドはそんなルールを作ったの?パーティは毎度申請しないといけないのは、冒険者が個人だからだろ?何?学生だからって連帯責任を求めるなら学園全員に求めるべきでは?」

 フレデリクは嘲笑うようにギルドマスターを見る。

「ぐっ……」

 学生が学園長でもあるフェルディナントに守られているのは事実だ。学園全体に冒険者証没収なんて出来るはずもない。そもそも学園は現皇帝さえ通っていた場所だ。連帯責任なんてしたら、学園に通うの貴族が出て来て、冒険者ギルドそのものを帝国からたたきつぶされかねない。そんな権限をギルドマスターが持っている筈もなかった。

 それが出来ないからこの場で、彼らだけの問題として収めようとしているのだ。

 ヤバそうとしか思っていないエリアスやエルッキ達はともかく、フレデリクは裏を読んで言葉で情報を取りに行きつつ、責任の所在を仲間にもっていかせないようにする。面倒ごとに巻き込むつもりは無いからだ。


「子供を恫喝して、調子に乗ってる学生に対してペナルティを与えて見せしめにしたい?舐めんなよ」

 美少女顔した男の口から汚いスラングが飛び出す。

「挑発するな」

「だから辞めろって言ったのに」

「穏やかに行こうよ」

 フレデリクに対してエルッキ、アルバン、エリアスらはフレデリクを止めに入る。どこの琴線に触れたかは分からないが、フレデリクが怒っているのが分かるからだ。

 なぐらないだけ帝都の英雄よりはマシという評価でもある。だが、エリアスたちも知っている。フレデリクが怒れば平気で次期皇帝や帝国十剣にさえ喧嘩を売る男だと。


 だが、ギルドマスターから見ても、彼らがフレデリクを持て余しているのが分かる。美少女にも見まがう少年がパーティのトラブルメイカーなのを察する。

 フレデリクパーティとして申請があるので、恐らく貴族では無いだろう。貴族であるならばグロスクロイツパーティやバイマールパーティなどと家名が来るからだ。

「ふん、そうだな。個人であるならば、迷宮のルールを破り他の冒険者に暴力を振るった個人をギルド証没収とする!」

 パーティ全員の視線がフレデリクへと向かう。

「へえ、まあ、それなら構わないけど。つまり僕一人が冒険者資格剝奪って事だよね」

「そんな!事実上、フレデリクが学園の退学って事じゃないの?」

 アルバンが焦った様子で訴えるがフレデリクは首を横に振る。

「僕だけなら問題ないよ。ただなぁ……ギルドマスターさんの判断でそんな事を言って良いのかな?」

 フレデリクはニヤニヤと笑ってギルドマスターをどこか挑発するように見返す。

 そのフレデリクの態度にギルドマスターは頭に血を登らせ、ギルドマスターは拳をテーブルに叩きつけてギロリと睨みつける。

「調子に乗るなよ、小僧。ギルド全体の利益を考え、正しい行動をするのが私の仕事だ」

「素晴らしいね。じゃ、僕は冒険者引退という事で。後で返すって言っても受け取らないからね?あ、でも今回の迷宮探査の収穫を収めたいんだけどどうすればいいかな?」

「そ、それならこちらに」

 相手をしていた女性職員がおずおずと手をあげる。

 荷物持ちをしていたフレデリクとマルコが荷物を出す。

「12階層にいた迷宮主アークデーモンの魔石、13階層にあったレッサーサラマンダーの皮、9階層のワイバーンの翼やライノドラゴンの角とかだね」

 どしゃーと袋の中を引っ繰り返して机の上を埋め尽くす。周りで見ていた冒険者達の誰もがその大量かつ高質な収穫にギョッとして見ていた。

 ヘレントルにいる紅玉級以上の冒険者位でなければ踏み込んだことのない領域の素材だった。

 つい最近、紅玉級冒険者グレンが収めた素材以上のものがそこに並んでいた。

 学生の4年生パーティの迷宮初挑戦の収穫とは思えないモノだった。

 学生が凄まじい戦果を挙げて帰って来た事に誰もが絶句する。にやにやと笑っていた冒険者達が口元を引きつらせて、半ば酔っていた赤ら顔が一気に顔色を青くする。


「さ、査定は明日で構いませんか?」

 過去に例のない収穫にギルド職員も慌ててしまう。

「僕は冒険者資格剥奪なので、エリアスが代わりに受け取りに行ってくれる?」

「フレデリク抜きで明日もう一度行くしかないよね………。分かりました、明日の昼頃にでも受け取りに行きます。マルコもお願い」

「え、僕も?」

「ローレンツ様かアントン様に見られたら、僕だけじゃない収穫分まで没収されるよ」

「そ、そうだった。分かった。アルバンとマインラートもお願いね」

「えと、先輩は?」

「俺?別にいらねーけど」

「という事らしいので、申し訳ないけど最後の処理は任せた」

 エルッキとフレデリクは軽く流す。

「ていうか先輩とフレデリクに色々と助けられておいて、二人が報酬無しってのはどうかって話なんだけど、いらないって言われると逆に困るんですけど」

「僕にとって報酬はおまけで攻略法を探る為に利用させてもらっただけだから」

「今年の冬に西部迷宮潜って鍛えると同時にかなりの臨時収入があったるから気にしないで良いぞ。俺は去年1年だけで授業料支払い済みだしな。既に爵位持ちで年金貰ってるんだよ、俺。実家で軍務にもついているからさ。ヴァンさんじゃねーけど、学生からむしり取るつもりもねーよ。お前らもさっさと授業料払い終えて、困ってる奴を助けてやれば良い」

 学生は報酬から授業料が支払われる。

 毎週駆け出しがやるような小さい仕事をするより、探索をした方が儲かる。だが命の危険がある為、ここまで潜る必要はほとんどない。

 エルッキは4年から入学してるが、かなり迷宮に入って修行をして、ついでに大量の素材採取を行なっていたので1年で授業料を3年分払い終えている、実は勉強はさほど弱いが冒険者的には超優等生だ。


 だが、そんな学生達のやり取りを横目に、ギルドマスターは開いた口がふさがらないと言う顔で凍り付いていた。

 調子に乗っている学生を懲らしめてやろうと言う軽い気持ちだったが、まさかとんでもない稼げる学生集団だったなんて思いもしなかった。

 12階層のアークデーモンの魔石なんてここ数年聞いた事もないし、それを聞いたのは紅玉級冒険者が寄った時の事だった。どんなに優秀な冒険者でも10階層が精々だ。


「じゃあ、僕は冒険者証剥奪ですね。報酬は他のメンバーに割り振っておいてください。これまでお世話になりました」

 最後にフレデリクはポン冒険者証を置く。


 その冒険者証の色を見てギルド内はどよめきが起こる。フレデリクにのされた冒険者達も報復できると思って見ていたが、冒険者証の色を見て一気に顔色を青から白くなる。

 冒険者証の色は赤。英雄でなければ到達できない冒険者証の色だった。


「紅玉級……フレデリク……。あ、最年少の……雷華の」

 気付いた様子で受付の女性職員が口にする。現在、大陸東部で最も有名な冒険者の名前だった。数々の暗殺者ギルドを滅ぼし、砂漠迷宮の全容解明したエルフの英雄の弟子であり、雷華の賢者と同じ魔法を使う剣士。美しい所作から、どこかの国の貴族だったのではないかとも思われた事から付いた字が雷華の騎士。


「帰ろ帰ろ。俺、今回の冒険を資料にしてまとめないと」

「だな。早く、休みたい」

「っていうかフレデリク、本当に大丈夫なの、冒険者証」

「大丈夫、大丈夫。元々火竜王を殺すために金が欲しいから冒険者になっただけだし」

「いや、学校の方の話だよ。冒険者として儲けた金が授業料になるんだよ。払えなくなるでしょ?」

「僕冒険者として10人分くらいの授業料を軽く稼ぎだしてたんだけど、今更だよね」

「鬼か」

「ま、その辺は最悪卒業間近になったらB組に移って金で出れば良いんじゃない?」

「フレデリクの自力で何でもできるスタンスって憧れるよね。僕なんて選べるものなんてほとんど無いのに」

 エリアスはフレデリクの自由な生き様にあこがれていた。

 力があり金があり、皇族であることをチラつかせる必要なく気儘に生きられる強さを羨ましく思っていた。だがそれは才能だけでなく努力で得たものだ。


「冒険者証無いと移動が面倒だろ?」

「紅玉級は最低でも一国以上の身分を保証するような功績があるから。僕、いろんな国の勲章持ってるから。そもそも近隣諸国では顔パスだ。僕にとって冒険者という肩書は必要なものじゃ無いんだよ」

「冒険者になって家から逃げようとしている僕とは真逆だぁ」

 エリアスは愕然とした顔で唸り、アルバンやマルコはゲラゲラと笑うのだった。


「でも……冒険者証だけどね。あれ、どうするんだろうね?」

 フレデリクは不思議に思って首を傾げる。

「どうって……処分して終わりじゃないの?」

「いやいや、紅玉級冒険者証ってさ、迷宮攻略した事、そして複数の国から黄玉以上の貢献した事っていう条件があるんだ。僕が迷宮攻略した事であっさり紅玉になったのは師匠に連れまわされて様々な場所のギルドからの承諾があったからなんだよ。暗殺者殺しの異名は伊達でも何でもなく、ギレネ王国以外にもサンブランク公国や女神教国からも冒険者として受勲してる経歴があるから。帝国のギルドが僕の冒険者証をはく奪するなんて無理なんだ。言ってしまえば紅玉級は3国が認めた英雄の証でもある。だからこそ、僕の歳でなるのはヴィルヘルム様以来な訳でね。だから、紅玉級冒険者証をはく奪した例は一度もない。しかも自国民が他国で得た紅玉級冒険者を、自国で剥奪出来ないくせに奪ってしまった。果たしてどんな事になるのか見物だよね」

「お前…」

 この場にいる全員が、フレデリクが確信犯で冒険者証をはく奪された事に気付くのだった。

 あの程度でお咎めなんてふざけるな、こっちは聞いてない。学生だからって馬鹿にするな。そう言う腹立ちを叩きつけた形になる。


「これ、校長が出て来る案件だろうね」

「校長が出てきたところで僕が素直に丸く収めると思わない事だね」

「僕、フレデリクにだけは敵対したくないな」

「暴力じゃなくて政治で嵌めるとか、父親より厄介だろ」

「親父さんの方がすっきりしてわかりやすいのに」

 ヴォルフの悪名は学生ならばよく耳にする事だ。学園における一種の伝説だ。

 帝都の英雄が学園で貴族相手に起こした騒動は月1ペースだったとも聞く。権力で横暴をする貴族を暴力で成敗するヴォルフは一般学生にとっては憧れだ。

 最後は卒業せずに犯罪奴隷として鉱山で働かされ、そこで功績をあげて奴隷から解放され、冒険者として一から始めて1年で金剛級になっている


「まあ、どっちにしても僕は引く予定は無いからね。この際だから冒険者ギルドに一石投じてやるか。校長も煽ってやろう」

「校長をあおるっていう発想がこえーよ」

 マインラートが引きつって突っ込んでくる。

 ヘレントルにとって校長は学校の設立者であり、大陸東部屈指の英雄であり、レーベンベルク伯ヘレントル市の領主であり、現皇帝の祖父ラファエル帝の従兄弟でもある超大物だ。

 逆らえる人間なんていないレベルの存在だ。

「まあ、お前がやらかす事には心配はあるが、周りが振り回されて困惑する事に関しては心配してんだよ」

「ひでえ」

「3年経って大人になっているかと思えばその辺が全く変わってねえ」

「昔からこんなんなの?」

「貴族だろうが、平民だろうが、理不尽を口先で捻じ伏せる。大人達でさえ警戒してたからな」

「そんな事した覚えないのに」

 フレデリクは首を傾げる。


「まあ、確かに雷華の騎士の華々しい活躍を見ながら進むと思ったのに、徹底して作戦で乗り切ってアークデーモン戦以外は完全に指揮官だったよね」

「だから責任取ってアークデーモンは僕が叩きのめしただろ?」

 エリアスの言葉にフレデリクが肩を竦める。

「注意点を言われても対応不可能だったけどね」

「そう?アルバンなら自力であの場所に行ける程力がつけば、アークデーモンを倒してくれると信じてるよ」

「まあ、手の内と対策が分かったから、1対1ならどうにか出来なくもないかな、とは思ったけど。一種の初見殺し的な部分があったし、知らずにあそこに辿り着いてたら初見殺されてたかもね」

「確かに」

 苦笑するアルバンに同意するマインラートだった。

「あとで清書にして先輩たちに渡そう。クラウディア先輩も喜んでくれるだろう。冒険者ギルドにも10階層までの完全攻略方法として寄贈しよう。とりあえず今回の目的は皆のお陰で大成功だからね。」

 フレデリクは自分の益に無い事をしようと計画しており、フレデリクが何をしたくて迷宮に潜ったのか、この時は誰も分からなかった。

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